表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
戦乙女の帰還  作者: 鷺草
乙女の家族事情
11/44

幼女の二つ名とストーカー

【よくある質問】


Q.この物語のモデルとなった時代や地域を教えて下さい。


A.作者のなんちゃって知識の寄せ集めです。チャンプルー文化です。





「すまない、御主人。オレンジを三つ頼む」

「あいよ」


【ワンコの垂れ耳亭】の昼の営業が終わり、日が傾き始めた頃。

アンナは、近所の青果店にお使いに出ていた。

これは店で提供するものではなく、母さま用だ。


最近の母さまは、衝動的にオレンジが食べたくなる事が増えた。

妊婦というのは、無性に何かを食べたくなる時がままあるものだそうだ。

ちなみに私がお腹に居たときは、何の変哲もない皿が食べられる気がしたらしい。何故だ。


「お宅、【定食屋】のアンナちゃんだったな」

「ああ」


私と同じ年頃の女子は、「アンナ」や「マリア」といった名前の子が大勢いる。

どちらも、私が生まれた頃に名を轟かせていた、麗しの女性騎士にあやかって付けられた名前だそうだ。……誰だそれは。


兎にも角にも、同じ名前ばかりでは何かと不便である。

王族や貴族の様に、家名が有るわけでもないのだから。

そのため、両親の仕事や住んでいる地域を名前の前に付けて、それぞれを呼び分ける。


言うなれば、今の私の二つ名である。


残念ながら、【定食屋の娘】のアンナであって、私の料理の腕が格段に上がった訳ではない。


「元気な子が生まれると良いな。はい、オマケ」

「ありがとう」


青果店の主人は、オレンジの他に、桃を布袋に入れてくれた。

買った品よりも高価なオマケだが、この国で桃は、生命の象徴とされている。

主人なりの安産祈願なのだろう。


主人の粋な計らいのおかげで、私もまだ見ぬ弟妹(きょうだい)に会う日が楽しみになった。


◇◆◇


――さて。

いち早く家に帰りたい所ではあるが、青果店を出た直後から、何やら視線を感じる。


もっとも、殺気のような悪意あるものではない。

むしろ、「助けてください~」とか「自分、可哀想なんです~」といった、情けない感じだ。

別に、視線の主に聞いた訳ではない。単なる私の勘だ。


何故なら、私に視線を寄越していたのは、子犬なのだから。


子犬は前足で自分のお腹を擦りながら、布袋を羨ましげに見上げてくる。

まるで「良い臭いがしますね。一つ私に下さいな」とでも言わんばかりの仕草と目線だ。

なんとも人間臭い子犬である。


しかし布袋には、母さまご所望のオレンジと、青果店の主人からの厚意で貰った桃が入っているのみである。

おいそれと渡せるものではない。


「すまない。中の物を譲るわけにはいかないんだ」


後ろ髪を引かれつつも、子犬を撒くために遠回りをしながら帰路についた。


――のだが、


「きゃうっ!」

「何っ!?」


件の子犬は、【ワンコの垂れ耳亭】の入り口で私を待ち構えていた。

道中、つけられている気配はなかった。

一体なぜ――


「クーン」


子犬は後ろ足で立ち上がり、腰に前足()をあて自慢気に鼻をひくつかせる。

本当に犬か疑わしい奴であるが、分かりやすくて助かる。

つまり、ここから青果店に向かうまでに付いた私の臭いを辿ったのか。


悔しいが、今回は私の完敗である。

家に入り、両親に子犬の件を相談した。


結果、ヴァイスと名付けられた子犬()は、【ワンコの垂れ耳亭】の立ち耳の看板犬として、家族の一員となった。

食事を扱う店に犬がいるという事を心配したが、両親とお客の寛大な対応で杞憂に終わっている。


今日もヴァイスは、彼に与えられたベッドで、腹を上にし、掛け布団を綺麗に被って昼寝をしている。


本当に、本当に犬なんだろうか……。





【よくある質問2】


Q.ヴァイスの十八番芸は何ですか?


A.薄焼き卵の上に乗せられたケチャップライスを、器用に包む芸です。アンナちゃんにも出来ない高等技術です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