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走り書き
1
たとえば、江戸川乱歩の『人でなしの恋』。
ククラの魔導師には、あの男の気持ちが分かってしまうのである。
その上で、人でなしは女の方だ、などと思ってしまうのである。
2
中島敦の『山月記』を読むたびに、パンドジナモスの弟子は思う。
自分もきっと虎になるのだろうな、と。
平凡な自分を許せないのは、自分も同じだから、と。
3
セリヌンティウスのような友人が理想だった。
もしそういう友人がいたら、僕は死ななかったのに、とイホスの弟子は確信する。
そして、自分はいつか彼のような人になろう、と決心する。
4
昔読んだ本のことを思い出して、カタレフシの弟子は嘲笑した。
アンは何てお気楽で、幸せ者なのでしょう、と。
「壊してやりたいわ、跡形もなく」
5
アリスになった気分だ、なんて、エレオスの弟子は時々感じるのである。
世界は混沌とミルクとたっぷりのシュガーで出来ている。
そして、いつか必ず醒める夢である。