乙女は仲間と探索する
皆様のお陰で三十話目ですよ。
ありがとうございます.+:。 ヾ(◎´∀`◎)ノ 。:+.
三章入ってから、思った以上に話数が続いていますが、まだまだ三章が続きます( ・`д・´)
見捨てないでー……。
傭兵の言う「パーティーを組む」とは、具体的にはどうするのか、ご存知だろうか。
用意する物は、組みたいメンバー全員の傭兵の身分証である。
それぞれの魔水晶製のタグに、メンバーとなる誰か一人の魔力を込める。
手続きの面ではこれで終了で、大抵の場合、全員のタグに魔力を込めた人物をリーダーと呼ぶ。
では、ただ一緒に同じ依頼をこなす事と、パーティーを組んで依頼をこなす事の違いは何なのか。
正直、便利かどうかの違いでしかない。
一人の魔力で繋がれたタグは、互いの居場所や体調等が分かる様になる。
更に音声を伝達する事も出来るので、二手に別れて作業する時などにも役に立つ。
最近では、この音声伝達機能のみを付与した魔水晶のアクセサリーが流行っているらしい。
さて、今回私はフランメとパーティーを組むためにタグを魔力で繋げる訳だが、彼女は他に組もうと思っていたメンバーを待たせて、私に絡んできた事が発覚した。
どうやら彼女は、思い立ったが吉日の猪突猛進タイプであるらしい。
事前にBランクの実力者と知らなければ、出来ればご一緒したくないタイプの人物だ。
ともあれ私は、当初彼女が組む予定だったパーティーにお邪魔して依頼を受ける事にした。
「これ、Bランク混ぜてやる依頼じゃない……」等とゼルドナがぼやいていたが、ちゃんと彼の言い付け通り、大きめの依頼を受けたのだ。問題無いだろう。
◇◆◇
「――せいやぁっ!!」
魔獣の巣とは思えない程しっかりとした造りの部屋に、フランメの掛け声が響く。
本日私が受けた依頼は、ビーネン蟻の討伐だ。
ビーネン蟻とは、蜜蜂と蟻を掛け合わせたような見た目と生態の魔獣である。
蟻の巣のように地面に穴を掘り、その掘った空間は綺麗な六角構造で整備され、その壁面は外から腹に蓄えて持ち帰った、花の蜜の貯蔵庫となっている。
私達が現在、その巣の中でビーネン蟻と対峙している事から、対象の大きさがそこら辺の蟻や蜂とは比べ物にならない事が分かるだろう。
更にビーネン蟻自体は強くはないが、如何せん数が多い。
女王蟻を倒してしまえば、遺されたビーネン蟻は散って行き、別の場所で新たな巣作りを始める可能性があるため、女王蟻討伐までにどれだけ多くビーネン蟻を始末するかも問われる、それなりの時間が必要な依頼だ。
どうせならば、どこぞの本部長殿も連れて来れば良かった。
さて、今回の依頼に従事しているパーティーメンバーは、私を含めて四人。
一人は当然、フランメである。
両端を金属で加工された、己の背丈ほどの棒を振り回し、砕いたそばから炎で焼き払う何とも豪快な戦闘スタイルではあるが、炎を従えつつ動くその様は流麗である。
流石はBランクにして、【破壊僧】ノーネの一番弟子といった所か。
「ごーごー ふぁいとぉ ねぇーね。いけいけ ふぁいとぉ ねぇーね」
お手製だというポンポンを持って、何とも言えない応援をしているのが、フランメの妹であり二人目のメンバーのシェスターだ。
決してふざけている訳ではなく、【元気娘】という加護を活かした、本気の応援である。
【元気娘】は、周りに居る人物の疲れを解消する効果があるらしい。
更に今回の様に個人を応援すれば、いつも以上に活発に体を動かせるようになるという。
「ただし、キズの かいふくは ムリなので、キチンと おいしゃさんに いきましょー」
との事である。
こう見えて私よりも二歳上のCランクで、姉同様にノーネの指導を受けた経験が有るそうだ。
「ポンポンは どんきです。キリッ」
彼女の場合「キリッ」は効果音ではなく、自分で言うものらしい。
現在はシャカシャカと音がして柔らかそうなポンポンではあるが、シェスターの背後から襲ってきたビーネン蟻を、振り向き様にポンポンを持ったまま、「おりゃぁー」と殴りつけ、見事に潰していた。
原理は不明だが、彼女のポンポンは本当に鈍器らしい。
拳を使い闘うという意味においては、シェスターの方がノーネの正統な弟子のような気がする。
