一、ロジュ・ソリスト
彼が孤独を感じていなかった時間は、彼の人生の幾分にあたるのだろうか。
肩に届きそうなくらいの深紅の髪、そして藍色の瞳。彼の名前をロジュ・ソリストという。彼はソリス国の第一王子でありながら、王位の第一継承者である王太子には指名されていない。通常なら十歳くらいの頃に指名されていているのが通常だ。しかし、現在、ソリス国ではまだ決定してない。
ロジュには王としての素質がなかったのか。そうではない。足りなかったとすればただ一つ。
赤い瞳。ただそれだけ。
ソリス国の慣例として「王となるものは赤の瞳を持つこと」というものがある。
ロジュの目は藍色だった。それに対し、ロジュの弟である第二王子、テキューの瞳は鮮やかな赤。
どちらが王に相応しいのか。適任者が複数いるときに生じるのは、
王位継承争いだ。
ロジュにとっての最大の不幸は何だったのだろうか。瞳の色が赤ではなかったことか。瞳の色が赤の者しか王位を継承できないという慣習か。あるいは彼自身の能力が高すぎたことか。
どれが悪いとかではない。全ての条件がそろってしまったおかげで、彼は「王に相応しいはずなのに王になれない」と言われている。