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続・ビバ!政略結婚  作者: よだ ちかこ
第3章 副社長は奥様にぞっこん?!
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第4話 戻ってきた甘い日々

「おはよう、弥生」

「ん~~、おはようございまふ」

 翌朝、目覚めると一臣さんが隣で優しく私を見ていた。


「朝飯たらふく食うんだろ、早く起きろ」

 優しい目とは裏腹な憎らしい言葉…。そう言いながら私の鼻をぎゅっとつまむし…。

「たらふくは食べません~~」

 ははは、って爽やかに笑っているし。


 これもこれで、幸せな朝だよなあ。


 私が顔を洗ったりするのを待って、一臣さんは一緒にダイニングに行ってくれる。片手に新聞を持って。

 前は部屋で一人でコーヒーを飲んでいた。でも、最近はダイニングまで一緒に来てコーヒーを飲んでいる。


 新聞を広げ、たまに私を一臣さんは見ると、

「うまそうに食うなあ、弥生は」

と感心する。


「朝からお二人は仲がよろしいことで」

 私の食べたお皿を片付けながら国分寺さんがにこりと微笑んだ。

「国分寺、うるさいぞ。こういうことも全部、親父に報告しているんじゃないだろうな」

「もちろん、報告しております」

 国分寺さんはにこりと微笑み、キッチンに戻っていった。


「ったく、なんでも報告しているんだから、まいるよなあ」

「きっと、お義父様は一臣さんのことをなんでも知りたいんですねえ。それだけ一臣さんが可愛いのかも」

「弥生、気持ちの悪いことを言うな」

 くす。


 そばにいなくても、お義父様は一臣さんのことをいつも思っているんじゃないのかな。


 朝食が終わり、会社に行く支度をして一臣さんと車に乗り込む。一臣さんは私の太ももを撫で、樋口さんの報告する1日のスケジュールを聞いている。

「よし。今日も弥生と一緒に行動できるな」

「弥生様、よかったですねえ、最近はいつも一臣様とご一緒で、寂しい想いをなさらないですんで」


 きゃわ~~~。等々力さんったら、何を言い出すの。

「一臣様も、最近はずっと弥生様と一緒で、ご機嫌で何よりです。弥生様がいないと、不機嫌になりますもんねえ」

「うっさいぞ、樋口!」

 わあ。一臣さんが照れてる!


