乙女は友と語らう
アンナちゃんのバースデーが、一向に終わらない件(´-ω-`)
「終わらないどころか、家にも帰れていないしな」
ぬぁぁぁあぁぁぁ!!!!
謁見の間を後にし、侍女の案内で城の外へと向かう。
謁見は昼一番で始まった筈なのに、日は既に西に傾いている。
結局、昼食を食べそびれてしまった事を特筆しておく。
食べ物の恨みは恐ろしいのだと、実感するいい機会となった。
「――アンナ!」
背後から、私を呼ぶ声がする。その声だけで、彼だと分かる。
振り替えると案の定、飾られた熊こと、ベルンハルトが追って来ていた。
何だかんだ言っているが、ベルンハルトは私の想い人である。
ただ、彼にはゴテゴテとした装飾のついた服よりも、素材を活かすシンプルな衣装の方が似合うと思うのだ。
とは言え、スタイリング出来るほど、ファッションに詳しい訳ではないのが悲しい所である。
立ち止まって、ベルンハルトが追い付くのを待つ。
謁見の間では離れていて分からなかったが、こうして近付くと彼の大きさを実感する。
アンナマリアでも彼の背後に収まっていたのだ。成長途中のアンナとなど、比べるまでもない。
「どうした、ハル。まだ何かあったか?」
当然の事ながら、【近衛騎士団】の団長であるベルンハルトは、未だ勤務時間内だ。
モナルーシャ女王に断りを入れてきたのか、そもそも彼女の命か。いずれにしても、あまり時間をかけるわけにはいくまい。
ベルンハルトは逡巡した後、私を見下ろして切り出す。
「……お前は、あれで良かったのか?」
「……ん?」
あれとは、どれの事だ。
公の場でベルンハルトを看取る発言をしたことか。
それとも、最高神レギリオに喧嘩を売ったことか。
はたまた、レギリオの事を戦の女神クリーナに丸投げしたことか。
「お前は、私の代わりに死んだんだろう。それで良かったのか?」
「……そこか」
もっと前の段階の話だったようだ。言葉が少ないのは相変わらずか。
折角の機会なので、もしも私がアンナマリアのままだったら、と想像する。
かつてレギリオに言われた通り、死ぬのが私ではなくベルンハルトだった世界。
恐らく、私は騎士団には居ない。
騎士を辞し、一人東へ向かう私が脳裏を過る。
歩いて、東のデュナス王国の兵を見つけては斬って。
そしてまた歩いて斬って、歩いて斬って、歩いて斬って――。
その最中に私も死ぬのか、それともデュナスの国王の首をも獲るのかまでは分からない。
しかし、いずれにしても――
「――駄目だな。色がない」
「……色?」
もしもを想像しているせいか、それとも、その世界の私があまりに空っぽなせいか。
想像の中の私も周りの景色も、モノクロで寂しい物である。
顔を上げ、再びベルンハルトを見て不敵に笑う。
「優しい両親に可愛い弟、ちょっと変わっているペット。遠慮のいらない新たな友と、私を今も支えてくれる神。
賑やかで楽しくて、色鮮やかな世界じゃないか」
そう。私はベルンハルトの代わりに死んだから、家族を知り、新たな友も得た。
「何より今、私の前にハルがいる。あの時ハルの代わりに死んだら、私は多くの物を遺し、多くの物を手に入れたよ。
……この体はちょっと想定外だったけどな」
アンナという名は、アンナマリアにあやかって付けられたものだ。
アンナマリアだった頃の【恩寵】も賜った。同時に予期せぬ【恩寵】も賜ったが。
ベルンハルトとも再会を果たせた。
アンナマリアだった頃に遺したものは、こうして少しずつ回収していけば良い。
惜しむらくは、この体か。
私が再び騎士となれる十六歳の時、ベルンハルトは四十一歳である。
普通なら引退を考える頃ではあるが、折角愛し子の【恩寵】を持っているのだ。せいぜい現役で頑張っていてもらいたい。
「これが私の答えだ。納得して頂けたか、武将殿?」
「……敵わんな、アンナには」
などと言っているが、アンナマリアはベルンハルトに一度も剣で勝った事がない。
舌戦くらい圧勝出来ないでどうする。
「――そうだ。近い内に休暇はとれるか?」
「構わんが、何かあるのか?」
聞かれて、少し考える。
「……デート?」
「いや、疑問で返されてもだな……」
死んだ事は後悔していないが、気になっている事は幾つかある。
あの日共にいたベルンハルトならば知っているはずなので、案内を頼みたいのである。
男女が休日を共にするという意味ならば、デートと言えなくない……かもしれない。
取り敢えず、休暇は申請してくれるようである。
ベルンハルトは団長を勤めているので、取れるまでは気長に待つことにする。
「――あぁ、大事なことを忘れていた」
帰ろうと背を向けたが、思い出して再びベルンハルトを見上げる。
「ただいま、ハル」
色々と話したいことはあったが、やはり一番はこれだった。
「おかえり、アンナ」
満足した私は、今度こそ城を後にするのだった――。
まだまだアンナちゃんの誕生日が続きます!(ヤケクソ)
早くお家に帰したい( ノД`)……




