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眠れば眠るほど強くなる、肥満少年の英雄譚  作者: コヨコヨ


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疫病と向き合う

 聖なる夜が終わる。年明けが近づいてきたころ。

 オリオンは罪人たちと研究員、物資を乗せた大型の戦艦にいた。大海原に出る。

 酷かった船酔いは眠って治す。現在絶好調の状態でバーラト王国まで向かっている。


「オリオン様、本当によろしいんですか。もし、疫病に感染したら……」


 研究員のスージアは出航から三日たっても船酔いが治らず、頬がルークス帝国にいた時以上に痩せこけている。その姿からして、すでに体力が減少していた。


「俺様はスキルの影響で病気におそらくかからない。本当は父上が行く予定だったんだが、今回の作戦ならば俺様のほうが最適だと提案して変わってもらった」

「でも、子供が見ていい景色じゃないかもしれませんよ……」

「俺様は子供ではない。それに、バーラト王国を必ず救って見せると皆に約束したからな。スージア、天才の俺様を使い倒すといい。必ず役に立ってみせよう」

「た、頼もしすぎて、本当に研究員になってもらいたいくらいです。お、オロロロろ……」


 スージアは袋の中に胃液をまき散らす。

 オリオンはその背中を撫でる。当たり前のようにポードンやヴィミから猛反対を食らった。だが、約束を守るために信念を貫き通した。

 船の上で年越を超す。船員の者や研究員の者と好きな女のタイプで大盛り上がった。多くの者が疫病で死ぬかもしれないという恐怖の中、戦艦に乗っていた。

 怒り狂ったバーラト王国の者たちに殺される可能性もゼロではないとふんでいる。

 誠心誠意を見せなければ、火種が大きくなるばかりだ。


 ☆☆☆☆


 一月二日、バーラト王国の港に到着。

 鼠の死骸がお出迎えしてくれた。嫌がらせか、たまたま港で死んだのか。

 ルークス帝国の者が率先して物資を運ぶ。

 疫病で多くの感染が見られるのは、バーラト王国の首都だった。その他の小さな村まで調査が及んでいないため、状況はわからない。それを調べる必要もある。


 オリオンはルークス帝国の代表としてこの場に立っている。

 観光している暇もなく、首都にある王城に入った。

 国王に今までの無礼とバーラト王国民がルークス帝国で犯した罪などを事細かに、バーラト語で説明した。

 通訳を介さないため、非常に円滑なやり取りが可能だった。

 バーラト国王や大臣たちと話す内容は全て頭の中に入っている。何を聞かれても完璧に返答した。

 バーラト国王はオリオンの姿を見て立派な鬣のような髭を撫でる。


 互いが妥協できるギリギリのところで会話が進む。結果としてこれからも仲良く協力して行きましょうと握手を交わす。


 政治的な面は解決に進んだ。だが、バーラト王国の疫病患者は減っていない。夜な夜なうめき声が街の中で響き続ける。

 ルークス帝国の屈強な者たちが夜中眠れず、明日は我が身と、気が動転してしまうほどだ。


 王都は解決の見えない疫病に支配されている。そんな中でオリオンはただ一人、爆睡していた。

 寝床は王城の一室。地上から野犬のような叫び声もわんさか飛び交っている状況で眠り続けている。

 完璧な睡眠をとった後、朝早くから目を覚まし活動的に働いた。


 疫病の感染経路は空気感染か、はたまた接触感染か。それすらわかっていなかった。

 オリオンはスキルの影響で病気にならないと考えているが、本当かどうか自分でもわかっていない。ただ、周りより明らかに真面に動けている。


 多くの疫病患者が集められている病院の状況は見るに堪えなかった。不衛生極まりない空間だ。

 真面な食事がとれていないにもかかわらず、下痢や嘔吐によって極度の脱水症状に見舞われている者ばかり。


 オリオンは徹底的に掃除した。清潔な環境を作る。その後、物資を使って食事を提供。

 研究はスージアたちにいったん任せた。雑用係や、ルークス帝国民に対する不安を解くために出来る限りバーラト王国民に寄り添って動いた。

 実際、ルークス帝国から派遣された者達は「今すぐにでも帰りたい」と口にする。彼らにとって他国の民などどうでもよかった。そのような雰囲気が蔓延した状態で嫌々仕事している。


 皆が皆、自分と同じくらい熱量を持って働いてくれているわけではないとわかっていても、イラ立ちは募る。

「ルークス帝国の者に治療されるくらいなら潔く死ぬ」と反発する高齢者も多い。


 上陸してから七日が経った頃、ルークス帝国の者にも感染者が出る始末。


「ついに出たか。どこから感染したんだろうな……」


 オリオンは空気感染か接触感染どちらか考えていた。だが、空気感染ならば、もっと多くのルークス帝国の者が感染してもおかしくない。

 食料は全て運び込まれた物資から得ている。

 魔法で清潔な状態を保っていたルークス帝国の者が感染するとなると、接触感染の疑いが出た。

 調査によると感染したルークス帝国の者は上陸時に鼠に噛まれていたんだとか。


「確かに、掃除している間も鼠がやけに多かったな。感染経路の可能性を考えて、潰しておく必要がありそうだ」


 オリオンは鼠を見つけたら積極的に殺すようにした。他の者にも同じように鼠の駆除を義務付ける。

 何なら、バーラト王国の者にも鼠を見つけたら駆除するように伝えた。

 不衛生極まりない状況が改善され、栄養のある食事がとれるようになったバーラト王国民たちは元から頑丈な体と持ち前の体力で回復する者が増え始めた。


 疫病の感染者はオリオンたちが上陸してから各段に減った。死者数も減り続けた。

 根本的な原因はまだわかっていない。だが、ドンロン研究所の優秀な者たちが必死に原因の究明に取り掛かっている。


「俺様、もう戻らないと学園で単位が取れなくなっちゃう……」

「オリオン様、行かないでください。お願いしますぅっ~!」


 研究室で感染者の血液から原因を突き止めようとしているスージアがオリオンに泣きついた。

 オリオンの知識と思考力は現場を円滑に回した。人々の間を取り持つ役目を果たした。

 バーラト王国民はオリオンに対する信頼が厚い。他の者よりはるかに待遇が良い。

 バーラト王国民は好き嫌いがはっきりしている。そっけない相手にはとことんそっけない。好きになったらものすごく甘える。

 オリオンが王都を歩けば子供たちが寄ってたかって来て肉団子状態になった。

 疫病から助かった者たちから終わらない感謝を伝えられ、女の子達からモッテモテ。

 だが、現在は学生。本分は勉強だ。ずっとバーラト王国にいるわけにもいかない。

 冬休み期間は過ぎていた。春休み期間に差し掛かっているため、もうルークス帝国に帰らなければならなかった。

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