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続・ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第5章 親子3人の新生活!
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第2話 寮に引越し

 いよいよ、寮に引っ越す日になった。


 すでに亜美ちゃんと清瀬君は寮に住んでいて、私たちが引っ越す手伝いもしてくれた。とはいえ、家具はもう用意してあるし、一臣さんと私が着る当面の衣類、壱弥の衣類、オムツなどなど、持ち運ぶものは少ない。


 食器類、食品なども、高級なものを使うのは抵抗があるので安めのものを揃えた。

 お弁当も作りたいから、お弁当箱も買った。


 コタツはすでに和室にあるし、引っ越すって言っても、本当にわずかな生活用品を持ってくるくらい。


 亜美ちゃん、清瀬君、喜多見さんや日野さん、トモちゃんが手伝ってくれて、壱弥はモアナさんがずっとお守りをしてくれ、簡単に午前中に引越しが済んだ。


 一臣さんは最後に部屋から、仕事道具や本を持ち出し、

「あ、パソコン忘れた」

と、電話で樋口さんを呼んだ。そういうのは結局すべて樋口さんに任せちゃうんだなあ。樋口さんも、休日なのに。でも、樋口さんはお手伝いできるのが嬉しいらしく、他にお手伝いはないですかと聞いていた。


「ない」

と一臣さんが言うと、寂しそうに自分の寮に戻っていった。ちょっと可哀そう。


 国分寺さんは、ワイン倉庫から一臣さん好みのワインを持ってきていた。コック長は高級なチーズ、炭酸水、水などを持ってきて、

「他に必要な食品などありますか?」

と私に聞いてきた。


「十分です。今日明日の食事の分は、買ってきました」

「え?弥生様がご自身で?言ってくだされば、キッチンにある食材を持ってきました」

「コック長、それだとあんまり意味がないので、ほんと、いいんです。買い物も自分でします」

「そうですか…」


 あ、がっかりしてる。でもなあ。そこまでお願いしたら寮で生活する意味なくなるし。

 とはいえ、買い物も一人では出られないの。結局お休みの日なのに等々力さんが車を出してくれて、一緒に黒影さんまでがついて来てくれた。

 ガードがいなかったら、買い物には行かせないって、一臣さんに言われているしなあ。


 それは仕方がないとしても、今度は一臣さんと壱弥も連れてスーパーマーケットに行くんだ!


