『大東エキスポ開催まで、あと200日』(平成31年10月)
10月の声を聞いた──。
阪神タイガースは夏を過ぎても優勝戦線に踏み止まり、大阪の秋の話題を独占していた。ペナントレースもいよいよ佳境に入り最後の大一番! 宿敵ジャイアンツになんと3連勝し、一気に優勝を決めた。
大阪中に六甲おろしが流れ、今年の『大阪城プール』は夏を過ぎてからもずっと延長して営業している。ファンのお目当ては、ここの名物、飛び込み台からの大阪城ダイブである。有料にも関わらず、連日すごい行列が続き、それでもファンを捌ききれず、もう10月だというのにまだナイター営業を続けている。一種の社会現象である。全国の阪神ファンが飛びこみ、大阪城は戎橋に代わって阪神タイガース優勝を祝う聖地に祭り上げられた。
一方、我が町『大東』はというと、まさにだんじり一色であった──。
太鼓と鉦のだんじり囃子の音が響き、何台ものだんじりが氏子たちに引かれて市内を練り歩いた。日頃はうだつの上がらない男たちも、だんじり装束、白い地下足袋に法被を羽織るだけでピシッと格好良くしまって見えてしまうから不思議だ。なかでも黒田は別格に写った。彼は住道地区の地車会長である。以前は仲間内に陰で『プリンス』と呼ばれ、嫉妬と軽侮の目で見られていた。親の七光りで、20代でだんじり保存会の青年団長にいきなり大抜擢されたのである。小さな仲間内の世界である。同世代から疎ましく思われて当然である。その黒田も50も半ばを過ぎると『キング』と呼ばれるようになり、一目置かれる存在となった。数年前に会長職にあった親父さんが亡くなると、今度は皆の推薦で会長に持ち上げられたのだ。
今は、だんじり巡行の休憩時間である。男達には缶ビール、引き手の子供達や取り巻きの女性達にはジュースが配られている。ちょうどその時、引き手の子供数人が、休憩中は地面に長く伸ばされて静かに置かれているだんじりの綱で遊び始めた。最初は重い綱を持ち上げ力自慢を競い合っていたが、そのうち体に巻き付けたり綱渡りをはじめた。それを見つけた黒田は、そばにいた若い衆に目配せすると、腕組みしたまま顎で指示を出した。
若い衆は綱から子供を強引に引き離し、恐い顔で説教をたれた。子供は怒られて泣き出したが、ほかの子供達も神妙な面持ちで聞いている。だんじりは単なるお祭りだけでない。氏神様に五穀豊穣への感謝を捧げ、礼節を重んじる神事でもあるのだ。そういう意味で、学校では決して教えてくれない、生きた情操教育の場でもあるのだ。
『大東市民の力で必ず成功させよう、大東エキスポ』
黒田の住道地区のだんじりにも、大東エキスポをPRする横断幕が取り付けられていた。横断幕は同級生の大西、林、イノさんの3人が奮闘努力した甲斐があって、大東中の全だんじりに取り付けられた。これだけでも大東市全域にPRするには効果十分であった。
だんじりの前には横断幕をバックに中年の男女十数名が揃って記念写真に納まっている。みんな背中にデイパックを背負っている。どこから見ても観光客である。この団体は実は大東エキスポ・プレイベントとして、ボランティア達が企画した『秋の大東・隅から隅まで、だんじり観覧ツアー』の一行なのである。
ツアーの参加費は無料だが、ご承知の通り『金はない! 大東エキスポ』である。お気持ちだけ寄付をいただければ幸いです、とだけ謳って参加条件にした。わざわざ大東のだんじり目当てにのこのこ出かけてくる物好きはいないだろう……とのんきに構えていたら、全くの想定外、市内外から多数の参加があった。
「さぁ、皆さん、時間ですよ! 次はJRで野崎地区へ移動します。途中、日本一短い銀座『住道銀座商店街』を抜けて行きま〜す」
ボランティアのおばちゃんツアーコンダクターが、三角ペナントを振って誘導した。
その夜、俺は大西と林と共にイノさんの店『ガボット』にいた。
今日はだんじり祭りの宵宮である。店内は各地区保存会の飲んべえたちに占拠されている。紫や紺、赤などいろいろな色のハッピ姿が店内を埋め、今夜だけはこの店も祭り一色である。店内の壁には、夕刊の記事が貼り出されている。
『大東のだんじり祭り開幕! エキスポに向けてボランティアも走る!』
産朝新聞夕刊に、早くも取りあげられた。『大東エキスポのプレイベント、だんじり観覧ツアー』の顛末記である。真田記者のレポートである。もっとも客の関心は記事より、記事中の写真にあった。その写真の主役は、なんと黒田である。黒田はだんじりをバックに、ツアー参加者のど真ん中で腕組みしてふんぞり返っている。ほかの地区の保存会の者たちにとって目障りでもあり、やっかみでもある。酒の肴と嘲笑の対象にずっとなっている。
