輪廻0 プロローグ
あらすじで「開幕!」とか何とか言ってますが、そんな格好良い物語にはならない……と思います。すみません。
その昔。
西暦24XX年12月07日。
深刻な世界的エネルギー不足の問題に因り、第三次世界大戦が勃発した。
その弊害で、世界は大陸を失う事になる。
平和条約を掲げていた日本も、やむを得ず戦争に参加する事になった。
日本は慌てて兵器を開発する。先進国は全てが核兵器を使用した。だが、大陸が失われた直接の原因は核兵器では無かった。
西暦24XX年02月29日。
とある国家の、名声と権力を求め暴走した軍幹部の命令で、日本列島に毒ガスが撒き散らされた。
日本が混乱を極めたその隙に、敵対していた他の国家が、絶好の機会とばかり日本列島に核兵器を撃ち込んだ。
そして――
誰も予想の出来なかった、毒ガスと核兵器の化学反応が起こった。
世界は、化学反応に因って発生し膨張した猛毒性の気体に覆われた。
人間は大陸の上では生きていけなくなった。
そんな人々が目指したのは、雲よりも高い場所にある空間だった。
忽然と。
本当に突然、誰もが認識出来ない内に、それは空に浮かんでいたのだという。
偽りの大陸――「浮遊大陸」が。
いや、浮遊大陸が現れたのも、大陸が失われた理由と同じで第三次世界大戦の弊害だった。
毒ガスと核兵器の化学反応で発生したのは毒性気体だけでは無かった。
後に「フォレン」と名付けられる、高エネルギーの気体粒子も同時に発生していた。
毒性気体は質量の関係で冷たい空気が下に向かうように、本来の大陸から高度2000メートルの空間に留まる。
だが高エネルギーの気体粒子は質量が水素よりも小さく、暖かい空気が上に向かうように、浮遊大陸が浮かぶ高度の空域まで取り巻いた。
浮遊大陸は、高エネルギーの気体粒子――「フォレン粒子」に因って浮力を得ていたのである。
何故、毒ガスと核兵器の化学反応でフォレン粒子が生まれたのかは解明されていないし、フォレン粒子の詳しいデータも分かっていない。
しかしフォレン粒子は、戦争が勃発する程にエネルギー不足に苦しんでいた人間を救った。
全てのエネルギーは、フォレン粒子一つで事足りるようになった。
火力も電力も水力も原子力も要らない。
大量にある空気の中に、高エネルギーを持つ気体があるのだから。
フォレン粒子は酸素の代わりも担い、人間が超高度の世界で暮らす事を可能にした。高度域の寒さもフォレン粒子が空気に混ざった事で緩和されていた。
空気の中のフォレン粒子は、人間に酸素と同じ影響しか与えない。しかしそれでいて、莫大なエネルギーを秘めている。
フォレン粒子に因って、
火が灯る。
明かりが点く。
電気が通り、電子機器が起動する。
人間の呼吸さえも賄える。
フォレン粒子はあまりにも便利で融通の利くエネルギー体だった。
そして。
フォレン粒子はもう一つ、世界に新たな技術を確立させた。
人間の中に長い間秘められていた力がフォレン粒子に因ってやっと開花した、とも言えよう。
魔法。
それが、空の世界で生きる事を決意した人間達にフォレン粒子が与えた、奇跡の技術である。