偵察
駿河沿岸沿いを2人は進んでいた。
「もう…何処かで休まないか?」
と、疲れきった様子のお鈴に八兵衛は、
「まだ駿河に入ったばかりだぞ。」
「私はお前みたいに筋肉バカじゃないんだ!人の脚の事も考えろ!」
「分かったよ…ちょうどあそこに村があるからそこで休もう。」
と、お鈴は意気揚々と入っていった。が、村では不安に満ちてどんよりとしていた。
「何か、重たいなこの村は。」
「うむ。様子がおかしい。あの村人に聞いてみよう。」
と、八兵衛が向かう方には店前の椅子で疲れた様子で座り込んでいる老人がいた。
「そこの御老体。どうしてこの村はこんなに重たい雰囲気なんだ?」
「旅の者かね。この村の雰囲気がどうして重たいかって?そりゃ、この村の若者が今川の兵に行ってしまって労働力が足りんのだ。それにここは行軍の通り道になりそうだから殆どの人が逃げてしまった。」
「成る程…その今川の軍は今はどこにいるんだ?」
と、聞くと老人は更に奥にある山に向かって指を指した。
「ありがとう。」
と、八兵衛は言い残し、「走るの?」と言わんばかりの顔するお鈴を連れて指した山に向かって走った。
1日かけて一つか二つ程の山を越えると、平野を埋め尽くす今川の軍が見えた。
八兵衛達は慎重に木に登った。
「ヒャー。こりゃすげぇ。織田の兵を優に超えているぞ。」
と、驚く八兵衛の後ろに、
「お前は…何で…はぁ…そんなに疲れて…はぁ…ないの…」
と、幹にもたれかかるお鈴がいた。
「はっはっはっ。お前はやっぱり瞬間火力だけだな。」
と、笑う八兵衛をお鈴は睨んだ。
「そ、そう睨むな。早く仕事を終わらせて休むぞ。」
と、数を数えていると視界の端で、敵の大将今川 義元が弓を射ているのが見えた。
次の瞬間、ヒュッと音がすると、飛んで来た矢が八兵衛の顔をフッと掠めた。
「あっぶな!」
と、急いで木を降りた。
「あの距離を射てくるとは…流石『海道1の弓矢取り』だな!」
「お前の身体がでかい所為でバレたんだ!もっと休みたかったぞ!」
と、文句を言うお鈴と八兵衛は山を狼に負けない速さで駆け下りた。
気づくと、昨日来た村に着いた。
「撒いたみたいだし、ここで休むか。」
と、お鈴に聞くと、お鈴はガクンと頷いた。