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第七話 世界の真ん中で、キミと


 ―――最後の花火が終わると。


 世界に、二人だけ。



 陽ちゃんの幸せが知れたから。

 ちゃんと伝えようって……決めたから。


 ―――神様。


 どうか。

 どうか、力を貸して下さい。



「……ねえ、陽ちゃん」


「うん?」


 私は、絡めた指先に力を込める。


「文化祭、希望者はステージに立てるんだって」


「……うん」


「私……歌いたい」


「……」


 深呼吸。

 怖い。


「陽ちゃんのピアノで。

 みんなの前で、歌いたい。

 一緒に……」


 鼓動が、揺れてる。

 逃げたいって、胸が騒いでる。


 でも。


「陽ちゃんとなら……前に……進める気がするの」


 

 しばらくして。

 陽ちゃんは、小さく笑った。



「―――ずるい。後出しジャンケンみたい」


「え?」


「ボクも、同じこと思ってた」


 きゅっと。


「さくら……」


 指先に力がこもった。


「ボクのピアノで歌って下さい」



 その一言で。

 世界に、色が戻った気がした。



「―――うん!」


 怖いけど。


 でも。

 もう一人じゃない。




 だから私たちは―――


 この温もりを勇気に変えて、


 小さな一歩を、踏み出した。




       ◇


       ◇


       ◇




 空が高い、秋の日―――。


 学校中が、知らない場所みたいだった。


 熱気と、ざわめきと、笑い声が一気に押し寄せてきて。

 人、人、人。

 知らない顔も、知っている顔も、混じりあって―――。


 まるで、お祭りの中にいるみたい。


 ―――特に、演奏発表会の会場。


 この体育館。




「うわあ、すごい人……!」


「う、うん……!」


 ステージ袖からそっと客席をのぞいた私たちは、すぐに顔を引っ込めた。


 ……だめだ。


 周りにいる他の出演者たちも、みんな同じ顔。

 固い表情。落ち着かない手。小さな深呼吸。

 緊張が伝わってきて―――


 ううっ、なんだか、えずきそう……。


 パンフレットを見ると……。

 五番目と。十三番。


 じゅ、十三番!?


 不吉すぎるよぉ……!


 なんて震えていたら。


「次、合唱部スタンバイお願いしまーす!」


 無慈悲なアナウンス。


「ちょ、ちょっと待ってぇえ!陽ちゃん、行ってくるぅ!」


「う、うん! ガンバだよっ!」


 その声に背中を押されて、ステージへ。


 ―――でも。

 不思議と、合唱は大丈夫だった。


 声が重なる。

 それだけで、足は震えなかった。


 客席を見る。


 ―――お母さん。クラスのみんな。

 手を振ってくれてる。

 ……あっ。

 あそこにいる外国人さん、陽ちゃんのお父さん、かな?


 そんなことを考えているうちに、ステージはあっという間に終わった。


 拍手に包まれながら、袖へ。

 残るは―――二人きりの舞台。


「やっぱり、キミの夢、もう叶ってるよ」


「ふふっ。ありがとう。じゃあ今度は、陽ちゃんの番だね」


 ―――大丈夫。

 ふたりなら、大丈夫だよ?


 不器用でもいいよ。

 恰好悪くてもいいよ。


 それでも、ここまで歩いてきた私たち自身を―――

 信じようよ。


「―――うん!」


 陽ちゃんが力強くうなずいた。

 その一言で、胸の奥に灯がともる。



「……陽ちゃん」


「……うん、さくら」



 そっと指を伸ばす。


 触れ合った瞬間。

 陽ちゃんが指を絡めてきた。


 ……私も同じ。

 震えてる。


 ぎゅ。


 絡めた指に、力をこめる。

 この温もり。


 勇気……ください。



「「行こっか」」



 二人で、一歩。

 踏み出した。


 ステージの真ん中へ。


 世界の真ん中に、立っていた。



 光が、眩しくても。

 

 ―――隣に、陽ちゃんがいるから。





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