「JK5人組、この娘らすごいわ! もう絶対完璧、誰もが認めるエキスポのスーパーキャンペーンガールやな。PR大使以上の働きしとる。こらぁ表彰状もんや」
イノさんがテレビのボリュームを上げた。土曜、深夜の人気番組、ABC朝日放送の『虎バン』オンエア中である。関西ローカルながら言わずとも知れた、阪神タイガースだけの応援番組である。今夜はいつもより放送時間を1時間延長して特番となっている。
番組はあの感動をもう一度。本日行われた巨人とのクライマックスシリーズ最終戦を振り返り、何度も勝利の美酒に酔おうという構成だ。画面には試合前、甲子園でのタイガース練習風景が写っている。そこへなぜかJK5人組がなだれ込んできた。俺たちがさらに驚いたのは、JK達がベンチ前で選手にパフォーマンスを始めたことだ。
「エイエイ、オー! 大東印の元気ビーム注入!」
JK5人がそれぞれ両手で輪っかを作って、元気ビームを西岡と藤浪に発信した。
「よっしゃ、甲子園の女神! そのパワーもろたぁ〜!」
西岡がカメラに向かって叫んだ。
「JK5人組が甲子園に来たら、タイガースは負け無し伝説! あとは、みんなで……」
タイガースのエースに成長した藤浪が、西岡に目配せした。
「必死のパッチやぁ〜!」
藤浪と西岡、それになんと、JKまで一緒になって声を揃えた。
「こら、やらせや! 俺は個人的にはこの乗り好きや! せやけど、やっぱやりすぎやな」
大西がポツリと言った。事実は小説より奇なり! このあとこの日の大一番、クライマックスシリーズ優勝決定戦の模様がドキュメント形式、録画ダイジェストで流された。
試合の行方は一進一退。阪神藤浪、巨人菅野先発。手に汗握る投手戦ではあったが、西岡と藤浪が大活躍! スイッチヒッターの西岡が左右の打席で2打席連続ホームランをかっ飛ばした。この2安打がタイガースのすべての安打であり、同時に貴重な得点となった。一方、投手の藤浪はというと、あと一人というところで完全試合を逃したものの奇跡に近い1安打完封。JKの元気ビーム注入を受けた2人の投打に渡る大活躍で2対0、タイガースがみごとにセリーグを制覇した。
「神様、仏様、観音様、JK様! ありがとう! 日本シリーズもよろしく!」
試合後のヒーローインタビューで、たぶんマスコミの受け狙いだと思うが、いつの間にかお立ち台のそばにいるJK5人組に向かって、西岡と藤浪が柏手を打って拝んだ。
「この娘ら、しっかりしとるなぁ。頭もええし、度胸もある。ひょっとして、自分らの力だけで大阪発の新アイドルになったろ、と密かに野望を抱いとるんとちゃうやろか?」
テレビの画面の中ではJK5人組が西岡と藤浪を真ん中にはさんで一緒に手を振っている。その姿を見て、イノさんはしきりに感心している。
「この娘らが最初に注目されたのは、夏の甲子園や。その決勝戦で頼みもせんのに『大東エキスポ』を全国に宣伝してくれた。JK5人組は、産朝の記者が勝手につけた名前やけど、いつの間にか名前が一人歩きし始めた……」
テレビの画面には、JK5人組のアップが広がった。
「『大大大阪都構想』で名もない一介の地方都市が消えてゆくかも……。という悲運も共感を呼んだのかもしれん」
イノさんは今夜はやけに力が入っている。熱弁に備えて、ビールをグビリと流し込んだ。
「どこまでやったかな? あっ、せやせや、大東の名前を全国に広めたろと、話題作りにPR大使を募ったところ、芸能界を中心にPR大使になりたいブームが起こった。せやけど誰しもがなれるわけやない。大東に縁があって、それになんちゅうても……」
「任命決定権は、俺や!」
俺は思わず立ち上がって叫んだ。
「AKB、大阪ではNMBなどご当地アイドルグループが幅を利かせとるけど、JK5人組はどこのプロダクションにも所属しとらん。持ち前の度胸と愛嬌、強い郷土愛を元に、のし上がろうとしている。そんじょそこらの地下アイドルとは、値打ちが違う!」
「♪腕と度胸じゃ負けないが……、♪若いって、素晴らしい……」
大西がヘタな懐メロ昭和歌謡を歌って茶化した。
「……と、まぁ、これは俺の勝手な妄想やけどな。JKは遊び感覚でアイドルごっこしとるだけかもしれん。それでも売出しにはご当地出身という肩書きがあった方がええやん。せやけど、大阪の『大東』と言うてもなぁ、たいがいの日本人はどこにあるかも知らん」
なんかようわからんけど、イノさんの妄想は妙に説得力がある。
