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難
よりにもよって、芹沢一派の宿をとり忘れるなんて、痛恨の失態だ。
何癖をつけてくるに決まっている。
なんとか、空いている宿はないかと辺りを駆け回ってみても、
急遽こんな風体の野蛮な浪士を受け入れてくれる宿など見つかる訳もなく、
それが、芹沢の耳に入った。
あろう事か、芹沢は大通りのど真ん中で、火を起こし、そこで一夜を過ごすという。
辺りには宿以外に民家もあり、火の粉が民家に飛び散る可能性もある、危険な状況だ。
「芹沢さん、ここではほかの民に迷惑がかかってしまいます、場所を移してはもらえませんか」
「近藤よ、いったいどこに場所を移すというのだ。宿をとり忘れたお前が、この芹沢に指図をするというのか」
どんなに頼んでも、芹沢は場所を動こうとはしない。
こちら側も、下手なことはいえない立場。
「それは私の失態です。誠に申し訳ない。早急に、部屋割りを組み直すので、なんとか、ここから移動してはもらえないだろうか」
近藤さんは土下座をした。
「ふんっ、さっさとしろ」