乙女は怒涛の再会を果たす 参
せめて二話までで終わると思ってた謁見シーンが、既に三話目な件(´-ω-`)
謁見シーンのラストですが、女王様やヒーローが空気です。
何でこうなった……orz
紆余曲折あったが、懐かしい人達とも再会し、私がアンナマリアであった事も理解頂けた。
ついでにアンナの新しい愛称も決まった。
急遽行われた謁見も、恙無く終わろうとしていた。
しかし、それを良しとしない者がいた。
「もしもーし。君、【最高神の愛し子】でもあるよね。何で呼ばないのさー!」
彼である。
いつの間にか私の隣に姿を見せていたのは、いつぞやの少年神様。
名前は――レギリオ、だったか。
基本的に、【恩寵】は一人一つとされている為にうっかりしていたが、今回私は二つの最上位の【恩寵】を賜っていたのだった。
一つは【戦乙女の帰還】。
アンナマリアの【戦の女神の愛し子】を、アンナとなった今の私も引き継ぐ、といった【恩寵】だ。
もう一つは【最高神の愛し子】。
今のところ、これといった【恩寵】の効果は感じていないが、隣には十年前に私を転生させた張本人がいる。
神は愛し子の前にしか現れないので、最高神かはさて置いて、二つ目の【恩寵】も私のものなのだろう。
「十年ぶりになるか。【恩寵】から見るに、貴殿が最高神なのかな?レギリオ」
「そうだよ、言ったじゃん。僕、偉いんだって」
自慢気に胸を反らす、最高神レギリオ。
残念ながら、周囲の人間はついて行けていないが。
些か空気の読めない彼は、更に爆弾を投げ込んだ。
「――で、君はいつ【武神の愛し子】を殺すのかな?」
レギリオの登場で、どことなく緩んでいたはずの空気が張りつめる。
誰もが動くのを躊躇する気配の中、お構いなしに怒りをあらわにする者がいる。
戦の女神、クリーナだ。
「……ざけんなよ、最年少のパシリ神!誰が【最高神の愛し子】だって!?なっちゃんはアタシのですぅ!!
しかも【武神の愛し子】殺せとか何様だっつーの!なっちゃんがそんな事する訳ないじゃん!?
テメー、アタシに喧嘩売ってんなら買ってやるから、オモテ出ろこの野郎!!!!」
クリーナは勢いよく捲し立てる。
既に察しているだろうが、戦の女神クリーナと武神は、ラブラブな夫婦だ。
式を挙げたり届けを出した訳ではないので、正確には恋人なのかも知れないが、些細な違いである。
【戦の女神の愛し子】だけでなく、【武神の愛し子】まで引き合いに出され、彼女の怒りも尋常ではない。
対するレギリオも、私の背後から顔を出して応戦する。
「しょうがないじゃん、代替わりして間もないんだもん!
僕はあらゆる神の仕事を代行できる万能の神であって、パシリじゃないし!!
それに忘却の行程がなかった魂に、【恩寵】が残るなんて思わないじゃん!体に贈る物でしょ【恩寵】って!?」
「かぁー、これだからロクに人間と絡まない引きこもり神は!
体にあげた【恩寵】は、使ってる内に心に刻まれてくの!そうして刻まれれば刻まれるほど、【恩寵】が扱いやすくなるワケ。
だから人間が死ぬ度に、忘却の行程を踏むの。例え恩恵スタートでも、心に刻まれたまま転生を繰り返せば、やがては愛し子をも越える。
更に今回のなっちゃんみたいに、複数の【恩寵】持ちがこの世界の普通になってみなさいよ。アタシ達なんか、すぐにゴミ以下の存在認定よ!
事務仕事ばっかしてないで、自分の種族の歴史くらい勉強しとけっつーの!!」
クリーナの言葉には、強い実感が滲んでいる。
恐らく遥か昔、それこそ前世の記憶や【恩寵】をそのままに、人間が転生をしていた時があったのだろう。
そして恐らく、当時の人間は愚かにも思い上がったのだ。
自分達は神よりも上の存在だ、と。
「事務仕事ばっかじゃないし、色んな神の仕事代行してるし!て言うか、そんな面倒なら、もう人間と関わんなきゃ良いじゃん!!」
「バカじゃないの。人間と関わんなきゃ、武神とイチャイチャする以外に楽しみが無いじゃない!
