表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦乙女の帰還  作者: 鷺草
乙女の再出発
35/44

乙女は毛刈りをする


いつも本文書きながら、前・後書きに書くこと考えてるんですが、今回、考えた所まで本文書ききれませんでした……(´-ω-`)





何事にも、想定外の出来事は付き物である。

傭兵や騎士などは、元々危険な仕事が多い分、想定外となると文字通り命懸けの事態に陥る事が多々ある。


そういう意味では、今回の事態は最悪の想定外であるが、別の意味では最も喜ばしい事態である。


「歓迎するよ。貴様は今夜のご馳走だ――」


ビーネン蟻の巣を襲撃してきたのは、シャーフベーアという熊の魔獣だ。

ビーネン蟻の集める蜜を主食の一つとしている為か、臭みやクセが少なく、栄養価も高い肉として有名なシャーフベーア。

人気は高いが、シャーフベーアは獰猛で強力な種族なので狩りにくい上、少々傷みやすい肉でもある。

その面から見ても、ビーネン蟻の討伐が最終局面の今になって現れたことは、非常に好都合である。


それに、シャーフベーアから取れる素材は、それだけではない。


シャーフベーアの攻撃を避けながら、奴の特徴的なクルクルと癖のついた毛を刈っていく。

シャーフベーアの毛は魔法耐性――特に耐火、耐熱性――に優れており、それから作られる布も同じくである。

それだけ聞くと、フランメに任せても焼き肉にされる心配も無くて良さそうな物だが、彼女は炎神から【恩寵】を賜っている。

恐らく、多少の耐火性ならば力付くで無効化できるだろう。


半分ほど毛が刈れた所で、ふと、ある考えが頭を過る。


「……シェスター」

「なんですかー?」

「プレゼントで贈るなら、エプロンとミトン、どっちが良いと思う?」

「……よく わからないけど、クマさんの そざいも、シェスたちと わけっこするの、わすれないで くださーい!」


……そうであった。

今回の依頼の報酬は、卸売り分も含めて四等分する約束である。

四等分されると、シャーフベーア一匹から取れる毛だけでは、ミトンを作るのも難しい。

最近料理に関心があるらしい弟のエルヴィンの誕生日に、手作りのプレゼントで良いと思ったのだが残念である。


「――お前が、仲間をもう一、二匹紹介してくれれば助かるんだがな」

「……グエェェェェェーーーーー!!!!」


思わず溢してしまった私の呟きに答えるかの如く、シャーフベーアの特徴的な雄叫びが木霊する。


「……やっぱり、何言ってるか分からんな」

「わかんないけど、ひゃくパー おこってますよー……」


つまり、仲間を紹介してはくれないのか。

残念ではあるが、奴も一匹だけ(独り者)の寂しい身の上なのかもしれない。

贅沢を言わず、奴一匹の毛と肉で妥協しようと思う。

毛はともかく肉は四等分しても、我が家の四人二柱一匹のお腹を満たすには十分である。


シャーフベーアを傷付けない様に注意を払いつつ、全ての毛を刈り終える。

特に両腕は、攻撃の度に硬質化するので、タイミングを見計らって刈る必要があり、中々に大変だった。

本来は倒してから血抜きの後に行う行程だが、そうするとどうしても血で汚れる部分が出来てしまう。

羊と同じく、毛のみが必要な今回だからこそ出来る芸当で、ヒルシュ兎の様に毛皮が必要な場合はこうはいかない。


「モコモコの かいしゅー おわりましたー。アンナさん、やっておしまい なのですー!」


最初こそ刈り取った毛を収納魔法にしまったが、その後はシェスターが機敏に動き回り、刈った傍から回収して一塊にしてくれていた。


シェスターはフランメとそっくりな言い回しで、最後の応援を送る。


その声を聞きながら、 シャーフベーアと同じ目線となる様に飛び上がる。


「さぁ、血抜きの時間だ」


折角の食材なのだ。致命傷と血抜きの箇所は兼用したい。

始めて肉に刃を入れて、シャーフベーアの首を切り裂いた。


呆気ないものだが、これにてシャーフベーアの討伐は完了である。


脱力し、重力に従って崩れ落ちたシャーフベーアの足が上になる様に、地面を魔法で持ち上げて、私の背丈ほどの山を作る。

大型獣の、傾斜を利用した血抜きは基本である。


水の魔法で簡単に冷やした後に解体に移っていると、女王の討伐を担当していたフランメ達から、タグ越しに連絡が入った。


『やったわよ!女王蟻の討伐完了、雑魚蟻も一〇三匹討伐。燃やした触角と襟巻きはゼロよ!!』

『あぁ……オレ、すっげぇ頑張った……』

「フロイトさんもねぇねも おつかれさまです。シェスたちも とーばつ かんりょーしてますよー」


どうやら向こうも無事に終えたようで、何よりである。

鮮度が命のシャーフベーアの解体を進めながら、タグ越しの会話を伺う。


『――で、結局何が襲ってきてたんだ?』

「シャーフベーアだ」

『……は?』

「シャーフベーアですよー」

『待ちなさいよ!シャーフベーアってあの……』

「肉の栄養価が高くて美味しいと評判の、あのシャーフベーアだ」

『ソコじゃねぇ!シャーフベーアって言ったら、単独ならBランク推奨の魔獣だろーが!!』

「私達は、そのBランクを含んだパーティーじゃないか」

『肝心のBランクが、戦闘に参加してねぇー!!』


何とも細かい事を気にする男である。

シャーフベーアは両腕の硬質化と体中を覆う毛が、物理・魔法両面において攻撃が効きにくいという判断からの、単独Bランク推奨だ。

しかし硬質化するのは腕だけなので、素早さに自信があれば、それ以下の実力でも倒すことは可能である。


『……言っとくけど、アレ結構素早いからな。それに素早さ自慢の奴は、今度モコモコの毛のせいで、深手負わせるの難しいんだからな』


まったく、ああ言えばこう言う男である。

それに、何も私だけの頑張りといった事ではない。


今回の依頼、実はシェスターの活躍がかなりを占める。


全部で十部屋にもなるビーネン蟻の討伐と素材の採取に加え、シャーフベーアというイレギュラーの対処まで、全員が大して休憩を取らずとも動く事ができた。

偏に彼女の【元気娘】のお陰である。

さらに、シャーフベーアの討伐が簡単に済んだのも、シェスターの応援があってこそだろう。


「――と ゆーワケです。フロイトさん、シェスをほめても いーですよー」

『……とりあえず、終わったなら帰るぞ。最後の部屋も採取しに来い』


誇らしげなシェスターを無視して、フロイトは会話を終えてしまった。

何とも身勝手な男である。


ともあれ最後の部屋も採取を終え、巣を完全に塞いだところで、今回の依頼は達成。

あとは【ツンフト】報告するだけである――。





今回で、ビーネン蟻編(?)終わるかと思ったんですが、無理でした……orz


「何事にも、想定外の事態は付き物だぞ」


本当ソレな……(´Д`)


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