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カタルシス  作者: 翠玉
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記録3 前兆

練習場では基本的に体術など清器を使わずに練習する。指導者と来ていない者も勿論、一人で練習できる。清器を練習で使いたい場合は屋上にある清器使用練習場に行く。

今回は体術だけなので、二人が来たのは普通の練習場だ。


「真白から、かかって来ていいぞ。よーい…始め!」


先手の真白は、しっかり足を踏み切り結晶に飛びかかる。でもこれはフェイクだ。飛びかかり、結晶に隙を見せたと思わせ、攻撃するのが真白の考えだ。

もう一度思い切り踏み切り、結晶の頭上を飛び越え、一回転して受け身を取り着地する。


(一歩遅れて振り返る間に蹴りを…!)


一歩遅れ、振り返るところを狙う真白に反して結晶はある程度、真白の、この行動を予測していた。

故に一歩遅れることなどない。

着地した真白の隙をつき、両腕を掴む。

片手で両腕を持った後、真白の足首を軽く蹴る。

真白がふらつくのを支え、ゆっくり倒し馬乗りになった。結晶が抑えるのが上手く、もう真白は動くことができない。


「降参します…流石ですね」

「だろ?いつもはヘタレだなんだって言われてるけど、これでも特別級下官(とくべつきゅうげかん)だからな」


特別級下浄化官。略して特別級下官。五つの浄化官の階級の中の上から二つ目の階級だ。

下から三級官(さんきゅうかん)二級官(にきゅうかん)一級官(いっきゅうかん)

結晶の階級の特別級下官、特別級上官(     じょうかん)となっている。

結晶は上から二つ目というので、中々の強さと言える。


「東京の中ではそれなりに強いんだよ」

「東京の中″では”ですよね?」


ニヤリと笑いながら真白が結晶を揶揄う。


「年上を揶揄うとはいい度胸だな…」


そんな話をしていると、結晶がこれが本題だ、とでも言うように真剣な表情で話題を切り出して来た。


「染稀。記憶は…戻っていないか?」


染稀は一瞬、何のことだろうかと思ったが、すぐに思い出し、下を向きながら話し始めた。


「記憶と関係があるかわかりませんが…最近、人が何故か目の前で死んでいく夢を見ます」


結晶は驚いた。記憶のない染稀がどこまで思い出したのか、知っているのかわからず、少し焦った。


「でも、誰かわからなくて近づこうとしたら体が動かなかったんです。だけど夢の中なのに自分の体が痛いのがわかりました…」


そうか、と普通の返事をし、結晶は平然を装った。




ーーその後も稽古を続け、近くにあった時計の針は八時十七分を指していた。

そろそろ終わろうと結晶が言い、二人の稽古は終了となった。


「結晶さん。ありがとうございました。おやすみなさい」

「ああ、おやすみ。しっかり寝ろよ」


結晶は真白が寮に歩いていくのを、真白が見えなくなるまで見ていた。

真白の後ろ姿を見て、ふとした時に居なくなってしまいそうだなと、不吉なことを結晶は思った。

結晶は、シャキッとしようと頬を思いっきり叩くと自分も寮に戻ろうと歩き出した時、少し先に人影が見えた。


「あ、孝之(たかゆき)さん。お疲れ様です」

「あ!晃介じゃん!久しぶりだなぁ」


結晶が挨拶した領家(りょうけ)は爽やかな笑顔を振り撒く誰からも好かれている男性だ。

そして数年前、結晶の指導者だった。


「疲れ切ってるじゃん。今日の仕事、大変だった?」


真白に稽古していたことを言うと、領家は嬉しそうに、にっこりと笑った。


「そっかそっかぁ。あの子がもう入ってくる頃か。早いなぁ。歳とっちゃって、やんなっちゃうよ」


領家はそんなことを言いながら、「晃介も指導者なんて凄いなぁ」と涙を拭うふりをした。

涙は嘘だが、言葉は本音である。そんな領家に結晶は先程の真白との会話を話した。


「染稀が、夢で見るらしいんです。あの時の光景」


領家の表情が一気に変わった。結晶と同じように動揺が見られる。


「完全に記憶が戻ったわけじゃないだろ?なら大丈夫だって!」


領家は結晶を落ち着かせるために大丈夫と口では言っているが、内心、冷や汗が出そうなほど動揺している。結晶はそれに勘づいてしまったため、余計に表情が暗くなる結果となってしまった。


