第8話
再会
澪は、再び夢の世界にいた。
今度の舞台は、どこまでも静かで白く霞む景色。
霧が柔らかく立ち込めるその場所に、ひとりの青年が静かに佇んでいる。
「よう」
その声は、やさしくて懐かしくて、胸がきゅっと締めつけられるように、泣きたくなる響きだった。
澪はゆっくりと、その青年へ歩み寄る。
ふるえる声で、呟いた。
「……そうちゃん」
その名前を口にした瞬間、胸の奥に溶けるような何かが零れ落ちた。
「待ってた」
そうちゃんの言葉が、静かな空気に染み渡る。
「ごめんね……ずっと、忘れてた」
澪の声には、後悔と切なさが交錯していた。
「いいさ。思い出してくれただけで、もう十分だ」
そうちゃんは優しく澪の髪を撫でる。
その温もりに、澪の涙が溢れた。
「そっちは、もう大丈夫だな。ちゃんと生きていける」
「うん……でも、あなたがいないと寂しいよ」
澪の胸に浮かぶ、ぽっかりとした穴はまだ埋まらない。
「俺はいつもそばにいる。蝶になって、鳥になって……おまえを見てる」
そうちゃんの言葉は、優しい約束のように澪の心に響いた。
澪は涙を流しながら、彼の腕に抱きしめられた。
それは夢の中の再会。
けれど、確かに、永遠に続く約束だった。