「……ところがやな、市民が大東の灯を消すな、と立ち上がった! それが『大東エキスポ』や! これに前市長のお墨付きが付いたことで、大阪の鼻糞みたいな大東という街が一躍クローズアップされた。ちょうどイエスが十字架の処刑台かついで登ったあの丘、エルサレムのはずれにある、あの……、ゴンチャロフ? ちゃうなぁ……、ゴルゴンゾーラ? それもちゃうちゃう、あれ、あれ……」
「ゴルゴダの丘!」
俺の回答に、イノさんが思わず親指と人差し指で正解の丸サインを出した。
「それそれ、あー、すっきりした」
「しかしなんですなぁ。大東ごときがゴルゴダの丘にまで繋がりますかぁ」
林はこの妄想にますます興味津々である。
「そのうち消えて無くなってしまうかもしれん大東のイメージは、なんとなくイエスの“死”とオーバーラップするんやけど、同時にイエスは“復活”する! そのプロセスが『大東エキスポ』と重なるんや。そして、その伝道師ともいうべく存在が、JK5人組というわけや。大東から夏の甲子園でホップ、そこから阪神タイガースへステップ、さらに『大東エキスポ』で大きくジャンプ! こうして成功へのストーリーが完成する……」
「そうかぁ。JK5人組は、若干18歳にして、そんな大それた野望を持っとったんかぁ!」
大西は思わず天を仰いだ。
「俺は彼女らがどない考えてるのか、聞いた事もない。俺は彼女らの行動を傍目から見て、ひょとしたらひょっとするでぇ……と、独りで妄想して楽しませてもろてるだけや」
「せやけど、イノさんの言うてることもさもありなん! やなぁ……」
俺は、黒霧ロックのおかわりを催促した。
「JK、大東ファンキー・モンキー・ベイビー! イェーイ!」
突然、大西が奇声をあげた。ほかの客、お祭り衆も関係ないのに、その声に呼応して、
「イェーイ!」
「ヤッホー!」
「アッホー!」
みんな単なる酔っぱらいである。
「JK、バンザーイ!」
なぜか万歳三唱、わけのわからん乾杯まで始まった。
「せやけど、大阪のオナゴは賢い。『金はない! 大東エキスポ』の精神とはなんたるかをちゃんとわきまえとる。金は無いけど、気持は貧乏やない。勇気とやる気、それからちょっとした遊び心さえあれば、なんでもできるんや! ということを彼女らに教えられた」
イノさんは今さらながらJKに感心している。
『大東だんじり祭り』が終わって、想定外の大波が一気に押し寄せてきた。大阪の東、生駒山の麓にあるちっぽけなローカルシティが、一躍日本中の注目を集めだしたのだ。
まず、その第一波がJK5人組の日本シリーズ進出である。なんと、日本シリーズでの始球式が巡ってきたのである! しかも、天下分け目の天王山、日本シリーズ第7戦! やるかやられるか! 決戦の大一番である──!
タイガースは日本シリーズに弱く、このシリーズでもいきなり3連敗。今回もあかんかぁ〜! と、ファンの長〜いため息がもれた。だが、この年だけはいつものタイガースではなかった! タイガースは土壇場で踏ん張りそこから怒濤の3連勝。笑っても泣いてもプロ野球、この大一番で締め括り。最後の大勝負やぁ!
俺たち『大東エキスポ実行委員会』は跳び上がらんばかりに驚いた。
「ほんまでっか?」「なんかのまちがいちゃいまっか?」「雨の場合はどないなり……」
俺は何度も球団に確認を入れた。不敗神話が続く、JK5人組の験を担いだのだろうけど……。日本一がかかる最後の一戦である。苦しい時のJK頼み!? ホンマにホンマ!?
とはいうものの、もしもである! 最終戦でタイガースが敗れるようなことにでもなれば……!? なんといっても甲子園は、過激でコテコテの虎キチファンの巣窟である。その敗因の一因がJK5人組のせいで……と、想像するだけで、全身にさぶ疣が走った。
そんな日本中が注目する中、いよいよ世紀の大決戦、日本シリーズ第7戦を迎えた。
そして、遂にその時が来た!
場内アナの紹介により、JK5人組が登場した。リーダーは少しも臆すること無くマウンドに立った。あとの4人はマウンドを囲んで、守備のポーズを取っている。審判の合図に頷いた。リーダーはマウンド上でセットポジションに構えると、ゆったりと華麗に振りかぶった。彼女は、サウスポーだ。はて? その姿、誰かと被る?
俺は、ハッとした。昔、一世を風靡した、水島新司のアニメ「野球狂の詩」のヒロイン、水原勇気だ! リーダーが足を高く上げた。その勇姿に球場全体が完全に魅せられた。その姿は映画で勇気を演じたアイドル、木之内みどりを彷彿させた。今や水原勇気と化したリーダーが投じたアンダースローの球は、きれいな放物線を描いてホームベースへ!
