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第5話
魂の約束
それは、まるで前世の記憶が目覚めていくかのようだった。
澪が見る夢は、日に日に鮮明になっていった。
夢の中で、彼と何度も出会う。
夜の町を、ふたり並んで歩く。
足音が、しんしんと降る静寂に溶けていく。
遠くで火の手が上がり、人々の声が混乱に揺れるなか――
彼は、いつも澪の手を強く握っていた。
「絶対に、離さない」
その言葉に、揺るぎない決意が宿っていた。
けれど、彼の瞳はどこか寂しげで、笑みの奥に切なさを滲ませていた。
夢なのに。
目覚めても、その温もりが手のひらに残っている気がした。
澪の胸には、ぽつんと穴が空いたような痛みが残る。
「……そうちゃん」
目を閉じ、そっと胸に手を当てる。
なぜこんなにも切ないのだろう。
わからない。でも確かに感じる。
彼と交わした言葉、触れ合った感情――
それは単なる夢の記憶ではない。
まるで、魂に刻まれた約束のように、静かに、深く澪の中に積み重なっていく。
それは、過去から今へと繋がる光。
まだすべては思い出せないけれど、澪の心は、確かに彼を「知っている」と語っていた。