俺の日常
「なぁ〜に、寝てんのよっ!」
「ごふっ!何しゃがんだ!」
気持ちよく寝ていた俺は、急に腹の上に衝撃を覚えて飛び起きた。俺がさっきまで寝ていた場所にはひとりの女子中学生が座っている。
こいつの名前は、鈴木咲子。俺の幼馴染で、合気道の達人。小学生の夏祭りのとき、女だからって調子に乗った
中学生の不良を3人病院送りにしたことで、結構名が知られているやつだ。
「化け物女がこんなとこで何してやがんだ?授業は?おっと…危ねぇな。やっぱり化け物かよ。」
「化け物扱いすんなって言ってんだろ!山﨑先生が2時限目始めるから呼んでこいって言われたんだよ。さっさと来いよ。」
「へいへい。」
俺は仕方なく、咲子について教室まで向かった。
教室では、山崎先生が教卓に座って雑談をしていた。
山崎先生は、国語の先生だが、柔道をしていた経験と過去に不良だった経験から不良生徒に寄り添った教育方針で、誰からも慕われる良い先生だ。
俺たちは、もう何度経験してるかわからんから、
何もなかったのように教室に入った。
「おう。やっと来たか、さっさと座れふたりとも。さて、雑談はこれまで。授業を始めるぞ。」
仕方なくたそがれながら、授業を受け始めると沢山のバイクのエンジン音が聞こえてきた。
俺が動く前に山崎先生が窓際によってきた。
「何だあれは!?」
運動場内にバイクが騒音を響かせながら侵入してきた。
数は…10台程度か…。 なんか見たことある特攻服だな…。
いや…何処だっけ。
「冴島大輝!出てこい、この野郎!」
「大輝お前何かしたのか?」
「いや…記憶にないんですがね。ああいう輩は、テキトーにあしらってますし、いちいち記憶してないんですよね。」
「だが、お前を呼んでるしな。」
まぁ、まずは聞いてみようか。
「おい、さっき俺を呼んだやつ!お前らはどこの誰だ?」
「んな…!俺達を覚えてねぇってのか。」
「俺に負けたやつをいちいち覚えるほど、俺は暇じゃねぇんだ。俺の記憶に残ってないってことは、大して強くもなかったんだろう?いちいち乗り込んできたんじゃねぇよ。授業の邪魔だ!」
「降りてこい!ぶっ殺してやる。」
ぶっ殺すって…1度負けた相手にどうやって勝つんだよ。一朝一夕で強くなれるほどこの世の中は甘くねぇんだわ。
ただ、俺も逮捕されたくねぇしここは。
「山崎先生。携帯って今持ってます?」
「持ってるが、どうするんだ?」
「親に電話するんですよ。ちょっと貸してくれますか?」
「あぁ。」
俺は、山崎先生から携帯を受け取ると親父に電話した。
今の状況と相手の数、おそらく救急車が必要になることまで。それとパトカーも何台か早急に向かわせることも約束してもらった。
「山崎先生。これ返しときますね。」
「どこに行くつもりだ、大輝。」
「どこって、あの馬鹿どもを病院送りにするためにちょっと運動場まで。」
「馬鹿な!放っておけあんな奴ら。」
「放っといたら、他に何十人って怪我人が出ますよ。俺が行けば数分で終わりますから。あぁ、それと警察には先程電話しておいたので、俺が出たらすべてのドアの鍵を締めといて下さい。それでは。」
「あぁ…わかった。」
俺は、その場でワイシャツを脱ぐとリュックに常備している黒パーカーを着込んだ。淡い色や白だと返り血が目立つからだ。そして、練習用の居合刀も。
まぁ、今回の奴らだけじゃなく、この地域は目があっただけで喧嘩を吹っかけてくる馬鹿どもが多すぎる。俺は、身を守るという名目でそいつ等を木刀を用いて血祭りにあげてきた。病院送りにしたやつも一人二人ではない。
まぁ、全員正当防衛だったし、父さんの事前の対応のお陰で俺は一切の罪を負うことなく、平然と暮らしている。彼奴等は、どこで叩きのめしたかは知らないけど、まぁ留置所か少年院にでも入ってたんだろう。
俺は、居合刀を腰に帯びると階段をゆっくりと降りた。
Ⅰ年の俺は4階にいるため、降りるだけでも一苦労だ。
俺が降りきって、運動場に出たとき、彼奴等は金属バットを担いで待っていた。
「ようやく来たか。」
「今帰るなら、見逃してあげますよ。」
「何調子乗ってんだ?こっちは10人だぞ。」
「雑魚が何人集まっても雑魚でしょう?本当にやると言うなら全治1年の怪我を負うことになりますよ。それでもやりますか?」
「やれるもんならやってみやがれ!!」
そこからは俺の独擅場だった。
全員の顔面に居合刀の切っ先をめり込ませ、鼻をへし折ったうえで、全員を一本背負いを背中側に腕を回して腕をへし折り、倒れ込むところに全員のゴールデンボールを思いっきり
切り上げた。潰れてるかもしれない。
すべて終わるまでに5分もかからなかった。
俺にしてみればもはや慣れた作業だ。今ではなんとも思わない。全員全身の痛みで絶叫しているが、俺は忠告はしたし、
逃げるチャンスもやった。それでも向かってきたのだから、
コイツラが悪い。
俺は刃についた返り血をパーカーで拭うと鞘に戻した。
俺が教室に戻ろうとしたとき、パトカーと救急車が運動場に入ってきた。
救急車からは、救急隊員が欠相を変えて馬鹿どもを担架に乗せている。この人達の面子もいつもと変わらないので、見慣れたものだ。最初は、俺に怒ることもあったが、そもそも俺は被害者なので途中から、なるべく外傷に留めてほしいとの話をされるようになった。
それからだろうか、内臓に欠陥が出ないように腕や足の複雑骨折や金的を狙うようになったのは。
そんな事を考えていた俺の肩に大きな手が置かれた。
振り返ると、髭面のおっさんと超絶イケメンのコンビ警官が立っていた。この人たちは、近藤さんと沖田さん。新選組みたいな雰囲気あるけど、まったく関係ない。
そもそも、この人たちは警官ではない。近藤さんは50代で元特戦群で引退後父さんからスカウトされてSATに加入した。沖田さんは40代で、アメリカと日本のハーフで元SEALs。怪我をきっかけに引退し、日本に帰国後SATの訓練官兼狙撃手として加入した。
二人共父さんの飲み仲間であり、俺も昔から知る人で、現場に出ることの少ない彼らは俺の問題解決にほとんどの時間を費やしてくれている。これで給料もらえて楽でいいと言っていた。
「ま〜た、派手にやったな。」
「これでも手加減したんですよ。派手にやりすぎると救護隊員の方が苦労するので。」
「これで手加減ね。中学1年生が模造刀で金属バット持った族相手に完勝しておいて手加減か…。君は、将来特殊部隊にでも入るつもりかい?」
「嫌ですよ、そんな面倒くさいの。コイツラだって授業の邪魔だから片付けただけ。それに俺、弱いやつとつるむの嫌なんですよ。俺まで弱く見られそうで。せめて、俺とタイマン張って意識保てるぐらいじゃないと。」
「そんなやついたのか?」
「親父とお袋ぐらいですかね。あの二人には未だに勝てません。」
「あのお二人は特殊部隊の誰しもが憧れてるからな。」
「まぁ、そんな事どうでもいいです。後処理お願いしますね。私は授業に戻ります。」
「あぁ、おつかれ。」
これで、馬鹿共の掃除は終わり。
これが俺の日常だ。