「今日から、いよいよ、親子水入らずの新生活がスタートですね!」

 みんながいなくなってから、私は一臣さんに意気揚々とそう告げた。

「そうだな」

 あれれ?私とはテンションが全然違う。


「一臣さん、元気ないですね」

「当たり前だ。風呂は小さいし、ベッドも小さい。風呂なんて弥生と入れないじゃないか」

「壱君とだったら、十分です」

「ベッドは?エッチできるのか?」

「そ、それは」


 5帖の洋室の仕切りを取り、10帖の洋室にしてセミダブルのベッドとベビーベッドを置いた。それだけでいっぱいになり、基本寛ぐのは和室。コタツと座布団が置いてある。


「セミダブルです。十分なはずです」

 一臣さんの部屋、確かにベッド大きいけど、いいじゃない、このくらいでも十分だよ。


「テレビも小さい」

 だって、6帖の和室なんだもん。でかいテレビなんて置けないよ。

「ダイニングのテーブルも4人掛けか」

「私と一臣さんとで座るんです。十分です。壱君はベビーラックがあるし、まだベビーチェアにだって座れないし」


「う~~~~ん。庶民は大変だな」

 今の言動、一般ピーポーが聞いたら、後ろから張り倒したくなるかも。

 だって、亜美ちゃんと清瀬君なんてすっごく喜んでたよ。二人で住むには広すぎるって言ってたもん。


 洋室には小さめだけど、一臣さんの仕事スペースもあって、パソコンを置いてある。


「…。弥生、ウォークインクローゼットというものは、庶民にはないものなのか」

「アパートにはあんまりないかもしれないです」

「ほ~~。じゃ、どこで着替える?着替えはどこに置く?」

「クローゼットならあります。洋室にほら!一臣さんの当面のスーツ、ここに掛けてあります」

 そう言いながらクローゼットを開けて見せた。


「え?これがクローゼットなのか!」

 これがクローゼットでしょ。じゃなかったら、なんだっていうの。

「あれ?弥生の服は?」

「和室の押入れの中です」


 一臣さんは押入れを開けた。

「あ、なんだか、なんでも入っているな」

 壱弥のオムツ、壱弥の衣類、私の衣類から鞄などなど、押入れに入っている。

「ゲ!なんで、掃除機までここにあるんだ」


「え?それは、自分たちで掃除するからです」

「喜多見さんが掃除機もって来てやるんじゃないのか」

「それじゃあ、寮で生活する意味なくなるじゃないですか!」

「……」

 今、すんごい嫌そうな顔をした。絶対に一臣さん、寮で暮らしたくないんだ。


「ここ、1階に共同スペースの休憩室あるじゃないですか。子どもも遊べそうな感じの日当たりがいい部屋」

「ああ、自動販売機やらあったな。子どもが遊べるスペースやちょっとした遊具もある」

「いいですよね!その横にベンチとかあって、誰が考えたんですか?」

「国分寺さんや喜多見さんに任せた」


「そこで、たまに壱君を遊ばせよう!みんなも来るかな。わくわくする」

「は?あの休憩室に行くのか?」

「もちろんです」

「みんなは、寮第一号の休憩室に行くんじゃないのか?」


「あ!そうか!こっちの寮って、今、私たちと亜美ちゃん夫婦だけですもんね」

「来週、もう一組来るけどな」

 そうだった。2階の1号室が私たちで、亜美ちゃんたちは1階の5号室。


 1回には5部屋と、東側に休憩室がある。2階は6部屋。私たちはちょうど休憩室の真上の部屋だ。

 新しく入るメイドさんとコックさん夫婦は、亜美ちゃんたちの真上、2階の6号室に越してくる。


「なんか、寂しいですよね。みんな端っこ」

「いいだろ。騒がしくしても聞こえなくてすむ」

「ですけど…」

「もう一組、来月入る予定だ。子どもが二人いて、寮には住めないからと出て行ったコックだ。1階の3号室に入ると言っていたし、ますます賑やかになるだろ。子どもも増えるしな」


「じゃあ、どんどん賑やかになりますね!子どもがいれば、ここの休憩室の使うだろうし」

「……俺は行かないぞ」

「え?」

「俺が行かないほうが、寛げるだろ」

 あ、そうか。みんなのほうが萎縮しちゃうかな。


「いいんです!ここで、一臣さんと壱君と3人で暮らせるだけでも、十分です!」

 引越しはお昼前に済んでしまった。早速、引越しと言えばこれ!引越しそばをまずは、105の亜美ちゃん夫婦に挨拶がてら持っていった。


「え~~~!私たち、何も用意していないです。すみません」

「いいんです。だって、引越ししてきた人が渡すものじゃないですか!これからも、よろしくお願いします」

 ぺこりとお辞儀をすると、亜美ちゃんもぺこりとお辞儀をした。


「で、ご主人は?」

 私が聞くと亜美ちゃんは真っ赤になり、

「仕事に行ってます。私も午後から仕事に戻ります」

と、恥ずかしそうに言った。ご主人って言葉がまだ、恥ずかしいのか。初々しいなあ。


「ただ、弥生様たちがダイニングで食事をされないので、コックのお仕事は当分ないんですよ。奥様が帰って来る時くらいで」

 あ、そうか!


「でも、この機会にコック長が、見習いコックたちの腕を磨くため、訓練させるって言ってました」

「なるほど」

「私たちは分担で、お屋敷の掃除とかしますから、仕事はあるんですけど」

「亜美ちゃん?」

 なんか、暗くなってる。


「トモちゃんが、寂しがってるんです。部屋に一人になったから。モアナさんが移るって言ってましたけど、弥生様のお世話をするのもできないし、壱弥様も会えなくなるし、一臣様の顔も見れなくなるし、落ち込んじゃって」

「え?」

「あ!ほら、一臣様、前よりずうっと優しくなられて、メイドたちの目の保養…、あ、ごめんなさい。こんな言い方!」


「いえ、それはいいんですけど。私も目の保養いつもしているし。トモちゃん、寂しいんですね。時々、私の部屋に遊びに来たり、休憩室で壱君の遊び相手になってくれると嬉しいって、伝えてください」

「わかりました」

「それじゃ、お昼、これからだから、部屋に戻ります」


 そうして、2階に上がり、1号室に入った。わくわく、るんるんしながら。

 だって、一臣さんにお昼を作ってあげるの!おそばだけど。それだけでも、嬉しい!


「遅い!腹減ったぞ、弥生」

 ひょえ。怒られた。昔を思い出すなあ。出会った頃。

「ごめんなさい、すぐに作ります」

 って、もしや、亭主関白?


「まったく~~。俺と壱を残して、ママはどこに行ってたんでしょうね」

 え?

「壱、高い高いしてやろうか?それともなんで遊ぶ?絵本見るか?」

 膝に抱っこをして、一臣さんが壱弥に絵本を読んであげてる!


「タ~~タ!」

 あ、壱、すんごい嬉しそう。新しい環境でもまったく大丈夫みたい。

 畳の上に胡坐かいて壱弥をその上に乗せて絵本を読んでいる一臣さん、なんだか、新鮮!


 るんるんしながら、お昼ごはんを作った。おそばだけでなく、天ぷらも揚げて、

「できあがりました~~」

とダイニングから呼んだ。


「ああ、待ちくたびれたぞ」

 ダイニングテーブルの横のベビーラックに壱弥を座らせ、一臣さんもテーブルについた。

「いただきます」

 二人で手を合わせ、同時に食べだした。


「うまい。この天ぷら」

「わあい」

「わあい?ははは。そんなに喜ぶと褒め甲斐があるな」

 そう言って、一臣さんは本当に美味しそうに食べてくれた。


「こっちこそ、うまいって言ってくれると作り甲斐があります」

「そうか?じゃあ、いつでも褒めないとな」

 はう!!!幸せだ。新婚さんだよね、これって!!!


