アホども退治
1人の男が高く振り翳し、叫びながら走って来た。
八兵衛はその巨体とは似合わぬ刀をスッと避け、男の背中を蹴り飛ばした。
男は転がったが、「くそっ!」と言いながら立ち上がり、再び八兵衛に斬りかかった。
八兵衛は背中を向けており、男は貫けると確信したのかニヤっと笑った。
しかし、その確信は偽りだったと、分からせるように、八兵衛は身体を回し、裏拳打ちで殴り飛ばした。
殴られた男は八兵衛を怖がる様な表情をしながら地を這っていた。
残りの男達は八兵衛の強さを察したのか、仲間とアイコンタクトと送り、2人同時に走り出した。
しかし、連携も虚しく、簡単に遇らわれた。
「次。」
と、山賊達を煽ったが、怯えた様子で後退りし始めた。
「お、おい!」
と、リーダーらしき腕を掴んでいた男は、八兵衛を睨むと、短刀を抜き、八兵衛に向けて走り出した。
八兵衛はそれをヒョイと避け、背中をお鈴の方へ押した。
お鈴は面倒くさいといっている様な表情を浮かべながらも、よろけて来た男を殴り、蹴り飛ばした。
男が倒れたのと同時に歓喜の声が上がった。
他の山賊達も逃げようとしたが、町人達に捕まり、何処かへ連れていかれた。
八兵衛とお鈴が埃を払っている所に見物人の1人が声をかけて来た。
「よう!良い戦いっぷりじゃないか!わしの軍に雇われないか?」
と、陽気に小柄な男が話しかけて来た。
「えっと…貴方は?」
「わしは信長様を天下へと押しやる家臣の1人で、『サル』と呼ばれている木下藤吉郎って言う者だ。」
「信長様の…」
と、これほどない好機が来たと思い、
「私の名は松林 八兵衛と言う者です。是非とも。」
「そうかそうか!今少しばかり人手不足だったし、こんなに良い人材だから、嬉しいよ。」
「早速なんですが、貢献したいので仕事があれば…」
と、言われた藤吉郎は感心した様子で、
「その向上心嫌いではない!」
と、頷きながら話した。
「そうだなぁ…そうだ!最近、織田家と今川家で、睨み合っている。まぁ、小豆坂で衝突もしたが、そんで特に最近、今川に不穏な様子があるんだ。敵兵の人数でいいから掴んでもらいたい。君にとっては初めての仕事だが、織田にとっては重要な物になるかもしれない。頑張ってくれよ!」
と、八兵衛の肩をドンと叩いた。
「分かりました!必ず成功してみせます!」
と、言い、藤吉郎と別れると、
「まっ、暇だし着いて行くよ。」
と、フッと息を吐くお鈴と駿河に向けて走り始めた。