「ストライ〜ク!」
キャッチャーのミットがピクリとも動かない。球審の声が場内にこだまするや、球場全体が大きくどよめいた。続いて万雷の拍手喝采が大きくいつまでも鳴りやまなかった。
マウンドを降りる直前JKたちは揃って、タイガースのベンチに向かって元気ビームを注入した。ベンチの前では選手がこぞって元気ビームを受けようとして、ちょっとした騒ぎになった。あくまでしゃれではあるが……。それにしても度胸満点の女子校生である!
で、気になる試合の行方は? まさに最後の大勝負にふさわしい詰まる展開である。白熱した投手戦で、どちらも譲らない。まさに手に汗、息詰まる白熱戦。両チームとも好プレーの連続で、勝負の流れはどちらに転んでもおかしくない。
だが、最後まで諦めなかったのは、タイガースの先発投手、藤浪の方だった。相手チームは7回以降小刻みな投手リレーで乗り切ろうとしたが、金本監督は最後までエース藤浪に託した。クライマックスでの巨人戦で見せた力投がまだ記憶に新しい。
延長10回裏、好機到来! 相手の失策もあって、2アウトだがランナー3塁、サヨナラのビッグチャンスである。
バッターは、藤浪! 金本監督はピクリとも動かない。定石でいくなら、ここは何が何でも絶対に代打の場面である。どうやら金本監督は藤浪と心中する覚悟。なんと藤浪をそのまま打席に立たせたのである。球場全体に、阪神ファンの大きなどよめきが渦めいた。
相手投手は、パリーグで7年連続最多救援賞を獲得しているクローザーである。いささかも動じる気配すらない。藤浪はクローザーを睨みつけ、バットを高く掲げて打つ気満々である。クローザーは、3塁ランナーを見た。ランナーはベースに釘付け、リードする気配すらない。それを見てピッチャーは大きく振りかぶった。
「ストライ〜ク!」
ファンすべてが固唾を飲んで見守る中、アンパイヤーの声だけが鋭く球場内に響き渡った。続いて第2球は、外角低めのストレート。
「ストライ〜ク!」
藤浪は強振するも空振り、2球でたちまち追い込まれた。それでもクローザーは警戒して、3球目はボール球で誘った。藤浪はバットを構えたままピクリとも動かない。
続いて第4球──。クローザーが大きく振りかぶって投げようとした一瞬、その目の隅にランナーがホームに突っ込んでくる姿がチラリと見えた。
藤浪はといえば何を思ったのか、瞬時にバントに構えを変えた!
だが、そこは百戦錬磨の守護神、クローザーである。ランナーが見えた瞬間、咄嗟の判断で手首を少し捻った。その投じた球は、とんでもないボールである。キャッチャーも捕獲するために慌てて立ち上がった。球はベースから大きくそれた糞ボールである。
万事休す!
スタンドから悲鳴がこだました! 誰がみてもスクイズ不可能。だが、次の瞬間──!
藤浪は決して諦めていなかった。藤浪には身長があった。ボールがキャッチャーミットに届く瞬間、藤浪は197センチの長身から腕をおもいっきり伸ばした。リーチの長さも大いなる武器になるのだ! 藤浪は糞ボール球を、バットの先にコツンと当てた。たぶん、まぐれ? そんな事はこの際どうでもよろしい! 引き、運の強さも実力のうちである。
ボールは、1塁線上に沿ってコロコロと転がった。藤浪はイチニで全力疾走! クローザーも負けじとマウンドから、鬼の形相で猛ダッシュしてきた。クローザーは素手でボールを掴むや、ホームは無理と判断し、姿勢を崩し倒れこみながらも素早くファーストに投げた!
しかし、この一連の動作には、やはり無理があった。タイミングとしては微妙であったが、投球体制が崩れた分だけボールがセカンドよりに球1個分ずれた。1塁守は懸命に手を伸ばし、ミットにボールを納めたが……!?
一瞬の静寂──! 判定は!?
「セーフ!」
ファースト塁審の両手が大きく左右に広げられた。
間一髪、必死のパッチで1塁を駆け抜けた藤浪の足が勝った。スタンドは絶叫から、大歓声に変わった。日本シリーズ史上初、サヨナラセーフティスクイズである。選手が一斉にベンチから飛び出し、金本監督が何度も宙を舞った。
甲子園球場では六甲おろしが何回もリピートを繰り返し、「バンザイ!」の声がいつまでも続いた……。もちろん、JKの不敗神話未だ崩れずである!
