乙女は愛し子の身の上を聞く
昨日のPVが、今まで以上の伸びで驚いております(*゜Д゜*)ありがとうございます!
新キャラが良かったのかしら?
「まさかのマダム再登場が効いてるのかもしれんぞ」
マジかΣ(゜◇゜;)!?
倒れてしまった【美の女神の愛し子】を連れて、【ワンコの垂れ耳亭】へと帰宅する。
愛し子を運ぶ私の後ろで、ひたすらオロオロしている美の女神シェーンが、既に我が家の前に並び始めている人々の注目を浴びるが、構う事なく家に入る。
愛し子を二階の私のベッドに寝かせ、一階の厨房へ向かう。
残っていたビーネン蟻の蜜を少量貰い、作るのは以前も調合した即席回復薬である。
詳しい話は聞いていないが、愛し子は三日間食事を取っていないと言う。
そんな状況で、いきなり固形物を摂取するのは危険だろう。
回復薬で、体力と共に消化機能の回復を狙う。
眠る彼女の上体を起こし、少しずつ回復薬を流し込んでいく。
用意した全てを飲ませ終えると、「おかわりー……」などとうわ言を言っていたが、後は目が覚めてから調子を見つつ、食事を取ってもらった方が良いだろう。
夕方からの営業までもう少し時間があるので、シェーンに愛し子の身の上を話してもらった。
◇◆◇
【美の女神の愛し子】――リープリヒは、王都から遠く離れた小さな村で、蝶よ花よと育てられていたらしい。
地元の教会で【恩寵の儀】を受けた後はシェーンも加わり、のどかで平和な日々を過ごしていたという。
しかし成人を過ぎて数年後、その日々を破壊する存在が現れた。
村を含む、その地方の有力者だ。
どこで噂が流れたかは不明だが、【美の女神の愛し子】の話を聞いて、そのお偉いさんはわざわざ村へとやって来たらしい。
この手の話ではお約束かもしれないが、リープリヒを気に入ったその人物は、愛人として迎え入れると言い出した。
「――え、何それ。ソイツ愛し子嘗めてんの?アタシが竿へし折って来てあげようか?」
同じく愛し子を持つ神のクリーナは、非常にお冠である。竿が何かは、各々の想像にお任せする。
ちなみに、クリーナがその有力者のソレをへし折りに行くという事は、必然的に愛し子の私も向かわねばならない事になる。
止めはしないが、せめて時期をずらしてほしい。
「勿論、リープリヒのご両親もワタシもお断りしたわ。その人も、その時は大人しく帰っていったの。でも……」
その数ヵ月後、リープリヒの両親は魔獣に襲われ亡くなったという。
彼女達家族が管理している畑の隅で発見された両親は、至る所に傷が目立つ、非常に痛々しい姿だったらしい。
だというのに、畑には荒らされた様子どころか、傷一つ付いていなかったという。
どう考えても別の場所で死んだ二人が、畑に運ばれたというのが自然な話である。
「――でも二人の事は、魔獣に襲われた事による事故死で処理されてしまって、身寄りの無くなったリープリヒは、その有力者が引き取るって強引に……」
「……決めた。折らないで潰す」
クリーナは怒りを通り越して、物凄く良い笑顔になっている。
反対はしないが、やはりちょっと待ってほしい。
今から件の地方へ行って帰って来るだけで、下手をすれば十日後のエルヴィンの誕生日が過ぎている。
そもそも、とうに成人を過ぎている人物を引き取るというのも、おかしな話である。
これでは権力や財力に物を言わせて、無理矢理リープリヒを手に入れたと白状している様なものだ。
「さぁ、えっちゃん。今そのエロオヤジ何処に居るの?アタシが責任もって……」
「あ、ごめんなさい。気持ちは嬉しいんだけど……その人、もう居ないの」
リープリヒを連れて屋敷へと向かう途中、その有力者一行は山賊に襲撃された。
