集
俺は、小石川の伝通院で浪士が集まる様子を観察していた。
ある程度、人が集まったところで班編成が行われるらしい。
そこそこ名のある連中もいるみたいで、そこには団体で参加している奴らもいた。
「源さんっ、なんかすげーよな!ここに集まってる奴らみんな、強えぇのかな」
身長やや低めの青年、そして人の良さそうな人だ。
「こらこら藤堂君、あんまり騒いでは若先生に迷惑がかかるでしょう」
「はっはっは、藤堂君はいつも元気だなぁ」
正直、呑気な会話に拍子抜けしてしまうが……。
呆れて様子を伺っていた時、清河ではなく、その隣にいた男が声を張り上げた。
『みな、よく集まった!此度、貴殿等が集められたのはほかでもない、翌年、将軍・徳川家茂公上洛に際し、将軍様の護衛として、我ら共に京へ登り、将軍様のお命狙う、尊皇派の過激攘夷志士を一層するためである!』
もっともなことをいって、学のない俺たちを信じ込ませる。
何を企んでるかは知らないが、清河の野郎、顔がほくそ笑んでやがる。
『それに際し、隊の統制を図るために組織編成を行った。後ろの紙に隊の振り分けと、それぞれの役割が書いてある故、各自確認するように。再度、出発日時を通達する、以上だ』
そういってさっさと引っ込んでいった男。
解散の声に、みな、意気揚々と張り紙を見に行ったり、また情勢に不満を抱くものは持論を語り合ったりと、それぞれの時間を過ごしていた。
「さて、俺も班見てくるかね……」
人だかりの方へ行くと、身長の低い俺には、紙が見えなかった。
「っち、」
思わず出た舌打ちを聞いた体格のいい男が、話しかけてきた。
「おっあんた、一人で参加すんのかい?名前、確認してやるよ」
「ああ頼む。拳成と申す」
「拳成だな、ちょっと待ってろよ……あ、あああったぜ、あんた俺らと同じ、3番隊の1班だ。よろしくな!」
男の名前は、永倉新八…なんでも、多摩の田舎道場で剣客をしているらしい。
その道場の面子もごっそり参加するとか。
「ああ、よろしく頼む、永倉」
気のいい男と知り合って、ちょっと気分もいい。
この男となら仲良くなれそうだと思った。