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戦乙女の帰還  作者: 鷺草
乙女の再出発
39/44

乙女は女神の頑張りを目撃する


眠り姫が想像以上にノンビリ屋で、書くのに時間がかかった件……(´-ω-`)

更新遅れてすみませぬ……。





「はぁい、おっ待たせー!デザートのシフォンケーキになりまぁす。もちろん、ビーネン蟻の蜜もたっぷり入ってるわよぉー」


夕方の営業が始まって暫く、戦の女神クリーナが騎士のお姉様方の元に、デザートを届ける。


最近はクリーナだけでなく、最高神レギリオも気が向いたら接客を手伝ってくれるのだが、これが中々好評である。

親しみやすいクリーナは勿論、「お店空かないと、パパさんのご飯食べられないんだから早くしてよね!」といった小生意気なレギリオの態度も、女性陣や下に兄弟がいる男性に人気で、生暖かい目で見守られている。


ちなみに彼らも調理方面では、私と同じくお荷物状態である。


「ところでさー、王都近くで魔獣の群れが出たらしいけど、なんか知ってる?」


クリーナは、デザートを届けた先にそのまま居座り、雑談がてら情報収集を行っている。

本日のクリーナは、美の女神シェーンのために一肌脱ぐ気満々だ。


初めは、互いに「戦の女神、美の女神らしくない」と言われ続けていた事から生まれた仲間意識の様なものだったそうだが、クリーナがシェーンの敵もまとめて撃退していく内に、二人は次第に仲良くなっていったそうだ。

どこの世界にも、不用意な事を口走ってしまう輩は存在するらしい。


さて、クリーナの友であるシェーンの愛し子のリープリヒだが、未だ目を覚まさない。

【ワンコの垂れ耳亭】の営業が始まったので、ずっとそばに付いている事は出来ないが、起きたら気にせず呼びに来るようにシェーンには伝えておいた。


彼女が今後どうしたいのかは目が覚めてからでないと分からないが、今の段階で私達にも出来る事が小さいながらある。

彼女が置いてきてしまった手荷物の捜索だ。


シェーンの話では、リープリヒ慌てて騎士達から離れた時に、自分の荷物を忘れたと言う。

それほど多くの物でも、貴重品という訳でも無いのだが、彼女にとっては大事な物らしい。


幸いにも、【ワンコの垂れ耳亭】は騎士の集う定食屋だ。

これ程今回の件にうってつけの、情報収集の場は他にない。


「あー……。三日前に帰って来たクライン中隊長が報告してたやつ?」

「……アイツか」


狙い通り、早速それらしい情報がはいる。

しかしここでかつての後輩であるクラインの名前を聞くとは、以前も言ったような気がするが、世の中案外狭いものである。


「なんかねー、すごいボヤいてたって話。任務完了直後に山賊に出くわすわ、その時助けた一般人の護衛の任務は入るわ、王都間近で魔物に襲われるわ、最後の最後で護衛中だった人物に逃げられるわで、今までで一番過酷だったってー」


