8と5と25
さっくり、ストレートは
顔面にヒットする。
立て続けに、酒臭い息がAの顔に振りかかる。
「〇〇新聞取っってるから・・・、要らないってぃぃ言ってるでしょうが!」
紛れもなく、酔っぱらいだ。
しかも、これが他人ならば
叱咤したり、取り敢えず警察に引き渡すとか
出来そうなものだが、
いかんせん・・・。
これでも、Aの上司に値する、
人物だったりするわけだ。
何にしても、朝っぱらから酒盛りとは・・・。
正気の沙汰ではない。
「アウンクェさん、何やってんですか!時報警察に見つかったら、一毛打尽ですよ。早く中に・・・」
言葉は、続かない。聞こえない。なぜならば、対象とする人物は
{ここ}には居ないのだから・・・。
白い壁が広がっていく...。
それは、突然にやってきた。
どこからとか、何がとかなんてもんじゃない。
{やって}来たのである。
「はぁ、はぁ。」
Aは必死に、街を駆け巡る。
もはや、街でもなければ巡るほどのものでも
無くなってしまったが・・・。
「絶対に、禿げて死にわけには!」
そう、奴らから命からがら逃げているのだ。
しかし・・・・・・。
いやぁ、参ったね。
エレベーターの中である。
急な停電で、止まってしまった訳だ。
(しかし、この状況下になる確率ってどんなもんなんだ?)
Aはしがない、会社員で時間にはきっちりとしないと
気が済まない、正直めんどくさいタイプの人間である。
不意に、小さい音がエレベーター(意外と広い)にこだまする。
(俺だけが、閉じ込められた訳では無いのか?)
目が慣れてきたところで、
Aは周りを今になって確認する。
この男は時間だけにはきっちりしているが、
他の点では、結構ルーズなのだ。
「誰か居るんですか~?」
少し間の抜けたような、声でAはしょっと叫ぶ。
「あ゛あ゛あ゛・・・。」
少女...、いやもっと幼いだろうか?
そんな、少女が頭を抱えて震えていたりしたのだ。
因みに、Aはどっちかというとグラマラスな女神の方が
好みだったりする。
(っち、餓鬼が泣いてんのかよ。面倒だな・・・。)
と、流石にここまでは酷くはないがちょいとばかしか面倒そうに、
少女に声をかける。なぜなら、これ以上泣かれては困るし内心ホッとしたからである。
「大丈夫かい?怪我はないかい?親御さんは?」
Aはコミニュケーション能力が低い・・・。
こんな、コミュ症+挙動不な男に、
少女は身を起こし、答える。
「ひぃぃ・・・
空が真っ白な光に包まれて行く。