 そんなこんなで、楽しく会社に着く。エレベーターでも、一臣さんは私の腰を抱き、私もついつい一臣さんに甘えてしまう。一臣さんのお部屋でも、ついついベタベタと…。


 そして、そのラブラブな状態のままエレベーターに乗り、今日は7階にある会議室に向かった。15階から、一臣さんが私のお尻を撫でながら、

「最近、弥生は胸が大きくなってきたなあ」

とぼそっとつぶやく。


 樋口さんが先に会議室に行っているから、今は二人きり。

「ブラジャー、今までのじゃ小さくて…」

「ん?確か青山が一回りでかいのを買ったよなあ。それが小さいのか?」

「はい」


「また買わせるか…。なんカップくらいあるんだ?」

と言いながら、私の胸を揉んできた。

「こんなところで、揉まないで下さい」

「…なあ、弥生。安定期だし、大丈夫だろ?」


「はい?」

「抱いても大丈夫だろ?今夜あたりどうだ?さすがに俺も、我慢の限界にきているぞ」

「そんな話を、こんなところでしないで下さいってば」

「いいだろが、二人きりだぞ」


 そう言って、一臣さんが私のことを思い切り抱きしめた時に、チンッとエレベーターのドアが開いた。

「わ!す、すみません」

 エレベーターのドアの向こうで、若い男性社員が慌てふためいているのが見えた。


 エレベーターは9階に止まっていた。若い男性社員と、その後ろに40代くらいの女性社員も顔を真っ赤にして立っている。

「……ふん」

 えらそうに鼻を鳴らし、一臣さんは私を抱きしめていた手を離し、(でも、腰に回した手は離さず)前を向いた。


「乗るのか、乗らないのか、どっちだ」

 わあ。一臣さん、そんなこと言ったら乗れないでしょう。

「あ、次のを待ちます。すみません!」

 ほら。ぺこりとお辞儀をしたまま、顔もあげられなくなってる。40歳の女性社員も、一緒にお辞儀をしているし。


 一臣さんは、ドアを閉め、

「なんだよ。乗らないなら、エレベーターを呼ぶな」

と、とんでもないことを呟いた。


「あれは、一臣さんがエッチなことをしているから、乗って来れなかったんですよ」

 すりすり。いつの間にか一臣さんが私の頭に頬ずりしている。

「聞いてますか?一臣さん!」

「今日は早くに帰ろうな?弥生」


 絶対に聞いていない!


 腰を抱いたまま7階でエレベーターを降りると、一臣さんはゆっくりとした歩調で会議室に向かった。今日の会議は、新プロジェクトの会議。土浦さんが抜けたあと、新しいチームメンバーが参加するらしい。


 会議室に入ると、すでにみんなが揃っていた。

「遅くなったな」

 そう言って、一臣さんは席に着き、私もその隣に座った。


「お茶でよろしいですか?」

「ああ、いい。さっき、昼と一緒にお茶なら飲んだ。それより、土浦のあとの新メンバーっていうのが、君か?」

「はい。広報部広報課の金町です」

「そうか。よろしく頼むぞ」

「はい。よろしくお願いします」


 そうお辞儀をしたのは、20代後半くらいかな。黒縁の眼鏡をかけ、ボブカットで痩せ型の、仕事のできそうな女性だった。


 今日もまた、一臣さんは何も意見も述べず、ただ会議を聞いていた。金町さんは、土浦さんよりもずっとテキパキと発言し、周りの人もどんどん意見を出し、決めるべきこともどんどんと決まっていった。

 なんか、この人、すごいんですけど…。


 会議が終わり、資料を金町さんが片付けていると、

「何で初めから金町がメンバーにならなかったんだ?」

と一臣さんが隣に行き聞いた。


「はい?」

「土浦よりもずっと仕事ができるだろう」

「そんなこと…。課長は若くて行動力のある土浦さんをかっていましたから」

「行動力は確かにあったな。それも、変な方向に行っていたが…」


「そのようですね。札幌支店に移動になったと聞いて、広報部のみんな、驚いていましたよ。一臣様は、前々から怖がられていましたが、もっと怖がられる存在になってしまいましたよ」

