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戦乙女の帰還  作者: 鷺草
乙女の再出発
22/44

乙女は愛犬について知る?


この物語、ハイファンタジーの癖にファンタジー要素薄いんじゃないか問題(´-ω-`)


「ヴァイスの主役に据えれば、ファンタジーなんじゃないのか?」


それはそれで、コメディ枠に移動しそうな気がするっす。


「ファンタジーとは難しい物だな」


ねぇー(*´・д・)





【ハオプト役所 魔獣課】。

その名の通り、魔獣に関する仕事を一手に引き受ける部署である。


具体的には魔獣関連の情報の収集や提供、一部魔獣の研究。

そして魔獣飼育の許可証の発行等がある。


前にも述べたが、一口に魔獣と言っても魔力を持つ生き物全般を指すため、魚や虫など様々な種類がいる。

普段は温厚で愛くるしい見た目の魔獣も多く存在し、中には求愛の際に魔力を使って光る魚や、花の香りを振り撒く鳥なんかもいる。


そういった魔獣は、ペットとしての需要も高く、飼育の際には魔獣課への申請が必要となる。

別に申請をしない事で処罰の対象となる事はないが、何かの折に逃げ出した時に証が無いと、討伐される恐れや、捕獲されて転売等というケースがある。


シュトゥルヴォルフを自称するヴァイスが、これからも我が家で穏やかに過ごしたいのなら、許可証の取得は必要だろう。


「なるほど!そうすればわっちも、大手を振って歩けるゆうワケですね!」


ヴァイスが納得したという感じで手を――前足を打った。

こ奴は本当に犬なんだろうか。


「犬ちゃいますよ、狼です。更に言えば狼の魔獣ですよ」


そうであった。しかし、問題はそこではないと思われるのは、私だけなのだろうか……。


◇◆◇


フニャーン。

キャキャキャッ!

くけけけけけ……。


「……ふむ。さっぱり分からん」

「何がですか?」


魔獣課の待合室のソファに腰掛けつつ、私は周りから聞こえる魔獣の声を拾っていた。


朝食の席で最高神レギリオに聞いた話によると、【最高神の愛し子】というのは、全ての神から少なからず【恩寵】を賜っているのと同義なのだという。

神の中には獣神もおり、ヴァイスの言っている事が分かるのは、その神の【恩寵】と同じ効果が作用していると考えられる。


とは言え、現在周りには様々な魔獣がいるが、どの鳴き声も何を訴えているのか分からない。

恐らく、私に備わる獣神の【恩寵】はそれほど強くない。

ヴァイスのように、ある程度互いを理解した仲でないと、言葉も理解出来ないのだろう。


初めて実感した【最高神の愛し子】の効果は、何とも小さいものだったが、私はこれで満足している。

【獣神の愛し子】というのも歴史上に何度か登場し、ユニコーンやセイレーン、ヒポグリフといった王道の魔獣達にも好かれ、様々な場面で活躍したらしい。


その実、愛し子はあらゆる獣に好かれすぎた。


多くの獣達に囲まれ、己の住む場所を定めるのも困難を極めたという。


第一、騎士や傭兵にとって、魔獣討伐は日常茶飯事だ。

断末魔や命乞いを聞かされるのは、人間の分だけで間に合っている。


「アンナさん、ヴァイスさん。お待たせしました」


窓口の小太りの男性から声がかかる。

魔力を持たないのに自称魔獣、それも数百年前に絶滅したシュトゥルヴォルフだと言い張るヴァイスについて相談した時、正直、追い返されるのは覚悟していた。

しかしこの男性は念のため、ヴァイスの毛を解析魔法にかけてくれたのだ。

再び呼ばれたという事は、解析魔法の結果が出たのだろう。


「結果から申しますと、ヴァイスさんはシュトゥルヴォルフで間違いないでしょう。ヴァイスさんの毛の遺伝子と、魔獣課で保管していたシュトゥルヴォルフのサンプルの遺伝子は、同じものでした」


これは意外な事実である。

正直疑っていたが、まさか本当に、絶滅と認識されていた種族だったとは。

しかしこれは、何とも面倒な結果である。


「ですが測定の結果、ヴァイスさんには魔力が有りません。ですので……どうしましょう?」


ヴァイスには解析魔法の他に、魔力の測定もしてもらった。

周りにも気付かれない程微量な魔力や、内に秘めた魔力があるかも知れないので、念のためだったが、こちらは予想通りの結果らしい。


何度も言うが、魔獣とは、魔力を持つ生き物全般の事で、シュトゥルヴォルフは風に関する魔法が使える魔獣である。

ヴァイスは、遺伝子的にはシュトゥルヴォルフ(魔獣)だが、定義的には魔獣ではない。

ある意味ヴァイスらしい、ややこしい結果である。


「そもそも、シュトゥルヴォルフは魔獣ですが、骨格や生態は狼そのものです。なので、あんな事は出来ません」


魔獣課の男性はヴァイスに目を向ける。

シュトゥルヴォルフとの結果が出たときこそ、ヴァイスは飛び上がり何処からか取り出した扇を片前足に舞踊っていた。

しかし、魔力無し判定を受けた今、ヴァイスは後ろ足を抱えて座り、地面にのの字を書いている。

側にいるマダムの手には、先程ヴァイスが使用していた扇が握られている。彼女に借りたのか。


狼の魔獣の遺伝子を持つが魔力は無く、顔つきもどちらかと言えば犬っぽく、何処までも人間臭い行動をする動物――。


「――結局、わっちは何なんでしょう?」


ヴァイスは答えを尋ねてくる。本人としても、この中途半端な状態は辛いのかも知れない。

とは言え、私も明言出来るだけの答えは持っていない。


暫く考えたが、私に言えるのは、以前よく聞いた言葉だった。


「ヴァイスはヴァイスだ」

「何ですのそれー!」


ヴァイスが家で飼われ始めた頃に、よく言われたものである。

(よそ)(よそ)ヴァイス(うち)ヴァイス(うち)」と。

それを思い出すと、ヴァイスの事で悩むのが馬鹿らしくなった。

魔獣課としても、我が家で飼ってはいけないという訳では無さそうなので、もうこれで良いのではないか。


どのみち、ヴァイスが家族の一員であることに変わりはないのだ。


取り敢えず魔獣課には、シュトゥルヴォルフの亜種という形でヴァイスを登録してもらった。

登録証である一対のタグを貰い、一つは私が首から下げる。

もう一つは、ヴァイスが首輪代わりに着けているスカーフに縫い付ける。これでも裁縫は得意分野だ。


このタグは一種の魔道具で、万一の時には救難信号と共に、対になるタグの位置情報が他方に知らされる仕組みになっている。

また、タグには番号が記されており、迷い出た魔獣が保護された時には、魔獣課から飼い主に知らせが行く事もある。


こうして、ヴァイスは【飼育許可認定済 (たぶん)魔獣(の亜種)】として登録された。

タグは魔獣課がヴァイス用に手直しした、オリジナルの物である。

何とも微妙な文言となっているが、ヴァイスがご機嫌なので、良しとするのだった。





ヴァイスはヴァイスを、ただ語るだけだった回!

たぶん今後、ヴァイス目線の回があっても、これ以上の結論が導かれる事はないぞ(・∀・)

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