日本シリーズはとっくに終わったというのに、大阪はタイガース日本一の熱気未だ醒めやらず。もう11月半ばだというのに『大阪城プール』は未だに飛び込み台だけ開放 営業している。そんな最中、なんの前触れなく連絡が入った。名誉会長=前市長を筆頭に現市長と知事の3人が雁首揃えて表敬訪問に来るという。
『大東エキスポ』に向けて、資金集めに四苦八苦しているばかりで、今のところ本当になーんも話題のない大東である。その目的は何か? 俺たちはその真意を掴みかねた。
「おい、大川、どないしょう? メシぐらい食べて帰ってもらわなあかんよな!?」
黒田は会う前からもう恐縮、緊張、心配ばかりしている。
「おまへ、ほんま大丈夫か? こっちが来てくれと頼んだわけやない。来てみんと、その真意がなんかわからんやないけ。それより、JK5人組や! 吉村君、彼女ら、緊急召集!」
新旧3人の首長と顔を合わせるのは、記者発表以来である。
テレビニュースや新聞報道で目立つように、俺は会見ボードを看板屋に超特急で発注した。これは『金はない! 大東エキスポ』のキャッチコピーやタイトルロゴ、開催日時、スポンサー名が記載されたバッグボードである。それと並行して、令子やスタッフに電話をかけまくらせた。可能な限りボランティアスタッフを動員するのである。
次の朝早く、3人の首長を乗せた銀メタのワゴン車が大阪方面からやって来て、住道大橋を右折した。ワゴン車の後ろには報道関係者の車やバイクが何十台も続いている。ワゴン車は、通称『四つ角』と地元で呼ばれている住道本通り商店街の入口で止まった。
ビシッと黒いスーツで決めた黒田と、党所属の大東市会議員や府議会議員たちがワゴン車にさっと歩み寄った。スライドドアが開くと、まず現市長が、続いて知事、そして最後に前市長=名誉会長がすっと降り立った。
「ようこそ、大東へ!」
黒田は3人のもとへ歩み寄り、満面の笑みを浮かべて歓迎した。続いて黒田は3人を事務局へ案内しようとして、ちょっとたじろいだ。どこでどう嗅ぎ付けてきたのか、商店街がすごい事になっている。人、人、人、おばちゃん、オバハン、おバァ、オッサン……!
まるで、朝の通勤ラッシュの地下鉄御堂筋線!? いや年末の黒門市場と正月の今宮戎が一緒くたになった!? とにかく押すな、押すなの犇めき合い。とてもシャッター商店街化しているとは思えない状態だ。とにかく商店街開業以来、初のどえらい人混みである。
黒田は3人を先導して進もうとするが、一歩進むのもムチャクチャ難儀である。黒田配下のダブルキーパー達がSPとして周りを必死でガードしているが、なにせ野次馬根性丸出しの大阪のオバハン、オッサンの群である。皆、一歩進むごとに全身をもみくちゃにされている。
これにテレビ、新聞、雑誌の記者達がベストポジションを取ろうと小競り合いもあり、商店街はまさに騒然としている。さすがにどえらいことになってきた。もし、この野次馬達がひょんなきっかけで将棋倒しにでも合い、怪我人、さらには死人でも出ようものなら……!
時刻は午前9時を少し回った。喫茶店、美容室などオープンしている店舗がまだらで、なによりシャッター商店街化していることが幸いした。野次馬を溜めるスペースが幾分か余分に確保できたのである。
「押さないでください、危険です、通して下さい!」
「大東には金がないねん、名誉会長! なんとかしたってや! 頼んまっせ!」
「止まらないでください! コラァ、オバハン、まっすぐ歩け! しばくゾ! ボケ!」
歓声と怒号が飛び交う中、名誉会長ら3人はダブルキーパー達に抱えられるようにして、ようやくのこと事務局に到着した。その後を追っかけ記者達がどっとなだれ込んできた。事務局の前では屈強なダブルキーパー達が2重、3重に立ちはだかって、どさくさに紛れて入ろうとする野次馬を、一歩たりとも中に入れまいと踏ん張っている。
「名誉会長、今朝、大東市を来訪された目的は?」
記者席の一番前に陣取っていた真田記者が開口一番質問した。
「僕は『金はない! 大東エキスポ』の名誉会長を拝命してますからね。会期前に一度は、頑張っている皆さんを激励し、現在の進捗状況を把握しておくことも必要でしょ。それに市長も知事も、JK5人組にぜひいっぺん逢いたいと言うから、一緒にご同行を願いました」
「ところで『大東エキスポ!』開催予算確保の目処はついているのですか?」
別の記者から、事務局に対しちょっと嫌味な質問が上がった。
「目標予算に達成したら、『金はない! 大東エキスポ』なんて格好悪いこと言いませんよ。ちなみに現在、11月7日現在の協賛、寄付総額は6千……」
黒田が数字を並べて、まじめな顔で対応した。
「黒田委員長!」
「えっ! ……あっ、はい!」
「実は僕たちが大東を訪れた目的は、もうひとつあるんです」
「……?」
名誉会長の言葉に、俺たち実行委員会はもちろん居合わせた記者達も注目した。その時、名誉会長に促されて知事と現市長が1歩前に出た。
「これは大阪府に寄せられた募金です。府民が主役の新しい地方都市活性化プロジェクトに少しでもお役に立てればと、様々な府民が募金を寄せました。どうぞ、お納め下さい」
知事が、樹脂製の大きな募金箱を黒田に贈呈した。
「こちらは大阪市民からの募金です。大阪都構想の賛否を問う住民投票で大阪都が実現し、さらにそれに続く大大大阪都構想で、大東市が大阪都の仲間入りを歓迎するお役に立てれば……と、大阪市民自らが市民に呼びかけて集めた募金です。どうぞ、お受け取り下さい」
俺はJK5人組のリーダーの背中をそっと押した。リーダーが前に出て現市長から募金を受け取った。一斉にフラッシュが焚かれた。
前市長=名誉会長という男の行動はまったく予測不能である。大東を視察に訪れると不意打ち的に連絡があった時も驚いたが、府市の首長2人を引き連れた上に、まさか募金箱まで持参してくるとは……!
