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戦乙女の帰還  作者: 鷺草
乙女の再出発
40/44

乙女は冤罪を証明してもらう


サブタイトルはアレですが、いつも通りゆるいです(´-ω-`)


ついでに四十話なので特別に(?)、いつ使うか分からないネタバレを少し…。


・居酒屋【ボブ尻尾のキジ猫亭】の看板娘は、カギ尻尾の三毛猫。

・童話「マッチョ界の淑女」は、プロテインを発見した冴えない研究者とタッグを組んで、億万長者へと成り上がっていく貧乏貴族令嬢の物語。

・トイレの神様の存在。


以上。

それでは本文をお楽しみください(´ω`)ノ





この日、我が家はダイニングでの朝食を諦めた。


昼食・夕食は【ワンコの垂れ耳亭】の営業時間中のため、各々が空いた時間を見つけてバラバラに食べるのだが、朝食は違う。

我が家の朝食は、唯一家族全員が揃う団欒の場で、一日の始まりにして一番重要視されている時間と言っても過言ではない。

その重要な時間を、これまでは二階の住居スペースにあるダイニングで取ってきたが、四人と二柱、一匹でも手狭だったのだ。

一人と一柱が加わった今朝、完全にキャパシティオーバーである。


仕方がないので本日は、一階の【ワンコの垂れ耳亭】店舗スペースで、全員揃って朝食を取ることにした。


「――それでは、レアでよろしくお願いします」


リープリヒは昨夜の宣言通り、朝から肉――それもステーキのレアを頂くようである。

節度を守って食べてもらえるなら、もう何も言うまい。

元気になって何よりである。


「まさか、私に恩恵を授けてくれてた神様とお話できるなんて思わなかったなぁ」

「ワタシも、愛し子以外の人と話す機会ってあまり無かったわ」


どうやら母さまの【日だまりの子】という恩恵は、美の女神シェーンが授けた物らしい。

言われてみれば母さまとリープリヒは、おっとりとした雰囲気が何処となく似ているかもしれない。


開店前のガランとした店内だったが、和やかな雰囲気で食事の時間が進む。


ところが――


「誘拐犯はここかぁー!!??」


何やら外が騒がしい。

朝食を重要視する我が家の事情を抜きにしても、朝一でこの騒ぎは非常識ではないのか。


「――っるさい!」


案の定と言うべきか、クリーナが怒って出ていってしまった。

私は家から動いていないので、それ程遠くへは行っていないはずだが。


大して時間もかからず、クリーナは一人の男の首根っこを掴んで戻ってきた。

聞いた事のある声だと思ったら、騒いでいたのはクラインだったらしい。


「オイこら、チビ……アンナ。民間人を誘拐って、何やってんだ!?」

「……してないぞ?」


私がアンナマリアだと発覚してから、クラインは私の事を「チビッ子」や「ガキンチョ」などと言わなくなった。

思わず出てしまうなら、気にせずに言ってしまえば良いと思うのだが。


それよりも一体、何がどうなって、私が誘拐犯などという話になっているのか。

ほら見ろ。クリーナが非常に良い笑顔で佇んでいるではないか。


「屈強な共犯者と共に、この店に女性を運び込む女の子を見たという情報が……」

「あ、あのね。ワタシがアンナちゃんにお願いして、倒れたリープリヒを助けてもらったの」


シェーンから助け船が出された。

なるほど、あの時は特に気にしていなかったが、確かに人目はそれなりにあったのを思い出す。

しかし、中隊長ともあろう男が、たった一つの情報を鵜呑みにして行動を起こすなど――


「いやしかし、『護衛対象を預かった。返して欲しければ彼女の荷物を持ってこい』といった内容の伝言を、いくつも聞かされたんだが……」

「いや、言ってないし。こっちは、『リープリヒ(リッヒー)をウチで預かってるから、忘れ物返しに来い』って伝えてもらっただけ」


今度はクリーナから反論が出た。

どうやら伝言の過程で、微妙に内容が変わってしまったらしい。


「え……じゃあ、本当に誘拐していないんだな?」

「こんな和やかな雰囲気丸出しで、誘拐なワケないじゃん!つーか、まだなっちゃん疑うんなら、十三年前に告白した子が実は女装趣味の男で、その上『恋愛方面の守備範囲は女の子だから』ってフラれたの、色んな所で言いふらしてやるから」

