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続・ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第8章 アメリカの生活
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第1話 いざアメリカ!

 なんの問題もなく、夏休みは終わった。一臣さんも私も、白岡さん事件をすっかり忘れていたが、会社に行くと、

「一臣様、実は…」

と、細川女史が朝一で私たちに教えてくれた。


「一臣様と弥生様が休暇を取っている間、数回、白岡さんがこのビルの周りをうろついていたという報告がありまして」

「え?」

 私はびっくりしてしまったが、意外と一臣さんは冷静でいる。


「そうか。それは良かった」

「何がいいんですか?」

 その言葉に私はもっと驚いた。

「軽井沢に休暇で行っていたことは、ばれていなかったってことだろ?」

「あ、そうか」


「もう侍部隊が動いているんだろ?」

「はい。3日前、とうとう白岡さんをつかまえまして、何の用事があるのか問い詰めたようです」

「で、どうなったんだ?」

「一臣様にお詫びがしたかったと言ってたそうですよ」

「それでどんな処置をしたんだ?」


「そんな必要は無い。もう二度とこのビルにも近づくな。今度近づいたら、ストーカー容疑で警察に連絡すると脅したら、さすがに顔を青くして、もう近づきませんと帰っていったようです」

「ふん。そうか」

「彼女を忍者部隊が尾行したそうですが、どうやら友人の家に泊まっていたようなんです」

「友人?」

「しばらく、どんな動きをするか見張っていたんですが、どうやら昨日、大きな荷物を持って、田舎に帰ったようですよ」


「田舎か。どこだ?」

「栃木です。実家にも他の忍者部隊が待機していたんですが、白岡さんが戻ってきたと報告がありました」

 そんなに、いろんなところで見張っていたんだ。大変だ。


「じゃあ、一安心ってところか?」

「はい。本当にストーカーのようでしたしね。調べましたら彼女、前にもそんなことをしたことがあったらしく」

「ストーカーか?」

「まあ、前はアイドルのおっかけですね。高校生の頃、バイトしてためたお金で、アイドルを追っかけて、同じホテルに泊まったり、新幹線も同じ車両の席を取ったりと、執念ですねえ。で、そのアイドルの事務所の人から注意を受けたりしていたようですよ」


「怖いなあ。なんか、思い込んで、現実と妄想がごっちゃになるんだな。あ、弥生もそうだったか」

「私ですか?!」

「お前は良かったな。俺のストーカーの時、通報されていたら危なかったな」

「わ、私は、ストーカーじゃなくってですね、影からそっと見ていたフィアンセです」

「立派なストーカーだぞ。ほんと、あの頃からちゃんと名乗り出てくれたらよかったのに」


「で、でも、私ビン底メガネで、見た目怖かったですよ」

「そうだな。だけど、メガネとって素のお前を見たら、俺が惚れていたかもしれないだろ?」

「えええ~~?あのときの私にですか?」

「ああ。ありえる。十分にありえる。普通に婚約者だって、親父がお前に早くから会わせてくれたら、案外俺は、受け入れていたかもしれない」


 そうかな~~。気持ち悪がっていたんじゃないの?こんなやつと?冗談じゃない!って怒っていたと思うけどな。


「だって、お前、素のままが一番可愛いからな。そうだ。すぐに俺が佑さんのところに連れて行って、髪を切って化粧させてた。あんな久世の野郎について行って、変身させられなくたって、俺がそれをしていた!」

「……」

 そ、そんなに熱く語らないでも…。ほら、樋口さんも呆れてる。細川女子は笑っているけど。


 ん?今、何気にすごいこと言わなかった?お前、素のままが一番可愛いとかなんとか。


 どひぇ~~~~~!!!何言ってるの?!


「は~~~~あ、大学4年間、同じところにいたっていうのに。一緒に大学生活満喫できたかもしれないのに。そうしたら、あんなことやこんなことして楽しめたのに」

 あんなことや、こんなことって何!?