会見のあと、名誉会長ら3人揃って『大東エキスポ』を視察している絵が欲しいと、記者達から要望があった。視察会場は、住道駅前にある末広公園と決めた。事務局から歩いて1分である。しかし、問題は正面玄関に屯している野次馬たちである。いかに連中の視覚から消えるか?
そこで俺達は野次馬に見つからぬようカモフラージュとして記者だけをその場に残して、名誉会長らを裏口からそっと出した。俺達はJR学研都市線の高架沿いに歩いて移動しているのだが……。大阪のオバハンというのは、独特の嗅覚が効くらしい。
「ちょっと会長はーん! どこ行くのん! 待ってぇ! 皆、こっち、こっちでっせ!」
めざとく名誉会長を見つけたオバハンが、手招きしながら追いかけてきた。
「ほんま、油断も隙もない! 名誉会長、ちょっと小走りでお願いします」
俺たちは末広公園に入ると、最南端に作られた野外ステージへと一目散に走った。それを追いかけて、野次馬軍団が大移動してきた。まるでサバンナを大移動するヌーの群れである。少し間を開けて吉村君の案内で、事務局で待機していた記者たちも駆けつけて来た。改めてステージの上から見回すと、公園内の広場はいつの間にかものすごい人だかりである。広場は小学校の校庭くらいの広さだが、人、人、人、おばちゃん、オバハン、おバァ、オッサン……。今朝、名誉会長が到着した時より、圧倒的に人の数が増えている。
ボランティアが、拡声器のトラメガを担いで持ってきた。俺はトラメガを受け取り、黒田に1台、名誉会長と知事、現市長にそれぞれ1台ずつ渡した。
「名誉会長、ここが末広公園で、『大東エキスポ』の第一会場です」
「住道駅から徒歩0分、ロケーションとしてはバッチリですね」
名誉会長も、トラメガに向かってしゃべった。
「黒田実行委員長、この公園ではどんなパビリオンを……?」
「以前、この辺りに『住道平和座』という映画館がありましたが、映画界の衰退と駅前の再開発で消えてしまいました。『大東エキスポ』ではこの公園を利用して、『笑い転げて大東平和座』として再現します」
「じゃ、あれですね、大東と関わりのある芸人さんがぞくぞく登場するんですね!」
「ええ、まぁ、漫才や吉本新喜劇だけでなく、落語家さんにも開放します。野崎参りをテーマに旧作、創作落語の競演を上方落語協会にお願いしています」
「そりゃ、おもしろそうだ。夜には野外映画の夕べもあってもいいんじゃないですか? 昔この辺りにあったとかいうその映画館『住道平和座』の復活ですよ」
「名誉会長、ありがとうございます。その案、もろときます」
黒田は名誉会長に頭を下げた。黒田はベンチャラすることも忘れていない。
「あっ、そうだ、若者の夢も聞いてみよう。ちょうどJK5人組がいますからね。みなさんにとって、『大東エキスポ』に賭ける思いとはなんなんですかねぇ?」
俺は気転のきかない黒田の手からトラメガをぶん取り、JKのリーダーに渡した。
「『大東エキスポ』は、大東人を元気にして『大大大阪都構想』を盛り上げるお祭りでーす。うちらエキスポのキャッチフレーズ考えて来ました。今から発表しまーす!」
リーダーがほかの4人に目配せした。
「2020・SPRING・ユニバへ寄って、大スポへ行こう!」
5人組は手作りのキャッチコピーが書かれた横断幕を広げ、声を揃えて読み上げた。
「大スポ?」知事が聞き返した?
