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蒼穹輪廻の魔法騎士  作者: 如月 蒼
Prelude:日常編
8/8

輪廻7 帰還

 まず最初に、このような駄作をお気に入り登録して下さっている数人の方達に謝らせて下さい。

 更新が遅れに遅れ、申し訳ありませんでした!

 本当にごめんなさい……m(_ _)m(汗


 しかも今回は短い。何時もより更にクオリティも低い。謝ることしかない……。

 こんなですが、読んで下さるという方に感謝を!

 ――視られている。

 それに気付いたのは、空賊の騎巧艇の上に乗っていた首無し死体を処理し終えてからだった。

 何処から視られているかはすぐに分かった。

 魔力を辿れば、終夜ならまるで目に見えているように相手の位置や姿を知覚出来る。

 民間の航空機の中からだった。


「[視力強化(サイト・エンフォース)]だな。魔法師か」


 呟き、それから自分の周り――騎乗者のいない騎巧艇が幾つも滞空している光景――を見渡して、終夜は溜め息をつきたくなった。


「……見られたよな? いや、でもあんな遠くからじゃ普通顔まで見られないだろ。うん、大丈夫大丈夫」


 自分は相手の姿を鮮明に捉えている癖に、それを棚に上げて何度か頷く。

 ――それにしても、だ。


「可愛いなー、あの子。歳、同じくらいか?」


 航空機の中から魔法を使って此方を見ているのは、一人の少女だった。

 綺麗な桜色の髪を持った美少女だ。


「BAFに偏見は持ってないっぽいな、表情からして」


 少女は終夜を見て、驚いた顔をしているが、紅色(マゼンタ)の瞳はキラキラと輝いている。恐らく彼女はBAFに憧れる魔法師なのだろう。

 BAFを非難する一般人の場合、殺し合いの色が強い空戦の後の光景など見ようものなら、五月蝿く喚き散らすところだが、見たのが魔法師で助かった。


「学生魔法師は殆どがBAFに入る事を目標としてるらしいからなぁ。それを思うと……マジで俺、総長なんかやってて良いのか?」


 あの少女も自分のような子供がBAFのトップだと知ったら幻滅するのだろうか。

 まぁそうだとしても、終夜には関係ないが。


『シュウヤ。あの子、ありがとうって言ってる』


 フォレン粒子からの念が、終夜に伝わる。


『……ありがとう? 空賊から航空機を守ったことか?』

『うん、多分。ねぇシュウヤ、あの子可愛いね』


 フォレンと念話を交わした後、終夜は少女に向かってニコリと笑い掛けてみた。

 さて、どんな反応が返ってくるか。

 少女は目を丸くして驚いた。まさか視線に気付かれているとは思わなかったらしい。

 そのあどけなさが、終夜には眩しかった。




     ☆




「お帰りなさい、総長」


 騎巧艇で飛空艇に戻った終夜に、そんな声が掛けられた。

 優し気な、女性の声だ。


「ただいま、ヴェネッサ」


 返事をして、終夜はeフロア――終夜専用騎巧艇(ソウルイーター)の整備室兼待機室である――からエレベーターに乗り込んだ。

 最初からエレベーターに乗っていた声の主の女性――ヴェネッサは、扉が閉まって箱が上昇し始めると、にこりと微笑んだ。


「お疲れ様でした」

「うん、ヴェネッサもお疲れ様」


 瞬時に返された終夜の言葉に、ヴェネッサは苦笑いを浮かべた。


「……大丈夫ですか?」

「何が……って、あ、眼のことか? それなら心配ないよ」

「いえ、眼ではなく……その、精神的なことです」


 どんなに綺麗事を並べようと、BAFの魔法師がしていることは「人殺し」である。その為、BAFの魔法師は定期的にカウンセリングを受けるのが義務となっていた。

 両手で抱えたファイルを軍服に包まれた豊満な胸に押し当てるヴェネッサに、終夜は血に染まった顔で自嘲気味の笑みを漏らした。


「……今更だな」


 ――また、背が伸びた。

 ヴェネッサは隣に並んでエレベーターの到着を待つ少年を見て、そう思った。


「……ヴェネッサ?」

「は、はいっ? 何でしょうか、総長」

「いや、別に……何かボーっとしてたから」

「え、そうですか?」


 こくんと終夜が頷く。

 こういう仕草や口調は遥かに自分より子供だ。

 でも、背の高さとか、魔法師としての実力とかを抜かしても、一生彼には敵わないとヴェネッサは思う。

 ――覚悟の強さも、信念も。



 ――闇の深ささえ。



 彼には、敵わない。絶対に。

 彼の求めるモノ。

 自分は知らない。饅頭なら知っているだろうか。


「おーい、ヴェネッサ?」


 気付けば、終夜がその青と黒の瞳で下から覗き込んできていた。


「……ッ」


 それに一瞬だけ動揺した彼女だったが、すぐに平静を取り戻した。

 軍服のジャケットの懐からハンカチを取り出す。


「え? ――ぎゅえっ」


 それを終夜の顔に押し付けて、血を拭う。


「ぐぎゅ」

(カエル)の潰れたような声を出さないで下さい総長」

「や、だっとゅぇ……い、いはい。ひぎゃらつよじゅふっ……」


 訳:「や、だって……い、痛い。力強過ぎ……」


「血が思ったよりこびり付いていて取れないんです、我慢して下さい」


 ヴェネッサは苦笑しながら、少年の顔を拭き続けた。




     ☆




 エレベーターの扉が両側にスライドする。

 エレベーターから出た終夜は、飛空艇四階の廊下を右へ行く。

 ヴェネッサは左だ。


「総長」

「ん、何だ?」


 呼び止められて終夜は振り返る。その顔にはまだ少し赤黒い液体が付いていた。


「シャワーを浴びて着替えたら、食堂に来て下さいね」


 ヴェネッサは微笑んでいる。


「食堂? 何で?」


 彼女は微笑みを崩さないまま、言った。


「秘密です」


 読んで下さりありがとうございました。

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