幼女は看板娘になる
数字入れてないから分かりにくいですが、10話目ですぜ、アンナちゃん!
「あまりにハルとの再会が先過ぎて、私とロイの恋物語と勘違いされそうだな」
……それはイカン(@ ̄□ ̄@;)!!
(この物語のヒロインはアンナ、ヒーローはベルンハルトです。一応;)
「アンナちゃん、また来たよー」
「こんばんは」
「いらっしゃい、お姉様方。此方の席にどうぞ」
最近足しげく通ってくれる女性騎士二名を、テーブル席に誘導する。
母さまの体調不良は、彼女の体に再び新しい生命が宿った事が要因だった。
つまり、私に弟か妹ができるらしい。
病気ではなくて安心したが、無理をしてはいけない事に変わりはない。
考えた末、私はお店の接客を手伝う事にしたのだ。
しかし――
「アンナちゃん、今日のオススメは?」
「アンナ、酒の追加してくれ」
「アンナちゃん、お勘定ー!」
何故か最近、お客が増えた気がする。
母さまが身重なのを気遣ってか、私に用件を伝えてくれるのが、せめてもの救いだ。
ちなみに、勘定だけは母さまが全面的に担っているため、私に言われても対応しかねる。
連日満席で忙しい日々が続くが、楽しみがない訳ではない。
「ライ小隊長、いらっしゃい。久々だな」
「まーた人の名前を変な風に呼びやがって……まぁ良い。来てやったぞガキンチョ」
私がアンナとなってから、まだ四年半ほどしか経っていない。
騎士御用達の【ワンコの垂れ耳亭】には当然、アンナマリアだった頃の知り合いが来店することもある。
ライ――クラインもその一人で、アンナマリアの二年後輩にあたる騎士だ。
クラインをカウンター席に案内し、注文を聞く。
「あー……酒頼む。度数高めのヤツ。あとは適当に肴出してくれ」
「明日に響くぞ」
「るっせぇ。こっちは北部遠征で寒い中だってのに、シュラーベーア討伐で一滴も呑めなかったんだよ。それに、明日はちゃんと休みだ」
シュラーベーアとは、北部に生息する熊の魔獣だ。
冬眠はせず、寒さが厳しいほど活発に動くという厄介な生物であるため、騎士団の数ある任務の中でも過酷な部類に入る。
相変わらず口は悪いが、真面目に仕事をしているらしい。
ご褒美に、肴の唐揚げを一個オマケしておいた。
残念ながら、今の私に一杯奢れるほどの甲斐性はない。
「あーぁ。ベルンハルトさん、戻ってきてくんねぇかなぁ……」
クラインが泣き言をもらすが、この類いの愚痴は【ワンコの垂れ耳亭】に通う遠征騎士達が、割と頻繁に話す内容である。
そもそもこの国の騎士団は、【遠征騎士団】と【近衛騎士団】の二つに分かれる。
【遠征騎士団】は、地方での魔獣の大量発生等が確認させた時に現地に向かい、速やかに問題を解決する事を仕事とする部隊だ。
万が一、戦争が勃発した時に先陣を切るのも【遠征騎士団】で、クラインはここに属する。
そしてアンナマリアだった私も、【黒の武将】であるベルンハルトも【遠征騎士団】の所属――だった。
何を思ったか、ベルンハルトは先の大戦の後、【近衛騎士団】への異動を願い出たらしい。
【近衛騎士団】は、王族の護衛と王都の治安維持が主な仕事である。
決して【近衛騎士団】に所属するのが悪いとは言わない。
矛となって外敵を凪ぎ払うのが【遠征騎士団】なら、常に中央の安寧を守る盾が【近衛騎士団】なのだから。
しかしアンナマリアもベルンハルトも、神こそ違えど、非常に強い【恩寵】を授かっていた。
魔獣の群の討伐くらいなら単独でこなしていた人材を、【遠征騎士団】はどちらも同時期に失った事になる。
その皺寄せが、少しずつ他の遠征騎士達の仕事スケジュールに現れているらしい。
果たして、かつての戦友と上層部は何を考えているのか――。
答えなど出るはずもないので、クライン達にはもう暫く、人々の為に激務に励んでもらおうと思う。
【とある口コミ情報】
「あそこの定食屋の女の子。口調がすっごい勇ましいのに、椅子の背もたれの下の方持って、頑張って引いてくれるの!」
「料理持って来るときはメッチャ気ぃ付けてゆっくり運んでたのに、帰りはあっという間に消えて、次の瞬間には別の席に向かってまたゆっくり料理運んでやがんだ。何なんだあのチビッ子」
「こんなオヤジの長話に、嫌な顔せずに付き合ってくれるんだ。うちの娘なんて……」
アンナちゃん、神対応する