「大東エキスポを縮めて、『大スポ』で〜す」リーダーが毅然と言い放った。
「なるほど、『ユニバ』はユニバーサルスタジオジャパンの省略語。『ユニバ』と『大スポ』かぁ! こりゃ、おもしろい! このフレーズ、使えますよ。ねっ、大川広報」
俺も名前を呼ばれて、ビックリ、思わず返事を忘れて返事する代わりに、横着にも首を縦に振ってしまった。
「いやぁ、ホント、大阪の女子高校生の発想はおもしろいなぁ。JKに会えてよかった、良かった。そこで、僕たちからもJKの5人にお願いがあるんだけど、ね、現市長……」
「そうです。来月はいよいよ『大大大阪都構想』に向けての継続審議を延長するか否かを決める大阪府知事、大阪市長を選ぶダブル選です。まずはこの選挙に勝つことが必須ですが、その先には……! 真の大阪都実現に向けて動き出すためにも、JKさんたち18歳人口の元気な投票をこぞってお願いします」
「僕らにもタイガース日本一パワーの源となった、元気ビームを注入して欲しいなぁ……」
名誉会長は、まったく突拍子もないことを言うものである。
「OKでーす。みんなスタンバイ、オーケイ?」
JK5人組は名誉会長と知事、現市長と対峙するような恰好で、ステージ上で大きく広がった。
「大阪都が実現し、『大大大阪都構想』で大阪がスケールアップ! おまけに3人様の未来がますます輝き発展しますように! 大東印の元気ビーム……!」
「注入!」
JKの5人がそれぞれ両手で輪っかを作って声を揃え、3人に向けて発射した。名誉会長も知事、現市長も、オーバーアクションで両手いっぱいに広げて懸命に受け止めている。
「やっぱり本物は違うなぁ。なんか元気モリモリ、勇気百倍だなぁ。さて、今年もあと残すところ1ヶ月余り。JKに元気を注入してもらったから、僕らも一気に突っ走りますよ」
名誉会長はマッサージあとのように、肩と首を回してすっきりした表情を浮かべた。
「皆さんの熱いシティプロモーションの熱気が、僕達にもヒシヒシと伝わってきました。あとでJKが募金箱を持って会場を回りますから、皆さん、よろしくお願いしますね」
今度は名誉会長が、どういうわけか勝手に進行を仕切りだした。
「名誉会長、知事、現市長、今日はありがとうございました」
黒田が礼を述べ、一緒に俺達も頭を下げた。
「スタッフの皆さん、開幕までいよいよあと半年。必死のパッチで頑張ってくださいね」
名誉会長と知事、現市長が順に、俺たち一人ひとりと順にガッチリと握手を交わした。
「大東市民の皆さん、今度は『大東エキスポ』でお会いしましょう!」
名誉会長ら3人は、広場に向かって大きく手を振って別れを告げた。
ステージの裏はすぐ道路で、気を利かせた秘書が混乱を避けるためワゴン車を回していた。俺たちはワゴン車が角を回って見えなくなるまで手を振って見送った。
「あー、やれやれ、これにて一件落着や」
黒田はようやく緊張感から開放された。
「せやけど、VIPの3人にお茶の一杯も出さんかったな」
「ほんまや!」黒田は俺の言葉に、しまったという表情を浮かべた。
「ま、しゃあない。俺らとちごうて、あちこちからお呼びのかかる忙しい人らやさかいな。それより、喉乾いた。客が引いて落ち着いたら、一杯いこ!」
「……」黒田は俺の提案にうんとも言わない。
「打ち上げや! ひとつ大きな山を乗りこえてん。あの娘らに昼飯ぐらいごちそうしたってもええんとちゃうのん!」
広場ではJK5人組がおばちゃんたちの中に入って、熱心に募金をお願いしている。
その日の夕方各局テレビのニュースで、名誉会長ら3人の大東来訪の模様が報道された。 なかでも『大スポ』こと『大阪スポーツ』は、JKが発したキャッチコピー「ユニバへ寄って、大スポへ行こう!」がよほど気に入ったのか、一面ぶち抜きで報じた。
紙面見出しには「大スポ読んで、大スポへ行こう!」の文字が踊っている。記事は『金はない! 大東エキスポ』を大スポファン一丸となって、『大東の大スポ』を応援するキャラバンを実施することにしたと綴られている。内容は、毎週競馬開催日に1万円の資金で記者が競馬のメインレースを予想する。見事勝ち馬を的中させた時には、その獲得賞金全額を『大東の大スポ』に寄付するキャラバンを、『大東の大スポ』開幕日まで毎週続けるという。
新聞社の勝手なコラボレーションであるが、宣伝して金もくれるというのだからありがたい。記者が高額配当の3連単を的中させてくれる事を祈ろう!
