『第四話』
さよの思いがけない行動に全く身動きが取れなくなる寿子。
しかしそれは本当にさよなのか?果たして何処までが現実なのだろうか?
だが寿子は恐怖心を押し殺しながら何事もなかったかのように夕食の支度を始めた。
山野家に纏わる古い話等聞いた事はない。
あの映像の様な光景を思い浮かべ寿子は思った。
人々の身形は何処となく古い時代に感じたが、
あの光景はそんなに古い時代の様には思えなかった。
江戸末期であろうかいや明治か大正であろうか、
もしかすると昭和初期辺りなのかも知れない。
もしかして山野家に纏わる過去の出来事なのだろうか?
そんな事を考えると、
寿子は気味の悪さからかブルっと背筋に悪寒を感じた。
そして思った。
もしかすると、さよの言ってる三人の女性、
若い女性と二人の老婆、そのことをさよから毎日
聞かされていたので気を失った瞬間に妙な夢でも
見てしまったのだろうか。と・・・・・。
そこへさよが突然降りて来て、寿子の手を掴んだ。
そして、
「なぁ見えるだろ?お前にもちゃぁんとなぁ」
さよによって
今度は故意にその石の上に手を乗せられたのだ。
寿子は驚いて恐怖のあまり石から手を放そうとした。
しかし身動きが取れない・・・。
「助けて~!」
心の中で必死にそう叫びながら手を放そうとするけれど、
声は愚か全く視界すら動かせない。
ただそう言ってしっかり寿子の手を握り、
そしてその石に押し当てるさよの姿を凝視しているしか
なかった。
※-----この人は本当に義母さんなのだろうか?
おかしいっ!
だって義母さんが手摺すらない古い家の階段を
ましてやこんなに早く降りて来られる筈がない。
じゃ今私が見ているこの人は一体誰なの?)
そんな事を考えると恐ろしくて堪らなくなった。
しばらくして我に返った寿子が庭からふと二階の窓を見上げた。
そこには物悲しそうに見詰めるさよの姿。
寿子は大きな声で叫んだ!
「義母さん今から夕飯の支度をするので待っていてね!」
言い知れない恐怖と不安を掻き消したいかの様に、
寿子は足早に台所へと向かった。
※-----義母さんが私の事を二階から見下ろしていた。
もしかして義母さんは先程動けなくなったあの瞬間の
私の姿を見ていたのだろうか。
だけれど認知症の義母さんに聞いてもしょうがない事。)
そう思っていたのだろう。
だから寿子は何事も無かったかの様に台所へ
向かったのだろう。
第五話へつづく・・・。