「それもう全部言っちまってんじゃねぇかぁぁぁ!!」


膝から崩れ落ちてしまったクラインにようやく、リープリヒもステーキを食べる手を止めて、彼を見て首を傾げていた。

リープリヒはどうやら話を聞いていなかった様子で、既に三枚目の後半に突入している。

見かけによらず、容量の大きい胃袋の持ち主である。


「言っとくけど!俺だって守備範囲は女の子だからな!!」

「どっちでも良いし。それより、ちゃんとリッヒーの荷物持ってきたんでしょーねぇ?」

「あぁ……」


クラインは、再び肉と共に幸せを噛み締めている様子のリープリヒの元へ行き、懐から何かを取り出した。


「忘れ物です。あの時は最後まで守れず、すみませんでしたっ!!」


両手の平に乗るほどの小さな包みを差し出しつつ、クラインは腰から直角に折れて謝罪する。

根は真面目な彼らしい事である。


「まぁまぁ、私の荷物!ありがとうございます。これで今年の種まきも行えます」


リープリヒが探していた小さな包みの中には、髪を束ねるリボンと数種類の作物の種が入っていた。

種は店で仕入れたのではなく、昨年両親と一緒に育てた作物から採取し保存していた物で、また今年も一緒に植える予定だったらしい。

既に両親が亡くなってしまった彼女にとっては、さぞ大切な物だったのだろう。

その証拠に、出会って間もないが、彼女はこれまでで一番の笑顔である。

その姿は正しく【美の女神の愛し子】といった感じだ。


「え、あ、いやそんな、お礼言われる事じゃ……。えっと……良かったですね」

「はい。あぁ、どこに植えましょう……」

「あー、やっぱりねぇ」


リープリヒの反応にたじたじなクラインを見つつ、クリーナは何やら納得した顔をしている。


「……やっぱり?」

「ララっち、あぁいう子に弱いのよねぇ。女の子らしい可愛い感じで、か弱くて放っとけない子」


つまり、クラインに新たな春の予感を感じ取った訳か。

言われてみれば、彼の頬が若干朱に染まっている。

しかし、聞いた情報と僅かな時間の関わりだけでの判断だが、そんなに悪くは無いのではないか。

少なくとも、女装趣味の男性や五股の女性の時よりは幸せな結末になるだろう。

クリーナも興味があるようなので、クラインには是非とも頑張って頂きたい所である。


リープリヒは我が家の裏庭に、小さいながら畑を作ることにしたらしい。

村に居た頃から比べると、随分規模を縮小する事となった筈だが、彼女はこれで満足なのだと言う。

その流れで彼女は、【ワンコの垂れ耳亭】で住み込みで働く事になった。

今回の一連の判断を下したのも、母さまである。

特に根拠はないのだが、今後、更に常連客が増える気がする。


しかしながら、今のままでは肝心の彼女の居住スペースがない。


「私、石畳でも眠れましたので、大丈夫です」


などと本人は言っていたが、そんな劣悪な環境の住み込みなど、我が家も、ついでにクラインも許さない。

そもそもヴァイスだって、かつて物置だった部屋をやりくりしてベッドを置いているのだ。

家族全員がベッドで寝る中、客人――延いては従業員の彼女を地べたで寝かせる等、何様なのだという話である。


この日、我が家は模様替えを行うために、お昼の営業は臨時休業となったのだった――。





何とか四十話目まで到達しました。

読んで下さっている皆様、ありがとうございます(*´ω`*)


……ていうのを前書きで忘れていたのでこちらに(´・ω・`)申し訳ない


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