つーかアタシが聞きたいのは、【武神の愛し子】をどーすんだって話!?」
……そろそろ、私を挟んでの言い合いは終わらないだろうか。耳が痛い。
神々には関係ないのだろうが、現在は謁見の最中である。もはや、それ所ではないのだが。
「あの日元々死ぬはずだった【武神の愛し子】を、殺してもらう約束をしてたの!あの時のアンナマリアだって同意したし。ね?」
「確かに同意したが……」
「【戦の女神の愛し子】よ」
面倒な時に話を振られたと思ったら、玉座の方から割って入る声がした。
女王モナルーシャの隣に、儚くも美しい女性が現れる。
彼女こそ、この国で最も有名な愛の女神、シェンリーベである。
「詳しい説明を求めます。現在の【武神の愛し子】は、この国の防衛の要。私や武神、更には戦の女神の怒りを買ってでも、貴女は彼を殺す、と?」
「はい」
私は淀みなく答える。
神から怒りを買う事など、既に覚悟している。
「それはいつ……」
「ベルンハルトが寿命を迎える時に」
不敬ではあるが、シェンリーベの言葉を遮り、答える。
「……どこで?」
「彼はベッドの上、私はその側が理想でしょうか」
「どのように殺す、と……?」
「彼の命が尽きるのを、見殺しにしようかと」
答える内に、段々と呆けた空気に包まれていく。
私の理想は、老衰で亡くなるまでベルンハルトの隣に居ることである。
その為の手段は色々あるが、一番自然なのは、やはり夫婦という関係である事だと思う。
勝手に人の妻になる想像をするのは、やはり少々傲慢だったのだろうか。
「……ちょっと待って。君、ベルンハルトを看取ろうとしてない?て言うか、してるよね。殺す気無いよね!?」
「殺すぞ?ちゃんと見殺す」
「それを一般的に"看取る"って言うよね!?」
そうだろうか。
寿命を迎える彼に、私は何もしないのだ。充分に見殺しと言えると思う。
まぁ、手ぐらいは握るだろうが。
「【戦の女神の愛し子】、更に説明を求めます。結局、貴女は最高神と何を約束したのです?」
「私が約束したのは、ベルンハルトを殺すこと。しかしながら、いつ、どの様に殺すのかは、最高神からは何も言われておりません」
周囲のレギリオを見つめる目が、何とも残念そうなものに変わる。
ここにいるのは、この国の中枢を支える人物ばかりである。
こんな大穴だらけの契約を交わした日には、己の首が飛ぶ。
「え、何それ!さっきの神の怒りを買っても~、のくだりはどうなったさ!?」
「神に恨まれる覚悟なら、既にしている。それが戦の女神であろうが、武神であろうが、愛の女神であろうが。――それが例え、私を転生させた神であろうが」
「……え?」
徐々に状況が飲み込めてきたらしいレギリオの頭に手を置く。
今の私と彼はそれ程背丈に差がないので、格好がつかないのはご愛嬌である。
「悪いな、少年」
「……騙されたー!少年言うなー!!」
私が誰の怒りを買うつもりだったのか、ご理解頂けて何よりである。
とうとう、堪えかねた様に吹き出した音が聞こえた。
少し前にあったような場面だが、今回は某王子ではなくクリーナだ。
「パシリ神ざまぁ!良いじゃん、さっすがアタシの子。愛の女神も文句ないっしょ?」
「【戦の女神の愛し子】が、この国に牙を剥かないというのなら、私は何も言いません」
「僕が全然良くないんだけど!」
シャンリーベはともかく、レギリオは納得していないようだ。こればかりは仕方がない。
【恩寵】まで賜った神を蔑ろにするのは気が引けるが、私も聖人君子という訳ではない。
「オッケー、任せて。アタシが説得しといてあげる」
「良いのか?」
「もちもち。リーナちゃんにお任せあれ!」
「え゛」
仲良く出来るのなら、それに越したことはない。遠慮なくクリーナに頼むことにする。
「ほら、帰るわよレギリオ」
「だから僕が全然良くないんだけど……痛い痛い痛い!」
クリーナは、レギリオの頭を掴んで帰って行く。
根拠はないが、恐らくクリーナならば大丈夫だろう。
レギリオは――健闘を祈っておく事にする。
何とも言えない空気が残された謁見の間であったが、再びモナルーシャ女王の拍手が響き、謁見の終わりを告げた。
かくして、急遽執り行われた謁見は、非常に締まらない形で幕を閉じたのだった――。
【神様登場時の演出の考察】
◆クリーナ
目視可能な風が繭のような形を作り、その中から登場。
◆シャンリーベ
現れると同時に、薔薇の花弁が舞う。
◆レギリオ
「アンタが主役」タスキと紙吹雪。




