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戦乙女の帰還  作者: 鷺草
乙女の再出発
18/44

乙女は友と語らう


アンナちゃんのバースデーが、一向に終わらない件(´-ω-`)


「終わらないどころか、家にも帰れていないしな」


ぬぁぁぁあぁぁぁ!!!!





謁見の間を後にし、侍女の案内で城の外へと向かう。

謁見は昼一番で始まった筈なのに、日は既に西に傾いている。


結局、昼食を食べそびれてしまった事を特筆しておく。

食べ物の恨みは恐ろしいのだと、実感するいい機会となった。


「――アンナ!」


背後から、私を呼ぶ声がする。その声だけで、彼だと分かる。

振り替えると案の定、飾られた熊こと、ベルンハルトが追って来ていた。


何だかんだ言っているが、ベルンハルトは私の想い人である。

ただ、彼にはゴテゴテとした装飾のついた服よりも、素材()を活かすシンプルな衣装の方が似合うと思うのだ。

とは言え、スタイリング出来るほど、ファッションに詳しい訳ではないのが悲しい所である。


立ち止まって、ベルンハルトが追い付くのを待つ。

謁見の間では離れていて分からなかったが、こうして近付くと彼の大きさを実感する。

アンナマリアでも彼の背後に収まっていたのだ。成長途中のアンナとなど、比べるまでもない。


「どうした、ハル。まだ何かあったか?」


当然の事ながら、【近衛騎士団】の団長であるベルンハルトは、未だ勤務時間内だ。

モナルーシャ女王に断りを入れてきたのか、そもそも彼女の命か。いずれにしても、あまり時間をかけるわけにはいくまい。


ベルンハルトは逡巡した後、私を見下ろして切り出す。


「……お前は、あれで良かったのか?」

「……ん?」


あれとは、どれの事だ。

公の場でベルンハルトを看取る(見殺す)発言をしたことか。

それとも、最高神レギリオに喧嘩を売ったことか。

はたまた、レギリオの事を戦の女神クリーナに丸投げしたことか。


「お前は、私の代わりに死んだんだろう。それで良かったのか?」

「……そこか」


もっと前の段階の話だったようだ。言葉が少ないのは相変わらずか。


折角の機会なので、もしも私がアンナマリアのままだったら、と想像する。

かつてレギリオに言われた通り、死ぬのが私ではなくベルンハルトだった世界。


恐らく、私は騎士団には居ない。

騎士を辞し、一人東へ向かう私が脳裏を過る。


歩いて、東のデュナス王国の兵を見つけては斬って。

そしてまた歩いて斬って、歩いて斬って、歩いて斬って――。


その最中に私も死ぬのか、それともデュナスの国王の首をも獲るのかまでは分からない。

しかし、いずれにしても――


「――駄目だな。色がない」

「……色?」


もしもを想像しているせいか、それとも、その世界の私があまりに空っぽなせいか。

想像の中の私も周りの景色も、モノクロで寂しい物である。


顔を上げ、再びベルンハルトを見て不敵に笑う。


「優しい両親に可愛い弟、ちょっと変わっているペット。遠慮のいらない新たな友と、私を今も支えてくれる神。

賑やかで楽しくて、色鮮やかな世界じゃないか」


そう。私はベルンハルトの代わりに死んだから、家族を知り、新たな友も得た。


「何より今、私の前にハルがいる。あの時ハルの代わりに死んだら、私は多くの物を遺し、多くの物を手に入れたよ。

……この体はちょっと想定外だったけどな」


アンナという名は、アンナマリアにあやかって付けられたものだ。

アンナマリアだった頃の【恩寵】も賜った。同時に予期せぬ【恩寵】も賜ったが。

ベルンハルトとも再会を果たせた。


アンナマリアだった頃に遺したものは、こうして少しずつ回収していけば良い。


惜しむらくは、この体か。

私が再び騎士となれる十六歳の時、ベルンハルトは四十一歳である。

普通なら引退を考える頃ではあるが、折角愛し子の【恩寵】を持っているのだ。せいぜい現役で頑張っていてもらいたい。


「これが私の答えだ。納得して頂けたか、武将殿?」

「……敵わんな、アンナには」


などと言っているが、アンナマリアはベルンハルトに一度も剣で勝った事がない。

舌戦くらい圧勝出来ないでどうする。


「――そうだ。近い内に休暇はとれるか?」

「構わんが、何かあるのか?」


聞かれて、少し考える。


「……デート?」

「いや、疑問で返されてもだな……」


死んだ事は後悔していないが、気になっている事は幾つかある。

あの日共にいたベルンハルトならば知っているはずなので、案内を頼みたいのである。


男女が休日を共にするという意味ならば、デートと言えなくない……かもしれない。


取り敢えず、休暇は申請してくれるようである。

ベルンハルトは団長を勤めているので、取れるまでは気長に待つことにする。


「――あぁ、大事なことを忘れていた」


帰ろうと背を向けたが、思い出して再びベルンハルトを見上げる。


「ただいま、ハル」


色々と話したいことはあったが、やはり一番はこれだった。


「おかえり、アンナ」


満足した私は、今度こそ城を後にするのだった――。





まだまだアンナちゃんの誕生日が続きます!(ヤケクソ)


早くお家に帰したい( ノД`)……



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