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眠れば眠るほど強くなる、肥満少年の英雄譚  作者: コヨコヨ


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一肌脱ぐ

「もちろんです。私、オリオン様のためなら、一枚でも二枚でも脱がせていただきます」

「本当か。じゃあ、早速頼む。上着を一枚脱いでくれっ」


 オリオンはニヤリと笑う。ヴィミが身に着けているメイド服を指さす。

 その瞬間、ヴィミは嵌められたと察したが、すでに後戻りできない。

 生憎、一番上に白いエプロンを身に着けていたため、あまり変わり映えしない。


「その恥じらいながら脱ぐ姿……、実に良いっ」


 オリオンはヴィミに向って走り出す。

 そのまま、抱き着いてしまおうとする。

 だが、ヴィミは逃げる。獣族のため、足はべらぼうに速い。


 ヴィミは主がせっかくやる気になったのだから、この機会を逃してはならないと思った。

 オリオンが走るのを止めそうになると、メイド服の第一ボタンを外す。

 鎖骨がチラリと見えるくらい開いた。

 男を誘惑するように尻尾の先で主の顎をなぞる。


「ぽっ、ぽっぽ~」


 オリオンは石炭を大量に入れ込まれた機関車の如く興奮が最高潮に達した。

 ヴィミの想像を超える速度で脚を動かし、背後から抱き着くことに成功。

 だが、限界を超えたため、女に抱き着けたという喜びよりも睡眠欲が勝る。


 ゆりかごの中にいるような空間。それは母に抱かれ、優しい温もりが身を包んでいると錯覚させるほど心地よい。

 お湯に浸かっている時の身が温まる感覚が全身に広がる。筋肉が解れる。

 花畑にいるような甘い香りが鼻を擽った。とくんとくんと鳴る鼓動で安心が増す。


 目を覚ますとベンチの上に横たわり、ヴィミの腕に抱かれていた。

 花壇に咲く秋の花々、広い空、整っている綺麗な彼女の横顔、頬に当たる柔らかいおっぱいの温もりが、寝起きの真っ新な頭を侵食する。


「オリオン様、お疲れ様でした。よく頑張りましたね」

「ううむ、もっと褒めてくれてもいいぞ……」


 オリオンは顔を横に傾けた。ヴィミのおっぱいに顔を押し付ける。彼女も走っていたからか、汗のにおいが漂う。

 父が飲んでいたウイスキーを嗅いだ時のように頭がふわりとした。


「ちょ、オ、オリオン様、あんまりにおいを嗅がないでください。いま、汗ばんでいるので、臭いと思いますから」

「臭い? どこが……。俺様はヴィミのにおいが大好きだぞ」


 ルークス帝国民とバーラト王国民の違いは様々ある。

 その中でも、獣由来の進化を遂げているバーラト王国民のにおいはルークス帝国民にとって悪臭と名高い。

 それを知っているが故に、ヴィミはオリオンが何を言っているのか理解できなかった。

 長らくルークス帝国にいるため、自分の体臭が他の者より臭うことくらいすでに知っている。だというのに、この豚はこのにおいが大好きだという。太りすぎて鼻までおかしくなったのかと疑った。


 オリオンはいつも以上にヴィミのおっぱいを堪能しても、彼女から放り出されない状況に困惑した。

 匂いが好きといったが、彼女のブラジャーや下着などを定期的に盗み、くんかくんかしていたから慣れたといったほうが近いのかもしれない。


 ――にしても、あんなに走ったのに、体が軽いな。まだ、動けそうだ。


 自分の体調が良好だと理解すると剣術の練習に使われる木剣を手に取り、素振りをこなす。

 島国であるルークス帝国に海を渡って攻めてくる敵国は今のところいない。

 産業革命によってもたらされた製鉄技術により生み出された戦艦を保持する海軍が強すぎて攻めようとする国は各段に減った。

 こちらから攻めるという行為も取らない。


 ルークス帝国は海を隔てた先にある大陸で力を付けている国を見つけると、他国と協力し鎮圧することによって戦争に確実に勝利し、植民地を増やした。

 敵国の民を蹂躙することなく、力だけを奪い、不満を最小限にし、大量に作り出した産物を貿易することによって莫大な利益を得ている。

 そのため、帝国は他国と比べて比較的安定していた。だが、その中でも帝国民を脅かす存在がいる。

 それが魔物だ。獣よりも狂暴で、農作物や人々を襲い、年間数万人規模で被害が出る。

 魔物の生体は未だに謎が多いが、希少種の魔物から得られる素材は絹や宝石の類と同等の価値があった。

 資源を植民地に頼る帝国の中で唯一といってもいい資源の一つである。

 それを狩る者たちを冒険者などと呼んでいた。


「リオン、性が出るね。素振りしているところ、初めて見たけど」


 勉強を終えたライアンが寮から裏庭に出て来た。剣の訓練がしたくてたまず、オリオンの素振りを見て、顔をほころばせる。


「ライアは、魔物と戦った経験があるか?」

「あるよ。僕の家は田舎にあるから、魔物の被害が多いんだよね。父さんと一緒に、よく狩っていた」

「へぇー、ライアン様は魔物の討伐経験があるんですか。だから、どことなく凛々しく見えるのですね。納得しました」

「家が貧乏だったから、お小遣い稼ぎにもちょうどよかったよ。学費は僕が自分で貯めたんだ」

「ぐぬぬ、ライアは、モテるべくしてモテているわけか……」

「オリオン様、おそらく、ライアン様を普通の学生と同じように見てはいけないかと……」


 魔物を一体や二体倒しても、入学金に程遠い。

 ヴィミはライアンが想像を絶する数の魔物を討伐していると察した。

 生きた魔物を見た覚えすらない主を宥める。

 だが、このような男の中の男がアルティミスと同じクラスにいる事実を突きつけられてしまっては、オリオンも黙っていられない。

 彼女の賢さは十二分に理解している。

 彼女が自分と、ライアンを比べた時、確実にライアンの方がいい男と言うと思った。


「ライア、アルティミスはお前に渡さないぞっ。うおおおおおおおおおおっ」


 オリオンは大好きな許嫁が自分よりもカッコよくて強くて男らしい男に取られたくない一心で木剣を振った。


「ははは、リオンは姫が大好きなんだね……」


 オリオンの熱気に押されたライアンは、苦笑いを浮かべる。共に木剣を振るった。

 その差は素人と熟練者ほどの差があるものの、やる気だけはオリオンが勝った。

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