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桃色の時を超えて!『最終話』

桃の花と共に遥か時を超えて!再び、そして永遠に!


旅行から帰って寿子は相変わらず、さよも変わらず、

縁側でみかんを食べながらひなたで休む二人。

突然さよが言った。



「はよぉ~二人を助けてやらんと、

引き合わせるのは寿子にしか出来ないだろう!」



その言葉に血相を変える寿子。



「ほらぁ~あんたは新しく生まれ変わった

お寿美だからなぁ~カッカッカッ!」



そう言ってさよは笑った。



「義母さんは認知症ではないのだろうか?」



寿子は思った。さよは病気のふりをしているのだろうかと。

さよの窓から見える夕暮れの御宮へ行き、

寿子はその場に小さな菊の花を置いた。



さよが見える・・・、と言うその場所に



そして手を合わせ黙祷した。

その日から寿子は思い立ったように、

現在は行き来が途絶えてしまった近藤家へと何度も足を運び、

そしてそのすべてを説明し続けた。

近藤家の人々も最初は困惑していたが、寿子の強い思いを

了承ぜずにはいられない気持ちにさせられた。


寿子は山野家に持ち帰り、片方の石を北東の大きな石の横に並べた。

そして・・・もう二つの石を脇へと並べた。

それは息子と娘を思う二人の母の石。そして石の前で手を合わせた。

その後心の中でそっと呟いた。



「二つの脇の石はまるで義母さんと私の様な気がする」



と・・・。

寿子の顔は真剣だった。

死を覚悟していたの言うのだろうか、それとももっと違う何か

を感じとっていたとでも言うのだろうか?

その後寿子は死ぬ事もなく、今まで以上に元気になり、

気にしていた時折痛む腰痛も不思議と無くなった。

寿子は改めて思った。


認知症のさよを多少厄介だと思っていたけど、

自分もいずれ同じ様な道を

辿るのかも知れないと、それならさよに最後までこの世で

幸せだったと思って貰いたいと・・・



寿子は電話を掛けた。巣立って行った息子や娘達に、



「時間が出来たらこちらへ帰っておいで、

私だってお婆ちゃんだって偶にはあなた達や孫の

顔を見たいわよ」



そんな其々が独立した日々を送っている子供達に、

迷惑を掛けまいと何処か遠慮がちだった寿子。

しかし寿子の呼び掛けに、

家族全員が山野家へと集まる事が出来た。

雛祭りの日に、桃の花が咲く庭で、

寿子は石の両脇に灯篭を立て飾った。そして白酒とひし餅と

雛あられを置いた。


お内裏様になった凌隼とお雛様になった千夕に思いを馳せて、

そして互いに感謝し合えたその気持ちを

実感して、人はきっと目に見えないものに

日々守られ救われているのかも知れないと、そして

認知症になってしまったとは言え、

さよはその全てを日々冷静に見詰めているのだと・・・。


そう思った時、寿子はさよに対してもう心の中で

何も否定しなくなっていた。

そしてさよは言った・・・。



「今年は桃の花が綺麗だなぁ~、

あのおなごもきっと喜ぶだろうな!」




あの庭に現れた白い帽子の男は?一体寿子は何を見たのだろう?

雛祭りの桃の花に誘われて天使でも

降りてきたのだろうか・・・。



終り・・・・・・。





小さな御宮の中に聳え立つ一本の美しい桃の木の下で彼は待っていた。

そこへ彼女はやって来た。

頭の上へ布を翳してその美しい布が花びらの様に風に靡いていた。

彼は振り返って優しい眼差しで言った。



「千夕」



彼女は彼の胸へと飛び込んだ。



「凌隼様」



桃色の春風に乗せた思ひは時を超えて再び、そして永遠に!





「桃色の時を超えて!」





最後まで読んで頂いて有難う御座いました。

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