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眠れば眠るほど強くなる、肥満少年の英雄譚  作者: コヨコヨ


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14/62

レベル二

 オリオンは重たい体を動かし、パーティー会場から抜け出した。

 入り込んだのはドラグフィード学園にある巨大な図書館。

 強くなる必要がなかった彼は強くなる方法を覚えようとしてこなかった。そのため、強くなる方法に関して頭の中は空っぽ。

 どうしても強くなりたかった彼は、どうしたら強くなれるのか、とにかく勉強する。

 生憎、勉強はスキルの影響で苦にならなかった。覚えようとする行為が少し苦しいくらい。

 だが、アルティミスを取られてしまう苦しみに比べれば、屁でもなかった。

 剣術と体術の本を図書館で借り、寮に戻って読みふける。


「オ、オリオン様、体調に差し障りますから、早めに寝てくださいね」


 ヴィミは、見た覚えがないほどやる気を出しているオリオンに動揺した。

 何があったのかわからないが、必死に強くなろうとしている姿勢を見せられ、応援せざるを得ない。


「ふむふむ。強くなるために、運動、食事、睡眠が何より重要と。食事と睡眠は完璧だ。ならば、後は運動をこなすだけだなっ」


 単純な性格のオリオンは本の中から本当に大切な部分だけを抽出した。

 一気に集中。八冊の本を読み切ったころ、すでに外は朝だった。

 人生で始めての徹夜だった。睡眠を疎かにしてしまった事実を受け止める。

 本で読んだ通り、沢山食べて運動して眠れば強くなれると信じ込み、即座に実行。

 朝、昼、晩、腹がはち切れそうになるほど料理を食べる。体が動かなくなるほどランニングをこなす。泥のように眠る。

 以前のオリオンなら、絶対に運動などしなかった。

 主の姿を見て、ヴィミはすぐに諦めるだろうと思っていた。

 オリオンのスキルは戦闘で使えるような代物ではない。

 ならば強くなったとしても戦闘系のスキルを持っている者に勝てるわけがない。どれだけ頑張っても、戦闘系スキルを持つ者と持っていない者の差は、努力でどうすることも出来ない。

 そのようなことはスキルがないバーラト王国出身のヴィミですら知っている。

 バーラト王国の者は身体能力がずば抜けていた。ルークス帝国とリプバリク帝国が戦争した時、元々リプバリク帝国に属していたバーラト王国も戦争に参加。しかし、多くの死者を出し、大敗した。

 神からの寵愛を受けている者たちはそうでない者と実力の差がありすぎる。勉強ができるのだから、わざわざ強くなる必要もないのにと思わざるを得ない。

 ただ、やる気を出している主に「無駄だから、頑張る必要ありませんよ」と伝えられなかった。


 ☆☆☆☆


 体の様子がおかしくなってきたのは、ドラグフィード学園に入学してから一ヶ月が経った頃だった。一〇月になり、寒さが少しずつ厳しくなってくるころ。


「なんか、ちょっと痩せたか?」


 オリオンは自分で履けなかった靴下が履けるようになった。食べる量は変わっていない。それなのに痩せた。


「筋肉はまだついていないな。やはり、自分の体を変えるのは難しい」


 沢山食べて、毎日走り、剣を振って、眠れるだけ眠る。そんな生活を続けられている自分を姿見で見つめ、胸を張る。


 一〇月八日、ベッドの上でいつも通り眠りについたころ、瞼の裏側に『完全睡眠:レベル二:記憶力上昇、身体能力の定着率上昇。代謝上昇』という文字が見えた。

 眠る瞬間だった為、よく理解できていなかった。ただ、自分のスキルについて理解するのに、大して時間はかからなかった。


 いつも通りすっきりと目覚める。日差しが出る前に体を動かす。朝に肉や魚、卵が挟まったサンドイッチをたらふく食べる。

 眠気を感じぬまま勉学に励む。黒板の文字を紙に掻きだすだけで覚えた。

 計算問題も計算過程を書く必要がないほど脳内で処理できる。以前までより、記憶力が増した。

 それは、今までの効果の延長線に過ぎず、勉強時間がさらに短くなる。

 使える時間が延び、得した気分になっていたが、それ以上に嬉しい効果が増えた。


 ☆☆☆☆


 体育の授業、今までルークス帝国の剣術を習うまでの基礎練習ばかりだった。

 入学から一ヶ月経ち、ようやく剣術の指導が始まった。


「ルークス流剣術は三種類の基礎型を覚えたのち、八種類の型に派生させられる。得意不得意があるだろうが、三種類の基礎型の内、二種類だけでも扱えれば十分実戦で使えるようになる。全てを真面に扱える剣士はもう存在しないと言われているから、気負い過ぎるなよ」


 アレックスは木製の剣を握りながら三種類の基本型を披露する。

 ルフス撃斬、マゼンタ流斬、フラーウス連斬。

 実戦で使わず、形だけならそつなくこなせる。その姿を見た生徒たちから拍手と歓声が上がった。

 冒険者上がりのアレックスが貴族ばかりが集まるドラグフィード学園で教鞭を振るえる理由が、剣術の多彩さだった。

 今や騎士の中でも一二種類の剣技を振るえる者はいない。そんな中、彼は一一種類の剣技を扱えた。


「まず、自分が扱いやすい基本型を見つけてもらう。これはもう感覚だ。これだっと思った基本型を集中して練習するように」


 生徒たちは大きな声で返事。それぞれ基本型を試す。


「マゼンタ撃斬っ、シアン流斬っ、フラーウス連斬っ!」


 オリオンは気迫だけなら、誰にも負けていない。ただ、実にへなちょこの動きで、豚が尻を振っているように見える。

 しかし、当の彼は真剣そのもの。

 剣術を覚えられれば魔物と戦える。強くなれる。そんな単純な考えの下、何度か剣を振るってみるが、これだっとならない。


 一方、他の男子や女子たちから尊敬の眼差しを向けられているライアンは、


「マゼンタ撃斬っ、フラーウス連斬っ!」


 二種類の基本型を完璧にこなした。

 その動きはすでに実戦で使用経験がある者の所作。

 アレックスも一年生でここまで扱える者は恐らく国中どこを探してもいないだろうと思ってしまうくらい体に剣術が身についている。

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