 一臣さんはため息をつきながら、自分の部屋に入った。私はその後ろから顔を赤くしながら続いた。樋口さんまでが、後ろでくすくすと笑っていた。


「もう、一臣さん、恥ずかしいこと言わないでください。樋口さんまで笑っていました」

「なんだよ、いいだろ?で、なんでそんな話になったんだっけ?ああ、白岡か」

 一臣さんは手にしていた上着をバサッとソファに置くと、

「まあ、一件落着だな」

と、自分もソファにドサッと座った。


「弥生、お茶を淹れてくれ。渋いやつだ。これから役員会議だからな」

「はい」

「壱のやつ、託児所連れて行っても大丈夫だったな。1週間あいても、覚えているもんだな」

「そうですね。私のこともおかまいなしで、一目散におもちゃにハイハイしていきました」

「そうか」


 私が託児所に連れて行ったんだけど、心配になって一臣さんも託児所の前で様子を伺っていたんだよね。顔は出さなかったようだ。白岡さんの変わりに入った保育士さんが一臣さんに惚れちゃっても困るしね。


 ただし、今回はベテランさんを雇ったらしい。すでに38歳。保育士を長年していて、本人にも中学生のお子さんがいる。それに、旦那さんが侍部隊にいるそうだから、かなり信頼できる人らしい。

 白岡さんがなぜ入れたのかが、逆に不思議だそうだ。誰の紹介だったのかな。その辺も侍部隊で調べているらしいけど。


 ほんと、緒方財閥では、疑って疑って、徹底して調べ上げるんだなあ。


 

 とりあえず、一難去った。だが、私にはこれから大きな試練が待っているのだ。

 そう。アメリカ進出だ!

 言葉は通じないどころか、ダンスパーティだの、社交界デビューだの、私できるのかな。自信まったくないよ。


 ただただ、堂々としてろって一臣さんが言うけれど、どうしたらいいの?


 そんなパーティはお手のもののお義母様に、休みの日に聞いてみた。

「堂々とにっこりと笑っていたらいいんですよ」

「は?」

「へこへこしたり、挙動不審になっていたら、この子大丈夫なの?ってみんなに馬鹿にされます。言葉が通じなくたって、堂々としてにっこりと微笑み、なんだったら日本語で押し通すくらいにしていたら、この子、大物だわって、みんなが弥生さんを尊敬のまなざしで見てきますよ」


「無理です」

 即答してしまった。

「無理とは?」

「自信が…ないです」

「まあ、なんでも来いっ!ってパワフルな弥生さんらしくない」


 どんなイメージもたれてるの?

「あなたらしくしていなさい。あなたの良さをわかれば、みんなあなたを好きになります。自信を持ちなさい。私ですら懐柔できたんですよ?」

 懐柔した覚えはないです…。


「ふふふふ」

 え?なんで笑ったの?お義母様。

「楽しみねえ。アメリカでの弥生さん」

 わあ。楽しみにしたりしないで!お義母様、前と本当に変わられたよ~~~~。


「大丈夫ですよ。あの一臣がついているんですよ?それから、私も弥生さんのそばから離れないようにします。まあ、一番頼りにならないのは、社長ね。社長のことは頼っちゃ駄目。あの人、ほんと、どっか抜けてるから」

「はい?お義父様のことですよね?」

「そうよ。あ、龍二も京子さんも行きますから、あの2人も頼りになるわね」


 そうか。京子さんは、心配しないでも、しっかりしていそうだもんなあ。あ、あれ?すんごく嬉しいことを言ってくれたような。そうだ。そばにいてくれるって…!