 こういうのだよ、ずっと憧れてたの!


 お昼が済んだ頃、壱弥がぐずりだし、壱弥におっぱいを和室であげていると、ガチャガチャとキッチンのほうから洗い物をしている音がしてきた。


「一臣さん?私がしますからいいですよ!」

 びっくりして振り返りそう言うと、

「いいんだ。できる範囲で手伝うって言ったろ?」

と一臣さんがちょっとぶっきらぼうにそう答えた。


「でも、一臣さん、洗い物なんて」

「留学していた頃、していたことがある」

「え?そうなんですか?」

「ハウスキーパーもいたんだけどな。夜の8時にはきっちり帰っていくから、そのあと腹減ったときには自炊もしたし、洗い物もした」


 自炊?初耳!

「何を作っていたんですか?」

 洗い物を終えて和室に来た一臣さんに、そう聞いてみた。

「飲み終えたか?オムツ換えてやる」


 一臣さんは壱弥のオムツを換えながら、

「そうだな。カレーとか。あ、ウンチしてた。今、話題にすることじゃないな」

と、臭そうな顔をした。


「びっくり!作れるんですか」

「バカにしたな!今度作ってやる。他にもナポリタンとか作れるぞ」

「へ~~~~!」

 一臣さんの手料理、楽しみだ。


 こんなことも、ここに暮らさないとわからなかったことだ。それに、まさか自ら洗い物をしてくれるなんて!


「眠そうだな、壱。昼寝するか」

 壱君をあっさりと抱っこして寝かせてしまった一臣さんは、

「仕事も持ち帰っていないし、暇だな」

と私を抱き寄せた。まさか、こんな昼からエッチしないよね。


「ええっと、そうだ!洗濯しようかな」

「洗濯するものがないだろう。綺麗な衣服しかないぞ、今日は」

 ですよね~~~。


「え、でも、昼間からエッチは…」

「なんだよ、そんなスケベなこと考えていたのか、弥生は」

 あれれ?違うの?


「小さいテレビだけど、映画でも見るか。壱が起きないように音を小さくして」

「え?はい」

 わあ。そういうのも嬉しい。


 一臣さんは最近買ったというDVDを、テレビの下のラックから取りだした。SFものだけど、小難しいものじゃないからお前でもわかると言いながら。

 私は、コーヒーとホットミルクをコタツのテーブルに持ってきた。そして、二人でコタツに入って映画鑑賞が始まった。


 確かに難しくないし、スリルもあって面白かった。途中、

「腹減ったな」

と一回DVDを止めて、一臣さんがつまみを持ってきた。チーズと炭酸水。私もおやつにチョコとかおせんべいを持って、緑茶も入れた。


 そしてまた、二人でDVDを見た。ああ、やばい。幸せだ。コタツはあったかいし、時々コタツの中で一臣さんの足が触れる。


 なんだか、こういうの幸せ!


 ふっと一臣さんが私を見た。

「コタツもいいな」

「はい。あったかいですよね?」

「うん。まったりするな」

「ですよね!」


 映画が終わってからは、二人でみかんを剥きながらあれこれ話をした。なんでもない話だったけど、幸せだった。途中、壱弥が起きても、和室に置いたプレイマットでご機嫌に遊んでくれて、それも一臣さんと二人で眺めたりした。


 夕飯は、和食。きんぴら、煮魚、お味噌汁。ご飯は炊き込みご飯。それからほうれん草の胡麻和え。

「今日はお魚にしました」

「うまそうだな。和食か」


 そう言って、一臣さんは食べだした。そして、どれを食べても、

「うまいな」

と言ってくれる。やばい。幸せすぎて顔がにやけっぱなしだ。


 壱弥を一臣さんはお風呂に入れ、壱弥は満足そうにお風呂のあと、またプレイマットで遊んでいる。

「手伝う」

 洗い物をしていると、食器を一臣さんが拭き出した。わあい。嬉しい。


「ほら、さっさと弥生も風呂に入ってこいよ。あとは俺が食器を片付けておくから」

「え、いいんですか」

「ああ。どの食器がどこにしまってあるか、なんとなくわかるし」

「じゃあ、お願いします」


 一臣さんにあとは任せてお風呂に入りに行った。

 亭主関白とか思っていたけど、全然だ!思い切り手伝ってくれてる!びっくり!


 お風呂から出てくると、一臣さんは壱弥と遊んでいた。すごく嬉しそうで、壱弥もきゃたきゃた笑っている。

 そうして、夜10時には壱弥も寝てしまい、

「さあて、新居での初めての夜だな」

と、セミダブルのベッドにお姫様抱っこで連れて行かれた。


「ここでも、甘い夜にしような?」

「はい」

 ああ、熱い視線で言われたからつい頷いちゃった。


 こんなに幸せでいいんだろうか。

 新生活1日目は、すんごい幸せでした。



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