御者や護衛、更には有力者本人も呆気なく殺され、申し訳程度に積んでいた食料等の荷物と共に、リープリヒも山賊達に持ち去られる結果となった。
「……なーんか納得いかないわねー。えっちゃん、後でもうちょい詳しく教えて。帰ったら、ソイツの魂フルボッコにしてくる」
同じ愛し子を持つ身のクリーナとしては、愛し子を利己的に扱った男が大した罰もなく死んだ事が不満らしい。
この世界に広まる宗教によれば、生前の罪が許されるまで次の生が与えられない筈なので、放置でも罰せられている状態だと思うのだが。
彼はこれから二重苦に耐えつつ、新たな生を授かる日を待たねばならないようだ。
さて、山賊達にさらわれたリープリヒだが、シェーンが睨みを利かせた甲斐もあって、商品として丁重に扱われていたらしい。
本人は荒事が苦手だそうだが、失礼ながら非常に屈強そうなシェーンである。
ハッタリでも、脅しとしては十分な見た目である。
ちなみにこの国で人身売買は違法だが、この手の犯罪は騎士と犯人とイタチごっこだ。
リープリヒの故郷の村と王都の、丁度中間の位置にある街へと向かっていた山賊一行だが、こちらにも予期せぬ事態が起きた。
魔獣討伐の任務を終えた、【遠征騎士団】の部隊との遭遇である。
山賊がどれ程強かろうと、討伐任務を任される騎士達は、特に戦闘のプロである。
リープリヒは騎士達に保護され、捕縛された山賊達は目と鼻の先までに辿り着いていた街の拘留所へと引き渡されたらしい。
保護したリープリヒを村へと送れたのならば一番良かったのだろうが、生憎、騎士達は任務を終えた後だった。
任務を終えた【遠征騎士団】達は、一刻も早い帰還と報告が求められる。
リープリヒ自身が望んだ事もあり、騎士達はこのままリープリヒを連れて、王都に戻る決断をした。
ところが、更なる悲劇がリープリヒを襲う。
王都が目の前というタイミングで、今度は大型魔獣の群れに襲われたのだという。
普通であれば【近衛騎士団】の管轄範囲なのだが、襲われたからには対応せねばなるまい。
疲れた体に鞭を打ち、【遠征騎士団】一行は魔獣の群れと対峙した。
偶然にも、魔獣の数と騎士の数が同じだったらしく、誰もリープリヒに気を配れない上に、自衛の手段すら持たない彼女は足手まといだった。
リープリヒ自身がそれを一番感じており、幸か不幸かもう目の前だった王都に、彼女は一人で駆け込んだそうだ。
しかし駆け込んだは良いが、土地勘のないリープリヒは、ものの見事に迷った。
彼女の美貌は王都でも目を引く為に、不躾な視線は向けられるし、僅かながらの手荷物も、騎士達から離れた時に置いてきてしまった。
お腹は空いたが無一文のために買えないか、別の形で対価を求められる。眠る場所だって同じだ。
そんな日々を三日も続け、本日私に出会った所に話は戻る。
何と言うか、波乱万丈な人生を歩む女性である。
「そっかー。えっちゃん見ないなーと思ってたら、そんな事になってたのねー」
地元の有力者に強引に引き取られた時から、シェーンはリープリヒのそばに居たのだろう。
何せ、リープリヒは次から次へと面倒事に巻き込まれて行ったのだ。気が気でなかったはずだ。
目覚めた後にリープリヒが何を望むのかは分からないが、乗りかかった船である。
故郷へと帰ると言うならば、送っていくのも吝かではない。
――ただし十日の後にはなるが。
この世界にあるのは「拘留所」です。
留置場または拘置所じゃないけど、そんな名前にした理由は特に無いよ(ヾノ・∀・`)
ついでにシェーンの筋肉は、飾りだぞ。
だって美の女神だもん(´-ω-`)




