冒険しながら人家を物色するババァ
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戦士ババァの血と欲望の旅が始まって3日が過ぎた。
相変わらずババァの戦い方は暴力的で、覚えた回復魔法でさえMP消費するからって理由で、薬草で賄うほどだった。川を挟んだ橋を渡って敵のレベルもあがるってのに、ババァは貪欲にゴールドと経験地を稼いでいった。
「ガオォォー!」
「にひひっ、こりゃ強そうなモンスターだね!そうりゃ!」
襲い掛かる狼男の鋭い爪と牙を、はがねのつるぎで薙ぎ払っては斬り殺して毛皮を剥ぎ。
「ヒョッヒョーッ!」
「あん?戦士となったことで素の防御力が30を超え、防具も足した総防御力55を誇るあたしの鎧に傷をつけられると思っているのかい?このやろうが!」
鉄の手斧を振り回す獰猛なアックスマン達の攻撃は、欲望の虜となったババァに効くはずもなく。
「ファイアーボール!」
「痛つつ…!にひひっ…使い走りの魔法使いのくせにやってくれるじゃないかぁ…!戦利品落とさなかったら、あんたの一族皆殺しだからね!」
ダメージ7の火の魔法を使うマジシャン相手に、マジギレして、マジシャンの落とす宝箱アイテム『魔法使いの杖』(350ゴールド相当)を強要したりと、もうやりたい放題だった。
「にひひっ…ゴールドゴールド。たまらんね!この金貨を風呂にいれて、金貨の海でひと泳ぎしたい気分だよっ!」
今まで攻守ともに弱い(魔法を使わない場合)魔法使いとして鬱憤の溜まっていたババァは、攻守ともに優れる戦士になって、装備の充実と供に、とにかく半端ない強さで次の街まで駆け抜けた!
ヨネ レベル12
職業:戦士
HP:131 → 159
MP:42 → 42
装備:はがねのつるぎ
:はがねのよろい
:はがねのかぶと
所持品:やくそう×11 狼男の毛皮×105 手斧×79 魔法使いの杖×19
所持金:5190ゴールド
「ふう、やっと辿り着いたかい。すっかり薬草も減ってしまったし、アイテムを売って、また買占めるとするかね!」
だが、ババァのついた街は、なんだか閑散としていた。
武器屋防具屋は勿論、アイテムを売り買いする道具屋、アイテム預かり屋まで居ない始末。
立て札は何物かにぶち壊された跡があり、宿屋の看板もボロボロに引き裂かれている。
「なんだいこのシケた街は。モンスターにでも襲われたのかねぇ…それじゃあ」
しかし、さすがは第二次世界大戦中、フィリピンマニラ沖で片手で重機関銃を撃ちながら、片手で高射砲を操って、足でバナナの皮をむいていたババァである。そこはそこで普通の人が良識の中で思う「町人はどうなった?」とか、「何でこうなった?」とか不安めいたことは考えず、逞しくも欲望に満ちた目と足で、金のありそうな人家を探し、情報集めと称して勝手に人の家のタンスや貴重品を物色した。
「にひひひっ…これぞ選ばれし者の特権ってやつだねぇ。うひょー!こいつは1000ゴールドじゃないか!にひひっ…役得役得」
ババァは金から食料から子ども用の靴下まで、ありとあらゆる物品を盗みに盗んだ!
そこらの悪徳集団窃盗団でも、この金と欲望にまみれたババァの前じゃ、どいつも形無しだ。
こいつに罪悪感なんて言葉があるのか?一瞬考えたが、そんなものはこいつの辞書にはねえ。
ババァの両手に掴まれた、膨らんだ唐草模様の風呂敷包みを見れば、もう何も言えねえよ。
バタン!
「おい貴様!何をやってるんだ!」
だがその時、金品の物色に勤しむババァの後ろから、いかにも戦士風の鎧兜を来た男が現れた!