表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
眠れば眠るほど強くなる、肥満少年の英雄譚  作者: コヨコヨ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/62

似ている

「自分の命を削って魔法を放った? 魔物がそんな自滅行為するのかよ……」

「魔物の言葉がわからない以上、理由はわからないが自分の寿命を縮め強くなり、減った魔力を補うために狂暴化したと考えられなくはないだろう」

「……なくはないな」


 オリオンの推測はアレックスが否定しようにも、考えられる上でもっともあり得そうだったため、納得するしかなかった。


「今、狂暴化している魔物達は魔力が枯渇して、いずれ死ぬ。街や村は防御に徹していれば、被害を最小限に抑えられるだろう。今回のように群れとなって居住区を攻められると困ってしまうが。まてよ、攻める者がいなくなれば、自然に人がいる場所におびき寄せられてしまうのではないか? このままだと魔物の大群が各地に現れるかもしれないな……」


 オリオンの思考回路は色っぽく踊るポールダンサーのように高速回転。

 魔物が集まり、村や街を壊滅させるスタンピードは、蝗害のようにたびたび発生する。そのたび、ルークス帝国に甚大な被害をもたらす。

 蝗害による食糧不足は植民地からの供給により補えるようになったが、魔物による被害はそうはいかなかった。市民の生活が豊かになった今でも深刻だ。

 予兆を掴むのが少しでも遅れた場合、軽傷ですまず何万人と被害者を出した苦い過去もある。


「これほど魔石を持たない魔物が増えるなど、自然現象であり得るのか? 冬場だから動物や魔物の数が減って食い物に困ったのか? これは調べる必要がありそうだ。他の魔物も駆除し、魔石があるかどうか調べるぞ」

「なんか、リオンが頼もしく見える」

「頭は良いと思っていたが、ここまでとは……」


 ライアンとアレックスはオリオンの考えに圧倒され、彼の話を飲む。

 帰る時間を考えると、あと一時間ほど調査できた。

 だが、時間内にロッドドッグ以外の魔物は見つからず、ドンロンに引き返す。


 オリオンたちはすぐにイーグル冒険者ギルドに駆け込み、今回の情報を提供した。

 最悪、スタンピードが各地で起こる可能性があると、魔物の体内の魔石がない状況から説明し、受付嬢を青ざめさせる。その表情は強姦を受ける前の女のようだった。

 受付嬢はオリオンたちの情報を手早く書き留め、上階で書類仕事に追われるギルドマスターのキアズに通達した。

 キアズは受付嬢からのメモを受け取り、内容を確認するとすぐに一階に降りる。


「アレックス、来てくれていたのか」

「まあな。って、今はそれよりも、魔物がおかしい状況を解明する方が先決だ」


 オリオンとライアンは東の森で魔物を狩って来た冒険者を探す。ロッドドッグ以外の魔物から魔石が出たかどうか尋ねる。

 多くの冒険者は頭を横に振り、深いため息をついた。

 狂暴な魔物を命からがら倒し、一攫千金を狙えたと思いきやタダ働きだったと突きつけられる絶望ときたら、酒をがぶ飲みする気も起きない様子だった。


「やはり、魔物の魔石がことごとく消えている」

「それって、ルークス帝国にとって不味い状況なんじゃ……」


 魔物の魔石は、ルークス帝国にとって貴重な外貨獲得の手段である。それが採れなくなるということは、貿易に使う資金が枯渇するのと同じ意味を持つ。

 いくら植民地とはいえ、無償で物資を提供してくれるわけではない。ルークス帝国も、友好関係を維持するために配慮しているのが現状だ。

 資源に乏しいこの国にとって、魔石は他国の市場に左右されず大きな利益を得られる唯一の資源である。その収入が途絶えれば、財政に深刻な打撃を与えるのは避けられない。


「確かに不味い状況だ。にしても、ルークス帝国を落とし入れるのに出来過ぎた状況だな……」


 オリオンは顎に手を当て、思考を巡らせた。魔物の狂暴化、魔石の消滅、何百年と続く歴史の中で同様の事件がないか調べる必要があると考えつく。

 すでに目星がついていたが、まだ確証が持てなかったため調べてから話すことにした。

 アレックスとライアンを冒険者ギルドに残し、国立図書館に足を運ぶ。彼は公爵家の嫡男のため機密書類の類も閲覧できる許可がすぐに下りた。


 オリオンは魔物の状況が歴史書で読んだ被害状況に似ているとにらんだ。過去、ルークス帝国が他国と戦った際の資料を読み漁る。


「あった、リプバリク王国がガリア王国に使った毒物。これだ」


 ルークス帝国と肩を並べるほど国が発展しているリプバリク王国は優秀な人材が多く、野心も高い危険思想を持ち合わせた国家だった。

 海で隔たれているとはいえ、人類で最も優れた部族として他国を蹴落とす勢いで発展した。

 その噴火の如く煮えたぎる力に危機感を覚えたルークス帝国は当時、リプバリク王国の脅威に怯えていたガリア王国と手を組み、戦争した。

 実に激しい戦争となり、戦死者の数は今までの戦争で過去最多となっている。

 その時、リプバリク王国が作り出した毒物が戦争で用いられ、ガリア王国の食物が大打撃を受けた。

 効果は葉や茎、根は急激に成長するのに実や種は一切実らずにすぐに枯れてしまう。家畜も被害を受け、激しく狂い、子をなすことなく死滅した。

 あまりの威力と非人道さに早期に決着をつける必要があり、ルークス帝国の海軍が猛威を振るった過去稀に見る最悪の戦争だった。


「そっくり過ぎる。だが、リプバリク王国とすでに和解し、友好関係を結んだはず。それでも、あの国の民ならば、延々と憎悪を煮えたぎらせていても不思議ではない」


 オリオンは偶然にしては出来過ぎていると判断し、すぐさま父のもとに直行した。冒険者服が泥や雪塗れになっていてもお構いなしに綺麗な屋敷内を走る。父の書斎の扉を吹き飛ばす勢いで開け放つ。


「父上、話があります!」

「お、おお、オリオン、帰っていたのか。いきなり開けて驚かせるんじゃない。ちんちんがヒュってなったぞ」


 ポードンは今日も今日とて大量の領土の資料と税金の計算、その他の問題に追われ、今にも死にそうな蒼白な顔をオリオンに向ける。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