プロローグ〜なんか楽しいこと無いかな?〜
肩がぶつかっただけ。それだけなのに、僕は喧嘩を売られた。
僕が暮らす清水という街は、不良とギャルと老人の巣窟みたいな街だ。
子供達は幼い頃に先輩たちの影響で悪さをしだす。僕も小学生で問題起こして、校長先生に叱られたっけ。それでも僕は、名家の生まれだったから皆がはしゃいでいる中で色んな習い事をこなした。だからだろうか、中学に上がる頃には、武道は何でもござれの武人に成長してしまった。特に剣道に関しては自信はまぁある。クラブで参加した全国大会優勝したしな。
サッカーとか野球とか、バスケとかに興じたかったのに…。
「おい!聞いてんのかよてめえ。」
想像に酔いしれていると、俺に肩をぶつけてきた不良が俺の胸ぐらをつかんできた。こいつはおれと同じ中学の同級生。中学の校舎の廊下で喧嘩売るとか馬鹿じゃない?
「どいてくんない?ぶつかってきたのそっちでしょ?」
「喧嘩売ってんな?」
問答無用で殴ってきやがった。俺は、廊下に立てかけてあった箒を手に取る。別に背負投で投げ飛ばしても、顔面に蹴りをぶち込んでもいいんだけど、他の生徒が見てるから格好よく決めよう。
「よけてばっかいんじゃねぇ!」
不良君の喧嘩慣れしていない拳を避けながら、俺は即座に背後に回ると彼の朝後頭部を振り抜いた。柄でやると最悪死んじゃうから。
「ひ…卑怯な…。」
「どのくちが言ってんだよ。喧嘩売ってきて、いきなり殴ってきた分際で。俺とまともに喧嘩したきゃ、ボクシングでも空手でもなんでも、少しは学んでこい。」
俺は、箒を元あった場所に片付けながら馬鹿にそう諭してやった。悔しそうな顔をしている奴を見ていると誰かが告げ口したのか、職員室から1年の学年主任の山﨑先生がこちらに向かってくる。
まぁ、俺は怒られる心配はない。
山崎先生はこちらに近づくと第一声。
「大輝。大丈夫か?怪我とかしてないか?」
「大丈夫ですよ。山崎先生。俺が不良如きに負けないの知ってるでしょ?」
「そりゃそうだが。」
「とりあえず、この馬鹿の対処お願いしますね。俺、外に休みに行きますんで。」
「分かった…。いや、授業は!?」
「どうせ俺がいたら、久保先生が授業の進行が困るだけですよ。2時間目からはしっかり出ますんで。それじゃ。」
「休むのはわかったが、どこに行くんだ?」
「屋上ですよ。わかって聞いてんですか?」
俺は笑いながらそう答えるとその足で屋上へと向かった。
俺は小学生の時に漢字検定、英語検定、Toeic等など小学生とは思えないような試験をいくつ突破した。
単純な学力でも有名な進学高校のレベルに既に達している。
だから、授業を受けても暇で仕方ない。さっきみたいな喧嘩イベントはむしろありがたいんだが、せめて喧嘩できるやつにしてほしい。
なんていうの?ク◯ーズみたいなさ。この学校は不良生徒はいるけど、そこまで落ちてはいない。だから校内で乱闘は滅多に起きない。それでも憧れるんだよね。武闘派の集団を行進のように後ろに引き連れて、反抗勢力次々に潰していき、最強の組織を作り上げる。
警察にも目をつけられるかもしれないけど、事前に色々伝えておけば問題ないっしょ。相手の問題行動とか。犯罪行為とかさ。うちの組織は、絶対遵守の規則を定めて絶対犯罪行為に手を染めないようにさせる。そこまですれば問題ない。
なんて言ったって、俺の親父は家では俺や兄妹達をデロンデロンに甘やかしてくるから気が付かないけど、静岡県の警視監をしている。加えて俺の母親は、警視正だ。警察一家ってわけだ。まぁ、俺は親の悪魔的教育を耐えきってなんでもこなしてきたから、中学に入学してから素行が悪くなっても勉強をしてれば何も言わなくなった。母親もちゃんと進学校に行くなら中学3年間は好きなように過ごせばいいとまで言ってくれた。
親父に至っては、中学ぐらい不良で暴れてみろとまで言ったほどだ。ただし、抗争前には事前に親父に連絡することとなっている。そうすれば、手を回して俺と俺の仲間が逮捕されないようにしてくれるらしい。
まぁ、そんな素晴らしい下準備があるからこそ、俺は喧嘩イベントを楽しみに待っているわけだ。
色々考えてたら眠くなってきた。
俺は、屋上の扉を開け、昨日おいておいたソファに寝っ転がると眠ることにした。