さらに、予想だにしなかったことが起こった。『ユニバ』ことユニバーサルスタジオジャパン宣伝部から問い合わせがきた。来年の春『ユニバ』に新アトラクションが登場する。ちょうど大東エキスポの開催時期と重なることから、コラボでダブルPRしませんか、と『ユニバ』から提案があった。
『2020・SPRING・ユニバへ寄って、大スポへ行こう!』
このキャッチコピーは、どう考えても『ユニバ』へのメッセージである。さらに開けてびっくり玉手箱みたいな事が現実に起こった。JK5人組の起用が決まった。キャンペーンポスターに新アトラクションではしゃぐJKの姿がでかでかと写り、一足早く全国の駅や空港、旅行代理店に貼られた。
これによりJK5人組はグループ名を『DAITO・JK5(ファイブ)』と改名した。JKたちの行動は確実に結果に結びついている。今や大東が生んだ新しいアイドルとして、着実にメジャーへの階段を登りはじめた。
そして、びっくり仰天のおまけがもうひとつ──。
『金はない! 大東エキスポ』──。
初の記者会見で名誉会長が声高に叫んで以来、キャッチフレーズとも人を食った戯言とも取れるこの言葉が一気にブレークした。これに呼応して芸人、スポーツ選手など大東エキスポのPR大使に任命された有名人たちが『金はない! 大東エキスポ』と声高に連呼し始めたから、あっという間に全国津々浦に浸透し流行語になってしまった。
それこそがまったくの予想外、なんとこの年の暮れに発表されるユーキャン主催の流行語大賞を掻っ払ってしまったのだ。ドケチで厚かましい大阪を象徴する流行語だと揶揄する批評も見受けられたが、受賞の理由は概ね以下の通り好評であった。
「大阪人特有の自虐、無頼を感じるが、権威に媚びへつらわず、明るくユーモラスな笑いに変えてしまうところがいい。タダでは転ばぬ大阪人独特のあくの強さ、屈託のなさが読み取れる。
普通『金はない!』など卑下する事ばかり言ってると、誰にも相手にされなくなるのに、大阪では逆である。金が無いことを逆手にPR、売り込みと笑いに変え、既成概念にとらわれずやる気があればなんでもできるということを、庶民自らが証明してみせた。
長い間日本人が忘れていた、チャレンジ精神の大いなる発揚である。行政に頼らず、庶民自らがそれもひとつの地方都市をまるごと巻き込んで大それたことをやろうとしている! 誠に痛快である! 市井の人々が元気を与えてくれた。金が無くったって……!」
聞いているこちらの方が尻の穴がこそばゆくなる、よくわからないコメントである。が、とにかく俺たちは文化人たちのハートを刺激し、評価されたのだ。大いに胸を張ろう!
流行語大賞授賞以来、善意ある全国の人々から多数の寄付が集まった。これに、新聞社やテレビ局に寄せられた募金なども加わり、年末には念願の目標金額1億円を突破した。
この『大東エキスポ』のおかげで拍車がかかったのかもしれないが、この冬、大阪府知事、市長を選ぶダブル選で、現市長、知事ともまたまたぶっち切りで再選された。これにより『大大大阪都構想』を問う論争が、俄然囂しくなってきたことも併記しておこう。
『大東エキスポ開催まで、あと60日』(平成32年3月)
年が開けてあっという間に2ヶ月が過ぎた。会期がせまるにつれ大東のためになにかしたいというムードが、市民の間で一気に盛り上がった。事務局に『大東エキスポ』のイベントに参加出展することは可能か? という前向きな問い合わせが相次いだ。
衆知のように『金は無い! 大東エキスポ』である。事務局では参加条件として参加料は無料、但しギャラ、経費も一切出ない。とはいえエキスポと銘打っている以上、大東の人間が考えることはおもろい! と誰もが納得するイベントでないと受付けられないと条件を出した。事務局が採用したイベントプランは以下の通りである。
日本一に何度も輝いている大阪桐蔭高校吹奏楽部OBからは、『1千人の大東オーケストラ』。現役吹奏楽部とOBが合体して、なんと演奏者千人の大吹奏楽コンサートを実施する。『大東ミュージックフレンド』の会場、深北緑地のオープニングでお願いしよう。
住道中学校OB会の主婦達からは、大東の農産物を使った『地産地消・大東EXPOバル』の提案があった。内容は大東の農家が作るトマトやきゅうりなどを使った料理を、おしゃれな立ち飲み西洋居酒屋スタイルで提供するというものである。しかも、このバルのメイン会場は『住道本通り商店街』である。ここが俺たち実行委員会のハートをぐっと捕まえた。『大東エキスポ』は、街をまるごと使った博覧会である。
なのに、本末転倒、灯台下暗し! である。
忙しさにかまけて、事務局の目の前にある格好の存在を忘れていた。シャッター商店街と化してはいるが、駅近の好立地でアーケードという屋根もある。ここを商店街としてではなく、巨大なイベント会場として活用すれば、天候を気にすることなく利用できるのだ。
発想の転換である! まさに俺たち実行委員会の盲点を突かれた。市民が市民のために考えたおもろい企画である。商店街というパビリオンがあるから建設費はいらない。地域の食材を使い、空きスペースの多い商店街の有効活用にもなって地域振興にもなる。夜も『バル』を開けてもらおう。夜は趣向を変えてぐっと大人の雰囲気、ビールやワインも提供するオシャレなストリートカフェにしよう。フラメンコやシャンソンの生演奏もあっても良いだろう。もちろん地元の親父バンドの出演も……。