乙女は依頼を達成する
よくよく振り返ると、三章始まってから前回までで、物語が二日しか経っていないという事実……!(驚愕)
「――ヒルシュ兎の毛皮と角、それぞれ五匹分だ。確認してくれ」
「また来やがった……。ちょっと待ってろ」
窓口にいるゼルドナに、依頼の完了報告を行う。
私が傭兵登録を済ませてから、一週間が過ぎた。
ランクも、登録したてのEからDに上がっている。
EからDへは、傭兵の仕事の流れが一通り理解できれば上がるので、一週間でのランクアップはそう珍しい事ではない。
DからCランクへも、己の力量を知り、依頼によってはパーティーを組む等して、着実に達成率を上げていけば、自ずと上がっていく。
個人の強さが何よりも重視されるのは、Bランクからである。
さて、今のところ大した功績はない訳だが、現在の私は大いに注目を浴びている。
――「登録初日に本部長から恫喝された女の子」という事で。
別に恫喝された訳では無いのだが、その噂が私の傭兵活動に影響しているといった事もないので、そのまま放置している。
更に、何となく昔のよしみで、窓口にゼルドナのいる時は彼に依頼の達成報告をしているのだが、今度は「理不尽な本部長に歩み寄ろうとしている健気な子」という噂が流れ始めているらしい。
最早、誰の事を言っているのやら分からない。
「……確かに依頼通り、ヒルシュ兎の毛皮と角、指定数完了だ。お疲れさん」
カウンターに乗せられた小袋を受け取る。
中身は、今回の依頼達成による報酬である。
【ツンフト】への依頼は、基本的に後払いだ。
今回の様に素材の採取依頼の場合は、【ツンフト】の人間が後程まとめて依頼人の元へ行き、素材と報酬を交換する。
先程受け取ったのは、【ツンフト】が傭兵分の報酬を立て替えた物である。
護衛やガイド等の依頼は例外で、任務完了時点で依頼人から直接傭兵に手渡される事が殆どだ。
「ところで、ヒルシュ兎の肉は依頼には無いのか?」
「あー……さっきの工芸品工房からの依頼には入って無かったな。他の依頼も……今の所は無いな。卸すか?」
「いや、それなら家に持って帰って調理してもらう」
ヒルシュ兎とは、名前の通り兎の魔獣である。
特徴としては、垂れ耳の兎で中型犬位の大きさ。そして鹿の様に枝別れした角を持っている。
毛皮は勿論、角も加工した小物が人気であり、その肉も非常に美味である。
今回の様に特定の素材のみを求める依頼の場合、残った物を別の依頼に充てる事も出来るが、そう都合の良い場面ばかりではない。
そういった場合は、【ツンフト】と提携している各店に、残った素材を卸す事が出来る。
提携店は格安で素材が手に入り、傭兵はその利益を丸々受け取れる。
ヒルシュ兎の肉の場合は食品なので、本部前に店を構える居酒屋【ボブ尻尾のキジ猫亭】に売られる筈だ。
しかし、忘れてはいけない。
我が家は定食屋【ワンコの垂れ耳亭】である。
いくらかの小遣いを稼ぐ位なら、父さまに夕飯のリクエストをする。それが今の私だ。
そして今夜は、ヒルシュ兎のシチューが望ましい。
「お前な、そんなスローペースでいつ武器新調すんだよ」
「それについては大丈夫だ。心当たりがある」
現在私は、自分専用の武器は持っていない。
では、私はこの一週間どうしていたか。
答えは単純なもので、借りているのである。
アンナマリアの頃の私もそうだが、【ツンフト】に登録したての新人は無一文の場合が少なくない。
【ツンフト】では、そういった人達のために様々な武器を貸し出している。
その実、武器の正体は、引退した先輩傭兵達が【ツンフト】に置いていった物だったりする。
お古とは言え、貸し出されるのは状態は良い物ばかりなのに加え、【ツンフト】の人間が定期的に手入れをしてくれている。
新人のうちは、この貸し武器で依頼をこなして報酬を貯め、自分の武器を買う事が、大抵の者の最初の目標である。
しかし先程言った通り、私は特に武器に関しては心配していない。
現在の私の目標は、長期的にはCランク以上の傭兵になること。
短期的には、弟エルヴィンへ贈るプレゼントの購入である。
私が五歳の誕生日を終えて直に、エルヴィンは産まれた。
つまり、私とエルヴィンの誕生日は近い。
つい先週、エルヴィンは私のためにケーキを焼いてくれたのだ。
これに報いるために、私も頑張らねばなるまい。
私は密かに闘志を燃やすのだった――。
もっと話が進むと思ってたのに、思った以上に説明文が幅を利かせた件(´Д`)
だって、細かい所が気になるやん!?(ヤケクソ)
そろそろ、女の子とか女の子とか女の子とか書きたいっす……。
確かに鷺草はオジサマ好きですが、いい加減女の子とか女の子とか女の子とか書きたいっす……(切実)