そして三人目にして唯一の男性メンバーは、偶然にも私もよく知る人物だった。
「……まさか、あの二人が言ってた"ノーネさんの狂信の対象"が、オマエだったなんてなー」
「世の中、意外に狭いものだぞ。ロイ」
互いの幼少期から家族ぐるみの付き合いだったフロイトは、【守護神の申し子】を賜った、傭兵界で一二を争う若手注目株だ。
そんな注目株のフロイトは、この二年間先輩方から引っ張りだこだった様で、フランメ達を含む多くの人達とパーティーを組み、今では立派なCランクである。
淡く光る壁を己の前に作成し、ビーネン蟻の顎やお尻の針、脚での攻撃を防ぎ、両手で握っている剣で着実に相手を屠っていく。
この巣の入り口も、彼の作る壁で塞いでもらった。
お陰でビーネン蟻が逃げ出すことも、外からの援軍で挟撃される心配もなく、依頼に集中できる。
「……で、オマエ何やってんだ?」
「暇潰しだな。ありがとう、助かるよ」
私がしゃがみこんで礼を言ったのは、先日も世話になったメディカ菫の意思である。
Bランクを含む実力者が三人もいるのだ。正直、討伐方面でする事がない。
フランメも、当初の目的を忘れて討伐に専念している様で何よりである。
という訳で討伐は彼女たちに任せ、私は傭兵の副業と言っても過言ではない、卸売り用の素材収集を行っていた所だ。
とは言え、以前のヒルシュ兎とは異なり、ビーネン蟻自体に素材としての価値はない。
今回の収集品は、この巣の壁一面に蓄えられた蜜である。
ビーネン蟻の蜜は味もさる事ながら、その成分と微量に含まれた魔力が体に良いことから、市場で人気の品だ。
しかしながら、六角構造の穴の中からそれぞれ採取するには手間がかかり、当然ながらビーネン蟻の討伐もセットの仕事なので、需要の割りに供給が少なくて、それなりに値のはる一品となっている。
しかし当然ながら、私の取り分は全てお持ち帰りだ。
さて現在、巣に入って最初の部屋に居る訳だが、彼女達が奮闘してくれている間に、私はこの部屋の蜜を取りきってしまった。
別に彼女達が手こずっているという話ではない。
この蜜採取には、反則に近い裏技が存在する。
必要な物は、水神の強い【恩寵】である。
水神の【恩寵】は、名前の通り水に関連した能力ばかりだが、上位の【恩寵】ともなると、様々な液状の物を自在に扱える。例えば蜜なども。
お察しかも知れないが、新人時代のアンナマリアにこの反則を見せ付けたのは、【水神の申し子】ゼルドナである。
……そういえば、あの頃のゼルドナもBランクではなかったか。
やはり、今回の事で彼に文句を言われる筋合いは無いだろう。
【最高神の愛し子】を持つ私も、そんな彼の見よう見まねで、ビーネン蟻の蜜の採取を試みた所、思いの外上手くいった。
「手元に来てほしい」と強く思うだけで、蜜の側から集まって来てくれるのだ。
どうやら私に宿る水神の【恩寵】も、捨てたものでは無いらしい。
そして話は、私の暇潰しに戻る。
メディカ菫にお伺いをたて、貰っても良い葉がないか聞いた。
一度引っ込んだメディカ菫だが、今度は葉をいっぱい抱えて現れた。
大体、私の片手に山を作る位である。
頂いたメディカ菫の葉を、さっそく細切れにする。
その刻んだメディカ菫の葉を、先程採取したビーネン蟻の蜜と一緒に魔法で作り出した水に混ぜれば、即席回復薬の完成だ。
これは飲み薬であって、飲料ではない。
どうも私の意識一つで味が変わる気がするので、そこは譲れない所である。
物資の現地調達は基本である上、今回のパーティーに癒し手は存在しない。
戦力的には十分でも、用意しておくに越したことはないだろう。
私は調合した飲み薬を人数分に分け終わるとほぼ当時に、この部屋での戦闘が修了した。
これまで合計、二十五匹の討伐である。
アンナちゃん、働かない問題!
「ちゃんと採取はしている。フランメ姉妹は素材の状態まで気を回して無いから、調度良いだろう」
丸焼きか粉砕ですもんねー。
今回は蟻で良かったっすね。
「大抵の場合毛皮が売れる、獣型の魔獣討伐では、ご一緒したくないタイプだな」
アンナちゃんは他人に容赦がない(´-ω-`)




