黒龍会結成なの?
る「さてと…集合したな。」
この一週間、今日のことが気になって授業にもいつも以上に集中できなかった。そういや、今週はどこのチームも乗り込んでこなかったな。
桂川さん効果なんだろうか。それと、驚くべきこと咲子は中学校を移動したらしい。なんでも兄妹が東京にいるから東京に引っ越したとのこと。そもそも、日本支店も
本店は東京だからな。
静岡のここ葵タワーの事務所は、形だけのものだし。
にしても、全員、随分ときっちりとしたスーツをきてきたもんだ。俺は、黒パーカーには黒のスウェットっていう。普段着だというのに。まぁ、俺は良いんだ。
「冴島さんはスーツ着なくていいんですか?」
心配したように榊さんが尋ねてきた。
この人、試合では性格が変わるみたいなんだけど、
普段は本当に良いやつだ。
「俺からしたら、幼馴染の父親だからさ。それにそもそも、この話は彼から俺に依頼してきた話なんだ。俺がペコペコする必要はないよ。皆もあくまでも初対面だからスーツをお願いしただけだよ。」
「気さくな人なんですね…。」
「まあね。そんなに緊張しなくてもいいよ。それじゃ、行こうか。」
俺は、緊張でガチガチの4人を引き連れて、エレベーターに乗った。エレベーターが最上階に達し、降りるとエレベーターホールに一人の綺麗な女性が立っていた。
「お久しぶりです。雅さん。」
「そうね、大輝君。他のお連れの皆様、お初にお目にかかります。半導体メーカーのサムエル、日本支社長の鈴木浩二様の専属秘書をしております。三枝雅と申します。以後、お見知りおきのほど、よろしくお願い申し上げます。」
「えっ…。ここ、サムエルの日本支社だったの!?でも、日本支社って銀座にあるんじゃなかったっけ。」
「へぇ…。榊君、よく知ってんね。」
「ん?あぁ、養護施設で一緒だった奴がそこで働いててさ。」
「へぇ…。まぁ、この事務所は、静岡に大規模工場作る際に形式的に設けたもんだからさ。好立地だったのにいるのは、支社長とこの雅さんだけよ。」
「へぇ〜。」
「では、参りましょうか。」
俺達は、雅さんに連れられて、事務所の中へと入っていった。この事務所には、客人が来ない。でも、真面目な咲子のお父さんは、しっかりとした事務所を用意していた。因みに俺は度々この事務所に来ては、大型の会議用テレビを使ってテレビゲームをしていた。
事務所内にある不似合いな扉を開けると、そこには某極道ゲームの幹部会をやるスペースがあった。そこの奥にはもろに会長と思われるような雰囲気を醸し出した浩二さんが鎮座していた。ただ、一つ注意しておくがあの人は得ちゃくちゃ弱い。おそらく格闘技を齧ったことのある人なら余裕で勝てるほどの、アニメやゲームで言うモブキャラ。
「何やってんの?」
「…どう?ゲームの世界みたいだっただろ?」
「まあね。それで紹介させてもらっていいです?」
「紹介の必要はないよ。これでも世界的半導体メーカーの日本支社長なんだ。本気で調べようと思えば、調べられるもんだ。」
「なら、俺達が来た意味は?」
「ここを紹介しておきたくてね。組織が大きくなって幹部会とか開く必要が出てきたらここを使うといい。ここの紹介がてら呼んでみたんだ。それと、榊君にサインも欲しかったんでな。」
「俺のサインですか?」
「この人、格闘技オタクなんですよ。試合に行きたいがために、自分の娘にやらせるほどです。でも、この人は、あなたのスポンサーになるって言ってるからな。減るものでもないだろうから、あげたらどう?」
「まあ、良いっすけど。」
榊くんは慣れたように、雅さんから受け取った色紙にサインをしていた。
俺も格闘技とかボクシングとかメジャーな奴やれば有名になれるのだろうか?
「やってみたいのかい?ボクシング。」
「浩二さん、心をよまないでくださいよ。」
「やってみたいんですか?大輝さん。」
「やってみたい気持ちはあるけど、俺の場合、プロになれないからな。中学の部活でやるなんて。」
「練習が面倒ってことですか?俺が通ってたジムに行けばどうです?コーチに事情説明すれば、週1でも許可出してくれると思いますよ。」
「そうじゃなくて、俺はこれまで高校生とか社会人を相手にしてきたんだぜ?今更、体ができあがってない中学生となんかやったら最悪相手を殺しちまうかも知んないし。」
「それは…」
「それも心配ないっすよ。相手の力量が強すぎて試合になっていないとレフェリーが判断した場合、RSCが出て試合に勝てるんです。プロのTKO勝ちみたいなルールですよ。」
「ふ〜ん。やるだけなら良いけど、練習相手どうすんの?」
「休みの日とかでいいんなら、俺相手しますよ。悟さんが認めた人なら参考になるだろうし。」
「じゃあ、来週末からお願いしようかな。」
「来週末と言わずに、このあと行ってくればどうだ?雅くん例の用紙を彼らに渡して。」
「はい、社長。皆様。コチラどうぞ。」
俺達はその場で簡単な登録用紙に記入した。俺の場合は、浩二さんが毎月小遣いくれるみたいだけど。
他のメンバーは後のための住所や氏名の登録と会員証の作成。榊くんは、所属先の記入とスポンサーにつての相談。もろもろ1時間ほど経ったあと、俺達は榊くんが育ったというジムに向かった。