「記憶が戻るのは、時間の問題のような気がします…」


下を向いて結晶が言う。領家は自分に相談してくれた結晶の不安を取り除いてやれないことにむしゃくしゃしていた。


「…大丈夫だ。その時はその時って割り切ろう。また相談してくれ。抱え込んだら駄目だぞ?また酒でも一緒に飲みに行こう!」

「…はい!」


そう言って二人は別れ、それぞれの寮に戻った。真白にあんな光景を思い出させたくないと同じ思いを抱えて。




ーー次の日の夜中二時。六班は前日、会議をした調査に来ていた。そして今、狙いの廃墟ビルの目の前。


「今から調査を開始する。俺は一人で動くから、四人はペアで動いてくれ」


ペアは真白と硯、美鈴と極夜のペアになった。

廃墟ビルは三階まであり、一階が美鈴、極夜ペア、二階が真白、硯ペア、三階が結晶のみの体制だ。


「あくまで調査だ。無理に浄化するな。じゃあ行くぞ!」


廃墟ビルからは今のところ変な感じはないが、近隣住民から夜遅く、だいたい夜中に物音がするとのことで警察に連絡があったらしい。その証言から警察が恨者ではないかと推測したらしくPPIに連絡が入った。


「名月さん…!」

「うん、居るな」


二階へ行った二人は早速、恨者を二人発見した。

真白はメモ用紙を取り出し、人数を記入する。ビルから出た時、五人で集計するためだ。


「いきなり二人も居ましたね」

「これは結構居るタイプだな」


いつもはおちゃらけている硯だが、仕事の時は頼りになる。やる気スイッチが入るらしい。

その後も追加で四人見つけ、二階には合計六人いることがわかった。

だが調査なので、今回は浄化しない。一旦、放置だ。見た目はなんとなく覚えておく。調査の後は毎回似顔絵を書くからだ。


「ここが最後の部屋ですね」

「ここに居なかったら、ビルから出ようぜ」


そう言いながら確認した最後の部屋は何もなかったため、二人はビルから出た。



二人がビルから出た頃にはビルの外に三人がいた。一番最後だったようだ。


「私達は三人見つけた」

「俺達は六」

「俺は十二だ。三階が一番多いな。階数が上がることに人数が増えてる」


結晶が合計二十一人発見と書類に書き、調査は終了となった。


「なんかあっさり終わったなー」

「あっさり終わった方がいいでしょ?平和ですよ平和」


五人で車のあるところまで歩いていると、後ろから嫌な足音が聞こえた。誰よりも早く結晶が構えると、ビルの中から誰も姿を見ていない新たな恨者が十五人ほど飛びかかって来た。


「浄化を開始する!」


結晶は自身の弓矢型の清器を取り出し、打ち始めた。他の四人も自身の清器を取り出す。真白は女性の恨者と目があった。こちらに向かってくる恨者の呪臓を突き刺し、前日、結晶と稽古をしたときのように頭上を飛び越え、今度は隙のないように振り向き、二本のクナイ型の清器を使い、真ん中から外に向かって、根こそぎ呪臓を取り除いた。


「あぁぁぁぅゔ…」


恨みがなくなり、消えていく恨者に手を合わせ、後ろを振り向くと、もう浄化が終わっていた。

先輩達は流石だと真白は思う。

結晶は書類にビルから出ると姿を見ていない恨者が十五人ほど現れた、階級はC〜Bと付け足した。

五人それぞれの入れ物に清器をしまい、結晶の運転する車に乗り、帰った。

だが真白が吐き気がすると訴えたため、近くにあったコンビニに寄り、体調が良くなるのを待ってからまた車を走らせた。

第三回カタルシスキャラクタープロフィールのキャラクターは!!硯さんです!!


名前:名月硯 メイゲツスズリ

身長と体重:180.5cm.69.4Kg

誕生日:8月15日

28歳 一級官 六班所属、副班長

鉄扇型の清器に火をつけて使用している


ブックマーク、下の評価を5つ星、よろしくお願いします!次回《記録4 秘密》お楽しみに!

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