五月蝿い人は嫌いです
「待ってくれ!」
その声に振り向くと、ジャージを着た先程まで戦っていた対戦相手の新庄くんが走ってきた。
その後ろからは、明らかに五月蝿そうなおばさんがゆっくりとついてきている。
「なに?」
「君の強さの秘訣ってあるの?」
何いってんのこの子。
俺の強さの秘訣?両親の悪魔みたいな鍛錬の賜物だけど。そんな事そのまま言えないし。
「親が格闘技やっててね。昔から鍛えられたんだよ。それと君と明らかに体作りがちがうかからね。」
「親御さんが…。」
「あぁ、体作りはやめといたほうがいいよ。俺の場合は、親がスパルタだったから仕方なかったけど、中学生のうちから筋肉トレーニングは、体に悪いからね。」
「でも練習メニューとか、秘訣あるんじゃないの?」
「秘訣って言われても、俺ボクシング始めたの先月だし。教えられるようなことないよ?」
「先月!?それであの強さなの?上には上がいるんだなぁ。」
「そりゃそうだぜ坊主。こいつのスパーリング相手は、プロだからな。それに、最近注目されてる日本ミドル級チャンピオンの榊がスパーリングで手も足も出なかったんだ。中学生レベルじゃもの足りねぇだろ。」
「えっ!?あの榊選手と知り合いなんですか!?じゃ…じゃあ、冴島さんのジムに入れば榊選手にも会えるんですか?」
「ん?まぁ…あいつが来るのは不定期だからな。よく練習に来てれば会えるんじゃないか?」
「なら、俺はいります!母さん、聞いてたでしょ!?俺、彼のジム入るから!」
よく見るとこのおばさんガマガエルみたいだな。服装も金持ちのおばさんって感じ?
「だめよ!こんなよくわかりもしないジムなんて。お父さんがあなたのためにジムを用意してくれたんだから。設備も最新式でコーチ陣も整ってるんだから。」
「その最新式の設備をもって、彼に負けたんだけど?」
「それはそうだけど…。そうだわ!そこのあなた、今からうちのジムに来て、この子とスパーリングしてあげてくれない?」
「え?嫌ですけど。これからうちのジムで練習するんです。」
「少しだけならいいでしょ?」
「嫌だって言ってんでしょ。そんなにやりたいならあんたらが来なよ。そっちが頼んでんだからさ。それとも何?そっちじゃなきゃいけない理由でもあんの?行ってみたら、この子と違う奴が相手するとか?」
「失礼な子ね。親の顔が見てみたいわ。」
「あら、うちの子にずいぶんなこと言ってくれるわね。旦那の脛をかじって威張ってる分際で。」
急に参戦してきた聞き覚えのある声に振り返ってみると、俺の両親と浩二さんが立っていた。
なんでいんのよ…