「お義母様!ありがとうございます」

「はい?」

「私、嬉しいです。そばにいてくれるって…。でも、私、甘えてばかりいていいのでしょうか?」

「大丈夫。そのうちに慣れてきます。私だって最初から、堂々とできたわけじゃないですからね。緊張もしていました。社長はあんなだし、周り頼れる人なんていなかったし。弥生さんは頼もしい頼りになる人がたくさんいるじゃないですか」


「そうですよね。一臣さんだって頼りになるし」

「向こうでは、秘書にアマンダがつくようですよ」

「アマンダさん?わあ、すごく頼りになります!」

「ふふふ。あなた、アマンダとも仲良くなったのねえ」

 また笑われた。でも、優しい微笑みだった。


 本当にお義母様は優しくなった。きっと、こっちのお義母様が本当なんだ。壱弥にもすんごい優しい。それに、テニスコートやプールを従業員が休みの日に使っていても何も文句を言わないし、たまにプレイルームに一臣さんが壱弥を連れて行っても、何も言わない。


 前なら文句の一つも言っていたかもしれないのになあ。

 メイドやコックにも優しくなったらしい。だから、屋敷内は本当に和やかムード。私が来た頃とはまったく変わった。


 

 そんなこんなで、あっという間に、アメリカに行く日がやってきた。とうとうやってきちゃったよ!

 スーツケースに私や一臣さん、壱弥の衣類やら、オムツやら、おもちゃまで詰め込んだ。アメリカサイズのオムツが合うかもわからないしね。


 朝、リムジンに乗り込み、いざ空港へ。

 そして、いつものごとく、ファーストクラスかと思いきや、ん?

「飛行機をチャーターした」

「え?なんですと!?」

 ファーストクラスだけでも驚きだったのに、チャーターって何?


「そろそろ緒方財閥の自家用ジェット買ってもいいと思うんだがな。毎回チャーターよりはいいだろ」

「いえいえいえ。と、とんでもないですよ~~」

「ファーストクラス全席取るっていうことも考えたんだが」

「はいい?」


「こんなやんちゃなやつが乗るんだ。迷惑かけるだろ?ファーストクラスに乗るやつなんて、赤ちゃん嫌いが多いんだぞ」

「それは勝手な思い込みかと」

「俺だったら嫌だ。せっかく、ファーストクラスでのんびりと空の旅をしようとしている中、赤ん坊の泣き声が聞こえたり、その辺ハイハイされたら冗談じゃない。それに、それだけのためにCAの仕事を増やさせるのも嫌だろ。CAも迷惑だろうしな」


「た、確かに」

「だからって、ビジネスやエコノミーはかんべんだし。だったら、赤ん坊の面倒を見れるベビーシッターも乗せ、樋口も乗せ、みんなも一緒に行けるよう飛行機をチャーターした」

 緒方財閥恐るべし!


 だから、モアナさんやら、日野さんまでが来たんだ。日野さんは英語も話せるようだし。それに、細川女史、樋口さんもいる。黒影さん、伊賀野さん、日陰さんもいる。いつもは姿現さないのに今日はいる。ってそれもそうか。飛行機内で隠れていても仕方ないしね。


 知らない侍部隊の人も3人。いかつい男性だ。忍者部隊らしき女性がもう一人と影が薄そうな男性ももう一人いる。そして、京子さんと龍二さんも一緒だ。


「すごいですわね。飛行機をチャーターしちゃうなんて」

 さすがに京子さんもびっくりしている。

「壱がいるんだから、しょうがないだろ」

「お義父様とお義母様は来なかったんですね」

 京子さんがそう聞いてきたから、

「明後日ファーストクラスで来るそうです。まだ、お2人とも日本で仕事があるらしくて」

と私が答えた。


「お忙しいんですね」

「おふくろは仕事じゃない。今日は歌舞伎を見に行っているし、明日はクラシックコンサートだ。親父は仕事だけどな」

「……」

 知らなかった。仕事だって言っていたけどなあ。


「ま、一緒に行く奥様連中が、取引先の社長の奥様だから、仕事っていえば仕事かもな」

 なるほど。お義母様はそうやって、取引先の奥様方と仲良くして、縁を取り持っているんだもんね。それは立派な仕事のうちだよ!


 さあ、機内でぐずっても、ハイハイしても(いや、危ないから駄目でしょ。させないよ)大丈夫だ。飛行機がいよいよ離陸して、アメリカに行く時間となった。


 いざ、アメリカへ!出発だ~~~~!!!



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