表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
定期演奏会参考脚本  作者: スナイパーと呼ばれた教大生
3/4

愛をこめて花束を

煌びやかな衣装を着た花嫁が新郎に寄り添いながら、草木で飾られたテラスより彼らを見下ろす。今日、この結婚式兼披露宴に出席してくれた、愛すべき友人、恩人、家族達だ。

「さて、これより運命のブーケトスを行いたいと思います。花嫁をお目指しのお方は是非、血眼になって手を伸ばしてください」

進行役の女性の見事な言い回しに、所々で笑い声が漏れ聴こえた。


花嫁がブーケを掲げ持つ。

「いきます!」

放たれるブーケ。運命の糸に群がる亡者達のように、若い女性たちが落下地点へ殺到した。

「獲ったぁ!」

そして一分としないうちに、決着がつく。ブーケを手にしていたのは、小学生ぐらいの可愛らしい女の子だった。嬉しそうにブーケを抱きしめ、母親だろう女性に駆け寄るその姿に、会場の空気はフッと暖かくなった。

「では―――」

「「皆さん!!」」

進行役の女性が締めに入ろうと口を開く。だがそれに待ったをかける声がかかった。

その声は広場の上方―――テラスのから聴こえた。参列者が上を見上げる。その視線を一身に受け止めて、新郎新婦は後ろ手に隠していたあるものを掲げた。

「ブーケ?」

誰かが呟く声がした。

そう。彼女たちが手にしているのは、青白い花を包んだ小さなブーケ。先程投げられたブーケよりも二回り程小さい。

新郎が声高に話し始める。

「今回お越し頂いた皆様には、直接的であれ間接的であれ、今まで大変お世話になっています。その感謝の意を伝えたく、このブーケを、二人で作りました」

新婦がそれを引き継ぎ、ブーケを手に声を張り上げる。

「これは運命のブーケではありません。ですがこのブーケには、私達の皆さんへ向けた愛がこもっています。どうか私達の愛が、皆さんの心を少しでも温かくしてくれますよう……」

ブーケが投げられる。

事態にようやくついてきた聴衆が、慌てて降ってくるそれらを追いかけ始めた。

キャッチした中年の男性が、大きな声で叫んだ。

「確かに受け取ったぞ!」

「うん!受け取った!」

若い女性がブーケを掲げて続く。

受け取ったそばから、皆口々に叫んだ。

「あなたたちの愛は、確かに受け取った」と。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