特撮みたいな戦い(1)
結局、その『手品もどき』は発火能力といわれるものだった。
小さな炎を生み出せるパイロキネシスとか言われる力。もっともそんな力がいるかと言われれば、ぶっちゃけるといらない。
見せる事もなければ誰かに言うのは小さい時の誘拐された事件ぐらいしか言うところもない力。
「炎を右手に集中させてください」
『カタバミ』の音声が耳に聞こえる。どうやら使い方の分からないアイテムにAIというサポートを付けてくれていた。
右手の周りの空気が揺らぐ。
「OK。外の様子は分かる?」
「外には3体と1人。1体が人を捕らえ、1体はトイレの入り口を見張っています」
「OK」
ドアを開け駆け出す。手洗い場を曲がり、入り口にいるセキュリティガードのカメラがこちらを捕らえた。
「まずは一つ目」
右手がセキュリティガードの顔面を右手で一発。それだけで頭が吹っ飛んだ。
2体目が向き直る前に左足を軸に腰が回る。
「はああああああああ」
クルリと回った足の着地音と2体目の頭の落ちる音が重なる。一歩足を出す。握った拳が貫くイメージと拳が燃えるイメージが重なる。
「ラストおおおおおおおおおおお」
楯にしようとした動きを察知して一撃でセキュリティガードの胸を拳が貫いた。
「エレベーター前に1体いますがこちらに来る気配はありません」
AIのから報告が入る。ひとまず虎口は抜けた。
息をつき、次は1階入り口を封鎖しているセキュリティガードをどうにかしないといけない。
最短距離で降りれるルートを探り、駆け出そうとして驚きの目で見ている颯香を見て思い出した。
「あ。ごめん。一番奥のトイレに荷物が置いてきたから預かっといて」
そう言い残すと一気に駆け出した。