それはそうだろう。

基本的に一回の遠征で一つの任務が割り振られる所、四つの任務に当たった事になるのだ。もっとも、護衛任務は対象を見失っている時点で失敗だが。

報告書の枚数もそれに応じて増えている筈なので、今頃はデスクワークに勤しんでいるのかもしれない。


クラインの忙しさはさて置き、リープリヒが道中を共にしていたのは、彼の率いる部隊で間違いないだろう。


「じゃー、クライン(ララっち)見かけたら伝えといてよ。『ララっちがはぐれた子ウチで預かってるから、その子の忘れ物届けに来い』って」


クリーナはそんな調子で、他の騎士達にもクラインへの伝言を頼みつつ、本日の【ワンコの垂れ耳亭】の営業は終了した。


未だリープリヒは起きる気配がない。

私は今夜、どこで寝るべきか――。


◇◆◇


「――んー……!!」


上体を起こして、伸びをします。

こんなにグッスリ眠ったのは久しぶりでした。


それにしても、ここは何処なんでしょう。

時刻は夜みたいで、外も部屋の中も暗くて目からの情報がろくに得られません。

ですが、体の下のフカフカはベッド、体の上にあったフカフカは掛け布団なのでしょう。私の安眠がその証拠です。


「……リープリヒ?」


暗闇に少しずつ目が慣れてきた頃、遠慮がちに声がかけられました。

その声とシルエットは、私のよく知る方のものです。


「あら、おはようございます。シェーン」

「あぁ、良かったわ!何ともないのね!?すっごく心配した……」

「うぅーん……」


シェーンの言葉は、途中で聞こえたうめき声で勢いを無くしてしました。

右手側を見るともう一つベッドがあり、その上に小さな影があります。


「いけない、エルヴィンくんも一緒の部屋なんだったわ。リープリヒ、こっち。恩人にご挨拶しましょう」


シェーンは私の手をとって案内してくれます。

眠ったお陰で疲れは取れていますが、少しフラつく感覚がします。

栄養不足でしょうか。うーん、美味しいご飯が食べたいです。


その願いが叶ったのか、シェーンが扉を開けた途端に、とても良い香りが漂ってきました。

お父さん達がいつも言っていたように、世の中何とかなるものですね。


「問題ない。焦げてない、大丈夫……」


キッチンでは女の子が踏み台に乗って、お鍋を睨みながら何やら呟いています。本当に大丈夫でしょうか?


「アンナちゃん、代わりましょうか?」

「よろしく頼む」


女の子は潔くシェーンと交代して、こちらへとやって来ました。


「どうぞ、座っていると良い」

「あら、ご丁寧にありがとうございます」


女の子は、紳士的にも椅子を引いてくださいました。

その後も食器を用意したりと忙しく動き回り、良くできたお嬢さんです。


「父さまに作り置いてもらっていた物をシェーンに温めてもらっただけだから、私が偉そうな事は言えないんだが……冷めない内にどうぞ」

「いただきます」


私の前に出されたのは、沢山の野菜が煮込まれたスープでした。

柔らかくなるまで煮込まれた野菜の優しい味わいが、体の隅々に染み渡る感じがします。

素直にシェーンと交代したからか、焦げた気配もありません。


「――ふふっ、美味しいです」

「それは良かった」

「できれば、お肉も食べたいです」

「……いきなり食べ過ぎると、気持ち悪くなるぞ」


ちょっと欲を出したところ、女の子からジト目が返されてしまいました。

ですが意地悪された訳ではなく、朝ご飯にはお肉出してもらえる様にお願いしてくれるみたいなので、今回は我慢しましょう。


「それで、大体の成り行きはシェーンから聞いたが、リープリヒはこれからどうするつもりだ?」

「そうですねぇ……取り敢えず、おかわりを頂こうかと」

「……そこまで細かく聞いていない。いや、おかわりはあるが」


久々のご飯がこれだけの量で終わるのかと心配しましたが、ちゃんとおかわりも用意してくださいました。

それにしても、これからですか……。


「そういえば、私の荷物、どこへ行ったのでしょう?」

「シェーンが言うには、騎士達から離れる時に置いてきてしまっただろうという話だ。リープリヒが一緒に行動していた騎士は分かっているから、その内戻ってくるだろう」


まだ幼いのに、なんて仕事の早い女の子なのでしょう。

あら?でもそうなると――


「――困りました。私、特にする事がありません」

「……ん?故郷に戻りたいとかいった思いもないのか?」


頬に手を当てて考えていると、向かいの席で女の子が首を傾げてしまいました。

私の生まれ育った村の人達も、悪い人ではありませんでしたが、私が引き取られていくのをただ見ている事しか出来なかった方達です。

今さら私が戻っても、お互いに気まずいだけの様な気がします。

さて、どういたしましょう……。


「仕方がありませんねぇ。明日になってから考えましょうか……」


ご飯を食べて、お腹がいっぱいになれば眠くなる。自然な事です。

こんな状態で色々考えても、良い答えなんか思い浮かびません。

明日になったら、良くも悪くも状況が変わっているかも知れませんし、世の中、以外と何とかなるものですしね。


「……シェーンも苦労するな」

「わ、悪い子じゃないのよ。お願い、見捨てないであげてー」


あらあら、一体何の話なのでしょう?

何となくですけど、この子は悪い子の感じがしないのですが、シェーンは違うのでしょうか。


取り敢えず夜も遅いので、また朝になってから彼女のご家族と一緒にお話するという事になりました。


私は再びベッドに戻り……あら?


そういえばこのベッドは元々、あの子の寝る場所だったのではないでしょうか。

私が使ってしまっては、あの子はどこで眠るのでしょう?


……まぁ、仕方ありません。これも朝になってから考えましょう。


私は再びベッドで眠りにつきました。


翌日――


「――誘拐犯はここかぁー!!??」


このお宅の前で、どなたかが騒いでいらっしゃいます。

――ね?日が変われば、状況も変わりますでしょう?





「――さて、私も寝るか」


ソロー もぞもぞ……。


「……ふふっ。アンナちゃぁん。。。」


ぎぅ。



……てな具合で、本日のアンナちゃんは合法でアンナママに甘えに行っております。

オイ十歳児……(´Д`)



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