乙女は愛犬と出掛ける
あーたーらしい 朝が来た♪
「本当に朝を迎えただけだぞ」
……それな(´Д`)
ここ二、三話に比べたら短めです。申し訳ない……。
アンナの十歳の誕生日は、【恩寵の儀】をきっかけに、ゴタゴタした一日となった。
しかし、どれだけ慌ただしくても必ず一日は終わり、次の日を迎える。
私も例外ではなく、今日もいつもと変わらぬ朝を――
「あぁ、姐さん。おはようございますー」
「おはよう、ヴァイス」
変わらぬ――
「なっちゃん、おはよー……あーアンナママぁ、お水ちょうだい。昨日飲みすぎちゃた~」
「パパさーん!僕のオムレツはふわふわでよろしく」
変わ――
「おはよう、ルヴィ。昨日はありがとう」
「うん。おはよう姉さん。……せまいね」
――訂正する。
私が十歳を迎えてから二日目の朝は、今まで以上に賑やかになった。
まず、私は二つの【恩寵】を賜った。
これはアンナマリアとして過ごした魂のまま、転生をした弊害のようなものらしい。
尚且つ、その【恩寵】は二つとも愛し子の物のため、二人の神に懇意にして頂く事となった。
一人が、戦の女神クリーナ。
アンナマリアの頃から共にいる、気心知れた仲である。
もう一人が、最高神レギリオ。
名前は立派だが、神の力から生まれたばかりの存在らしく、私とも一悶着あったのだが――
「馴染んでるな、レギリオ」
「昨日、姐さんが騎士さんとお話し中に、パパさんに餌付けされとりましたよ」
なるほど。
昨夜、ちゃっかり食事会に参加していたのは知っていたが、父の料理をこれ程気に入ってくれたとは思わなかった。
私が死ぬまで、長い付き合いになる予定なのだ。これを機に、是非お近づきになりたいものである。
次に、【恩寵】に関する謁見が終わり帰宅すると、我が家で暮らす犬のヴァイスと意思の疏通が図れるようになった。
おそらく、レギリオの【恩寵】による効果なのだと思われる。
これが不思議なことに、ヴァイスはほぼ「ワン」と一度鳴くだけなのに、同時に聞こえる人の言葉が、二言三言と続く事が度々ある。
意思疏通がとれるようになっても、ヴァイスは変わらず謎の多い奴である。
かくして、私の十歳と二日目の朝は、四人と二柱、一匹とで囲む食卓からスタートした。
エルヴィンの言った通り、我が家のダイニングスペースでは、少々手狭であった。
◇◆◇
「――よし。ヴァイス、出掛けるぞ」
「わっちもですか?構いませんけど、どちらまで?」
朝食後、出掛ける準備を済ませてから、ヴァイスに声をかける。
昨夜の食事会で、私と会話が出来ると発覚したヴァイスだが、その折に自分が魔獣である事を溢していた。
魔獣討伐も、騎士団の立派な任務である。
それでもヴァイスが騎士団御用達の【ワンコの垂れ耳亭】で看板犬をやって来れたのは、「シュトゥルヴォルフ」という魔獣が既に絶滅扱いされて久しい事。
そして、ヴァイスから魔力が全く感じられない事が挙げられるだろう。
そもそも魔獣とは、魔力を持つ人間以外の生き物全般を指す。
獣という字が使われているが、魔力を持っていれば虫も魚も、等しく魔獣扱いである。
シュトゥルヴォルフは狼の魔獣だが、おそらくヴァイスは魔力を持っていない。
それ以前に、ヴァイスは狼というよりは、ただの白い大型犬といった風貌である。
しかし本人は魔獣を自称し、飼い主もそれを認知してしまった以上、放っておくわけにもいかない。
今のままでは、ヴァイスが騎士や傭兵に斬られても文句は言えないのだ。
「――という訳で、ヴァイスが斬られても文句が言えるよう、手を打ちに行く」
「そこを何とか!斬られん方向でお願いしますー!」
冗談はさて置き、ヴァイスが危害を加えられないように、もし万一があっても物申せるように、私はヴァイスと【ハオプト役所 魔獣課】に足を運んだ――。
【よくある質問6】
Q.アンナちゃんは、レギリオとヴァイスには愛称を付けてないんですか。
A.レギリオの愛称は、既に用意済みです。本人は呼ぶタイミングを窺っています。ヴァイスはヴァイスです。




