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苦し紛れに嘘をつくババァ

― 5 ―


「あんたこそ!人ん家に勝手に入ってきて誰なんだい!」

「俺は、ここの家の息子だ!」

「に、にひひっ…そ、そうですか。う、う、う、う、うん。こりゃ場が悪いやなぁ、本当に」

「久々に故郷に帰ってみれば誰も居ない。おい婆さん!この村に何がおきてるんだ!」


なんと!

両手にたんまり戦利品ならぬ盗品を抱えたババァを出迎えたのは、

戦士として各地を修行して、鍛え上げられたゴリラのような肉体を見せびらかす

数年ぶりに帰ってきた、この家の元住人だった。


(まずいねえ…このままじゃ火事場泥棒だってのがバレちまうよ)


とりあえずババァは、いざという時のために腰のつるぎをとろうとした。

だが、両手にズッシリと食い込む風呂敷包みを手放せなかった。


(なにやってんだいあたしの手は!そんなにゴールドを手放したくないのかい!うん?いや、良く考えればそうだねえ!手放したくないよねえ!やっぱ!)


ババァの心の中の葛藤は、3秒で終わった。

火事場泥棒ってバレてしまえば、死刑もありうる一食触発な状態なのに

なぜこんなに両手のゴールドが大事かって?

そりゃ、ババァの頭が理解しても、強欲な心が拒否するからさ。


そして、苦し紛れにババァがとった手段は…


「どうやらここの街の人は、西のダンジョンに住むモンスターに攫われてしまったみたいですワヨ」

「な、なんだってー!」


盗人猛々しいというか、なんというか。

ババァは、今考えた嘘をついた。しかも変に上品ぶった口調がまた憎たらしい。

もちろん西にダンジョンがあるなんてのも嘘だし、街の人がモンスターに攫われたってのも嘘だ。


「あたしも今から倒しに行くので、ちょっと調査をしていたんですのよオホホホホ!」

「そ、そうでしたか。俺はてっきり火事場泥棒かと…」


ババァは一瞬ヒヤッとしながらも、引きつった笑顔で笑い返した。

職業魔法使いを経て賢さがあがっていたババァは、

目の前のゴリラ戦士男のおつむの足りない馬鹿正直さにホッとしてた。


「じゃあ一緒に西のダンジョンに行きましょう!あなたも身なりからすれば相当の戦士なのでしょう!?」

「へ、へっ?何いってるんだい。あ、あたしはそこらに居る、か弱い老婆ですことよオホホホホ」

「いや、そんなことはない。そんな重たい鎧や兜をつけながら、そんなに多くの荷物をもてるんだ。只者ではない!」

「これは火事場の馬鹿力っていう」

「さあ、つべこべいってないで街の人を助けに行きましょう!さあ!」


ゴリラ戦士男は、頭が弱いせいか人の話もまともに聞けない馬鹿野郎だった。

しかも戦士になりたてのババァより、パワーが格段に上で、

丸太のような左右の腕が、グイグイとババァの体を引っ張ってゆく。

とりあえずババァは、気絶させたら儲けものと、

ゴリラ戦士男を後ろからぶん殴ってやろうかと思ったが、

ここは得意のズル賢さの高さを証明するために、男に言った。


「そ、そうだ。南のダンジョンにも、町の人が連れていかれたんですのよオホホホホ」

「な、なんですと!」

「こうしましょう!お前さんは西のダンジョンに向かって、あたしは南!これでモンスター達に背後を突かれることはない!さあさあ!そうと決まれば、お前さんもあたしも行った行った!」

「そ、そうですか。それじゃあ仕方ありませんね」


こうしてババァは、脳みそ筋肉ゴリラ男と別れて街を出て南に向かった。


「まったく、あんなゴリラ野郎と旅をしてたら、薬草がいくつあっても足りないよ!」


だが、街の南を進むババァは驚いた。


「こ、こりゃ…ダンジョンじゃないか!」


嘘から出たまこと。

ババァの前にあったのは、おどろおどろしい雰囲気をかもし出す、モンスターたちの根城、

岩に囲まれたダンジョンだった!


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