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五十七、日常

「ロジュ様、おはようございます」

「おはよう、リーサ」

「ロジュ様、おはようございます」

「おはよう。ラファエル」


 とある日。ロジュは大学へと向かう。彼の何でもないような日常。それがどれほど幸福なものであるか、ロジュは頭の片隅で感じていた。

 じんわりと温かいものが、ロジュの心に広がる。彼は、もう孤独に絶望していた頃の彼ではない。


 いつまで、この幸せが続くのだろうか。人の感情は流動的だ。明日には変わっているかもしれない。仮初めに過ぎないかもしれない。

 それでも、ロジュは今の自分の置かれている状況をぼんやりと考える。

 陽だまりの中に佇んでいるような、優しい空気を浴び続けられているような、そんな気分だ。


「ロジュ様、どうしました?」

「何か、心配事ですか? ウィリデ兄上に、ロジュ様が悩んでいるようならすぐに連絡するように、と言われていますが……」


 黙り込んだロジュをラファエルと、リーサがのぞき込む。ロジュは微笑を浮かべた。


「何でもない。大丈夫だ」


 ロジュの穏やかな笑みを見たラファエルとリーサも安堵の笑みを浮かべる。


「ラファエル、今日は何の授業があるんだ?」

「えっと、僕はですね……」


 これだけは間違いなく言える。今のロジュは孤独ではない。



 彼が孤独を感じていなかった時間は、彼の人生の幾分にあたるのだろうか。

 彼の今までの人生においては、孤独でなかった時間はごく僅かなものだっただろう。孤独は彼の時間の大部分を占めていたかもしれない。ロジュに孤独は付き纏っていた。

 しかし、未来はどうだろうか。ロジュ・ソリストの未来に孤独が際立つかどうかは、ロジュ自身とロジュの周囲の人々の問題であろう。


 彼が、孤独を感じていなかった時間は幾分か。時間が経つにつれ、孤独でない時間が増えれば増えるほど、その割合は大きくなっていくことだろう。

 結論が出るとすれば、ロジュの人生が終わるとき。今はまだ、結論づけるには早い。





いくつかの謎を残したまま、第二幕は閉幕。 

  第三幕へと続く。


ここまで読んでくださり、ありがとうございました。一度ここで区切らせていただきます。

第三幕は執筆中となります。しばらくの間お待ちください。

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