逢
文久2年、とくにする事もなく、各地を放浪していた俺はたどり着いた江戸の地で、浪士募集の張り紙を見た。
腕に自信があれば、身分、犯罪歴の有無、年齢を問わないと書かれたそれは、ひとり孤独の中にいた俺の心を動かすには十分だった。
「ふむ……悪くない」
募集人は庄内藩士、清川 八郎。
清川という男は、幾分気になることがあった。
以前、各地で倒幕運動をしているというのを耳にしたことがある。
なぜ、倒幕派であるこの男が今回の将軍警護を名目とした浪士組結成に咬んでいるのか。
将軍警護を名目に募集をかけているため、集まる浪士は佐幕派の者が必然と多くなる。
もちろん、佐幕派でないものも集まってくるが……
一度に、大量の浪士を集めて、一体何をしでかしてくれるのか。
興味がそそられた。
参加の意を伝えるべく、伝通院へ足を運ぶと、すでに何名かの浪士が集まっていた。
「貴殿たちも、この浪士組の話に乗るおつもりか?」
目をつけたのは、4名の男たちを連れた水戸藩浪士、芹沢鴨。
天狗党として名を馳せた尊皇攘夷思想の男だ。
「あぁ、だったら文句でもあんのかい」
低くかすれた声で、そう答えた鴨に返答をしようとしたところ、彼らはすでに名前を入れていたのか帰っていってしまった。
「尊皇攘夷思想のあんたが、佐幕派の連中と馴れ合うってのか……」
水戸藩は水戸学なるものが根付いていると聞く。
水戸学は愛民精神が強く、夷国をよしとしない。
とても相容れるものではないだろう・・・・・・。