「怖がる?冗談じゃない。当然の処置だろう?」


「まあ、確かに…」

 ちらっと金町さんは私を見た。

「弥生様もとても優秀だと聞いております。一臣様の補佐をしていると」

「ああ、そうだ」


「なので、会議に参加されると聞いて楽しみにしていたんですが」

 金町さんは私のほうを向き、

「今日の会議はいかがでしたか?」

と私に意見を求めてきた。


「はい。みなさん、優秀ですばらしいですね」

「…それで、何か弥生様自身のご意見とかは」

「ないです。みなさん、優秀なので私が意見することなど何も…」

 本音を言ったんだけど、金町さんはつまらなさそうな口調で、

「そうですか」

と、目を伏せ、また資料を片付けだした。


「今のところ、特に問題もなさそうだし、リーダーを中心に進めていいと俺も思う。今後は俺と弥生は会議に参加しない。報告だけしてきてくれ」

 一臣さんは金町さんと、リーダーにそう言い残し、私と一緒に会議室を出た。


「一臣様」

 廊下を歩いていると、後ろから金町さんが追いかけてきて一臣さんに声をかけた。

「なんだ?」

「あの、今後、もし相談事があったら、ご相談に乗っていただけますか?」


「…リーダーは俺じゃない。まず、リーダーに相談しろ」

「ですが、リーダーに相談しても、解決できなかったら」

「リーダーから俺に報告をよこすようにしろ。金町は、リーダーに頼れ」

「……。一臣様と一緒にプロジェクトを進めて行けるのだと、すごく期待していたんです」


「何で俺と?それより、プロジェクトメンバーに選ばれたんだから、それを喜べよ。そして、いい結果が出るように頑張ればいいだろう」

「一臣様のアシストがほしかったんです」

「意味がわからん」


「今は広報部にいますが、前々からマーケティング部に移動を希望していたんです。今回のプロジェクトで、それが叶うのならと思いまして」

「そのアシストがほしかったんなら、仕事を頑張ったらいいだろう?悪いが俺には、人事の権限はない。土浦みたいに、とんでもないことでもしたら、左遷することはあってもな」


「…わかりました。わたくし、頑張りますので、名前と顔は覚えていてください」

「もう覚えた」

 一臣さんはそうクールに言うと、私の背中に腕を回して、エレベーターホールに向かって歩き出した。


「……。一臣さんに頼りたかったんでしょうか」

「俺に媚売って、出世したかったんだろう」

「媚?」

「まあ、俺が言えば、人事も動かせるかもしれないが」


「え?さっきはそんな権限ないって」

「いいや。ある。副社長にだって、そのくらいの権限はある。だから、左遷もできる。ただ…」

「はい?」

「そんな面倒なことは引き受けない」


 う。出た。面倒くさがり。

「だいたい、そんなことを一回でもしてみろ。次から次へと言い寄ってくる女が現れるぞ。それも、色目使ったり、女の武器使ったりしながら」

「女の武器?」


「ああ。体使おうとするような、そんな女があとをたたなくなっても、弥生が困るだけだろ」

「体?!」

「今までもいたしな。そんな女」

 え!!!


「か、一臣さん、そ、そ、それで」

「俺を利用しようとするような女、誰が相手にするものか」

「………」

 それ、ほっとしていいの?


「そうやって、専務とか、人事のやつに言い寄っている女もいるようだし、それを相手にするようなエロじじいもいるようだが、俺はそんな女、大嫌いだからな、昔から」

 昔から?

「抱いたあとにそんなことを申し出てきたら、即別れておしまいだ。それでもしつこかったら、逆に支店や子会社に飛ばしてやる」


 こわ。一臣さんって、本当にそういうことしそうだから、一臣さんを利用しようとなんて誰もしないんじゃないのかな。

 っていうか、昔の話とはいえ、そういう話はあまりしたくない。


「だいたい、男が誰でも女の色気にほいほいのると思ったら大間違いだ。俺みたいに淡白な男だっているんだ」

 なんか、いばってる?っていうか、怒ってる?

 

 一臣さんはエレベーターに乗り込むと、他の社員もいるからおとなしくなった。でも、私の腰はしっかりと抱いている。そして、14階に着き、カードキーを差込みドアを閉めると、

「弥生だったら、迫ってきてもウェルカムだ」

とわけのわかんないことを言って、私にキスをしてきた。


 きゃあ。不意打ち。そんな熱いキスしてこないで。とろける。

「他の女なんて、こっちから願い下げだ」

 とろける意識の中、一臣さんがそう言ったのをぼけっとしながら聞いていた。


 夜…。夕飯を終え、一緒にお風呂に入ったあたりから、一臣さんの様子が変になった。妙にうなじやら、肩にキスをする。お風呂から出て、髪を乾かしてくれるときにも、鏡に映る一臣さんの目つきが色っぽい。


 これは、すでにその気モード?


「弥生…」

 耳元で囁く声が、甘ったるい。

「はい…」

 やばい。その声にも目にも、すでに私もスイッチが入りかけてる。


「優しくする。お腹張ったりしたら、すぐに言え」

「……はい」

 腰を抱かれ、ベッドに連れて行かれた。そして、一臣さんは今までにない気配りや、優しさを見せてくれた。


 うわ~~~~~。

 そんな優しい一臣さんに、胸がときめくやら、満たされるやら…。


 久々の甘い夜。ぐっすりと一臣さんの腕の中で眠りに着いた。

 ああ、幸せだ~~~~~。




 

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