表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
眠れば眠るほど強くなる、肥満少年の英雄譚  作者: コヨコヨ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/62

無傷

 オリオンは眠っている間にドンロンに到着し、医療機関に駆け込む。見かけは下半身パンツ丸出しの変態貴族だが、公爵家のため手厚く診察された。


「……無傷ですね」

「そんな訳あるものか。もう、大人を二人並べたくらいデカい尻尾に弾かれて腕の皮膚から骨が飛び出すくらい折れていたんだぞ」


 オリオンは左腕を振り回しながら叫ぶ。

 医師は振り回されている左腕に視線を向け、釣られるようにオリオンも左腕を見た。

 冒険者服に血液が付着した痕跡は残っている。だが、皮膚から飛び出していた骨は見当たらず、傷口すらない。


「治っている?」

「治っているも何も、元から傷付いていなかったくらい綺麗ですよ」


 左腕の複雑骨折は、高度な回復魔法を受けたのかと思うほど完璧に回復していた。

 皮膚は水滴同士がくっ付くように傷口がわからないほど綺麗に再生している。

 オリオンは診察だけ受けた。その時、身長や体重、その他諸々健康診断を受けさせられる羽目に。

 公爵家の跡取りが、見た目からしてあまりにも太り気味だったのが医者にとって気になった。だが……、脂肪が多いように見えて体脂肪率一八パーセント。一五歳なら何ら問題ない数値。血液検査も異常なし。視力二.〇以上。体重が重いだけの健康体そのものだった。


 健康診断を受けている間に、アレックスたちにズボンを買ってきてもらった。

 アレックスはオリオンの体に怪我が一切ないとわかると、肩から力が抜ける。疲労が全身に広がる。首が切られる寸前まで行ったが、まだつながっていた。


「リオンの体が何ともなくてよかった。ほんと、助けてくれてありがとう。命の恩人だよ」

「よせよせ、命の恩人だなんて。照れるではないか」


 冒険者の経験を通してオリオンとライアンの友情は類を見ないほど強固になった。アレックスは恐らく五年ほど老け込んだ。


 アレックスとライアンは採取した素材を冒険者ギルドに売りに行く。

 オリオンは聖典式で渡すアルティミスへの贈物を加工するため、ヌータウロスの魔石と角をドンロンの一等地にあるリージェンツストリートに建物を構えた高級魔道具店に足を運んだ。


「このヌータウロスの角を使って、櫛を作ってくれ。そこに、この魔石を取り付けてほしい」


 オリオンは魔道具職人に素材を手渡し、安くない前金を支払う。


「長い髪を綺麗に纏めるための櫛だ。寝癖もさらさらにしてしまうくらい良い品を作り上げてくれると助かる。一二月二五日の夜までに皇帝に献上するつもりで仕上げてくれ」

「りょ、了解しました。謹んでお受けいたします」


 オリオンから素材を受け取った職人は苦笑いせざるを得なかった。

 角から櫛を作るのは可能だが、少なくとも数年単位で乾燥させなければならない。

 受け取った素材から四日で作るのは不可能だった。しかし、相手は公爵家の嫡男。断れるはずもなく仕事を受けてしまった。

 ルークス金貨一枚という大金を受け取ってしまった以上、下手な仕事は職人としてできない。

 皇帝に献上する品となれば、職人の誉れ。生憎、魔石の方は使える。角の部分をヌータウロスよりも高級な品にしてしまえば……と、どうにかこの状況を抜け出す方法を考え続ける。


 オリオンは茹でたジャガイモのようにほくほくした顔で、屋敷に戻った。学園に入る前はドンロン内を移動するとき、馬車に乗っていたが今では自分の脚で移動するようになっていた。


 ☆☆☆☆


 一二月二二日、オリオンはイーグル冒険者ギルドに朝早くやって来た。室内の重苦しい空気を、艶々な肌で感じ取る。

 数日前まで朝っぱらから酒を飲んで祭り騒ぎだったというのに、今日は魔力を流していない魔道具のように止まっている者ばかり。


「リオン、おはよう」


 イーグル冒険者ギルドで泊まっていたライアンが椅子に座りながらオリオンに手を振る。


「皆、元気がないな。どうかしたのか?」

「冒険者たちが集まった討伐隊の被害が結構大きかったらしいよ。イーグル冒険者ギルドだけじゃなくて、他の冒険者ギルドも打撃を受けたんだって。あんな魔物がいるなんて知らなかったとか、これじゃあ金額が見合っていないとか、討伐の依頼を放棄しちゃったんだ」

「なるほど……、だから、数が少ないのか。でも問題ない。すでに魔物の攻撃は読めている。大人数で総力をぶつけ合わせるのではなく、少人数で的確に駆除すればいい。魔石がない魔物は生きていけない。おそらく、昨日より数が減っているはずだ」

「おいおい、あんな目に合ってまだ戦う気力が残っているのかよ。しっかり稼いだんだからもう働かなくていいじゃないか」


 昨日、アレックスは巨大なタルピドゥに殺されかけて気がめいっている。すでに他の冒険者よりも儲けているため、これ以上無茶な真似して魔物を駆除する必要はないと思っていた。

 良くも悪くもルークス帝国のために働いているわけではなく、自分のために金を稼いでいる。騎士ならばルークス帝国の決定に口出しできないが、冒険者は自分たちでやるかやらないか決められるのだ。


「倒す方法がわかっている敵に恐怖する必要はないだろう。そもそも、俺様は金が欲しいわけではない。実戦経験を積みたいのだ。アレックス先生は学生の引率者だろう?」

「アレックス、昔の悪い癖が出ているぞ。引き受けた仕事は最後までしっかりとやり通してもらわないとな」


 ギルドマスターのキアズがアレックスの頭に大きな手を置いた。


「お前が冒険者時代に作った飲み食いの付けは未だに大量に残っている。この意味、わかるか?」


 殺気だった視線をアレックスに向けると、当の本人は冷や汗を掻きながらにっこりと笑う。


「も、もちろん、仕事するに決まっているじゃないか。さ、お前達。今日も魔物の駆除に行くぞ」


 アレックスは急にやる気になった。元気よく立ち上がり、逃げるように走り去っていく。


「僕もスキルの練習がしたかったから丁度いいかな。色々調べたいし」


 ライアンはピンからキリまでの剣を購入し、腰に四本掛けていた。おそらく昨日の素材の売り上げから購入したのだろう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