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眠れば眠るほど強くなる、肥満少年の英雄譚  作者: コヨコヨ


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悩み事

「さて、今日で期末試験が終わり、来週から冬休みに入る。ただ帝国内にある各所の冒険者ギルドが狂暴化した魔物たちの被害にくれぐれも気を付けるようにと学園に通達してきた」


 ルークス帝国はイーグル、スコッチ、ウェーズ、北アイズにわけられる。

 帝都ドンロンとドラグフィードはイーグルの区内にある都市だ。

 ルークス帝国が四つの王国だった時代は互いを敵同士と認識し、沢山の血が流れた。

 その名残で各所を統治する組織が置かれている。その団体が魔物の討伐や護衛などを担うならず者集団、冒険者ギルド。

 貴族たちは護衛に騎士を付けるため、あまり馴染みがない。平民たちにとっては、なくてはならない存在である。

 魔物が増えすぎないように日々討伐に勤しんでいるのだ。


「えっと各所の冒険者ギルドって具体的にどこですか?」


 アメリアは帝国各地に道を持つバークレイズ商会が冒険者を多用すると知っていた。商人たちが心配になり、アレックスに質問した。


「イーグル、スコッチ、ウェーズ、北アイズにある冒険者ギルド全てだ」

「えぇ……、そ、そんなことって、ありえませんよ。一部だけならまだしも、全地域でなんて」

「だから、ご丁寧に招集もかねて通達してきたわけだ」


 冒険者から足を洗って数年経ったアレックスといえど、帝国全土で魔物の警報が出る事態は初めて聞いた。冒険者の時ですら聞いた覚えがない。明らかに異常事態だった。


「ドラグフィード学園としては遠い地区に家がある者の帰省を推奨しない。まあ、ドンロン程度の距離ならば、帰っても問題ないと思うが、護衛は必要だ」


 各冒険者ギルドは魔物と戦う精鋭部隊だ。その者たちでも手を焼いている状況。帰省を推奨できるわけがなかった。


「帰省しても構わないが、学園は帰省の際に起こった事故の責任を取れない。自己判断で頼む。皆はもう、成人しているんだ。自分の頭で考えてくれ」


 アレックスは連絡事項を終え、深くため息をついた。冒険者時代に成績優秀だった自分のもとに招集が掛からないわけがなく、イーグルの冒険者ギルドから「応援に来てほしい」という文がギルドマスターから届いていた。

 チアガールのように踊ってスカートからパンツをチラつかせるだけなら喜んで女装してやってもよかった。だが、そういう意味ではなく前線に出てくれという意味に他ならない。危険極まりないが金の羽振りは良かった。

 万年金欠のアレックスにとって悪い話ではない。今年は魔物を狩る天才児がいる。そいつの手も借りれば一儲けできそうだな、と甘い考えを抱いていた。

 放課後、生徒たちに連絡を終え、橙色髪の少年を教室の前に呼んだ。


「ライアン、少し頼みがあるんだが聞いてもらえないか」

「魔物の討伐ですか?」

「おお、話が早いな。スコッチの冒険者ギルドで噂されていただけのことはある」

「まあ、お金を稼ぎまくりましたから」

「頼む、その手腕をイーグルでも振るってくれ。金は弾む」


 アレックスは生徒に向って両手を握りしめながら、情けなく頭を下げた。

 一人では荷が重い。魔物を狩った経験のあるライアンとならば問題なく戦えると思った。多少、ブランクがある。実戦経験でいえば、ライアンの方が鮮度が高い。


「うぅん……、ちょっと、考えさせてください」

「ああ、わかった。良い返事を待っている」


 ライアンは金欠でもなければ、魔物と戦いたい気分でもなかった。ただ、入学して三カ月近くたつ。自分の成長を試す機会が欲しいと思っていたころだった。

 オリオンとの練習でスキルをある程度操れるようになった。威力を押さえれば剣を弾き飛ばす程度まで弱められる。ただ、逆にどこまで威力を上げられるのか知りたかった。

 弱い魔物をばらばらにできるだけの威力が出る以上、人間相手に本気を出して戦う訳にいかない。スキルの練習がやり放題で報酬が貰えるとなれば危険ということ以外良いことばかりだった。それでも、あと一歩踏み出せない。


「アルティミスから聖典式パーティーへの招待状を貰ってしまった以上、必ず行かなければ。何かしら贈物が必要だな。花ではありきたり過ぎる。宝石も彼女は沢山持っているはずだ。ううむ、彼女が喜ぶ贈物となると……。毎度悩まされるなぁ」


 オリオンは寮の食堂で大好きな婚約者のアルティミスへの贈り物を熟考していた。

 相手が姫であるがゆえに贈物に悩んでしまう。なにを貰ったら嬉しいのか見当がつかない。

 考えれば考えるほど沼に嵌る。変な品を渡せば、さらに嫌われてしまいかねない。慎重に贈物を選ぶ必要があった。

 ウンウン唸っていると、同じくウンウン唸っているライアンが隣に座った。互いの話に頷き合っているように見えてくる。


「実は、聖典式の贈物を考えていて」

「実は、魔物の討伐隊に参加するか考えていて」


 オリオンとライアンは互いの悩みを打ち明けた。まったく関係がなさそうな二つの内容は、二人の話合いにより一つにまとまる。


「俺様が初めて倒した魔物の魔石を使ったネックレスはどうだろう。世界に一つだけしかない逸品になるぞ。人助けしてきたんだっ、と言って恰好もつけられる。強さの照明にもなるじゃないか!」

「僕、シアン流斬が苦手で攻め一辺倒になってしまうから魔物の討伐にオリオンが付いてきてくれるなら、凄く心強いよ。一緒に頑張ろう」


 オリオンは纏まった話をヴィミに言いに行く。

 来週に期末試験の結果が出た後、冬休みに入る。そこで魔物の討伐という名の実戦練習に向かうと軽い気持ちで言い放った。

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