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博多市狂想曲  作者: 如月 睦月
10/13

水無月 柊は期限が悪い(1)

 水無月 柊はイライラしていた。

 サイレンの音がうるさいがしょうがない。車の真上、急いで現場に向かわないといけないために鳴らしているのだから。

「しかし変ですよねぇ。セキュリティガードを乗っ取ってやったのが建物封鎖するだけ。な~んてどこの好事家テロリストなんだ、って話ですよ」

「で、私らまで駆り出されるだからたまったもんじゃないっての」

「いくら昼飯食いそびれたからってこっちに当たらないでくださいよ、先輩」

「うっさい」

 睨みながら窓の外を見る。車が流れるように過ぎていく。そんな中そとのサイレンに負けない大音量が車内に響いた。

 怒りが一気に駆け上がり思わず指でこめかみを押さえる。この音が誰からかかってきたか知らせていた。

「電話っすよ。先輩」

「わかってる!」

 八つ当たりに大声出して苛立ちが隠せない。怒りを吐き出すように長い一息吐いてスマホを耳に当てた。

「はい」

「悪いけど頼みがあんだけど」

 無神経に頼んでくる声に流石の柊の怒りも限度を越えた。

「あのね。電源落としたスマホを勝手に起動させるな。こっちはあんたみたいに暇じゃないの。今から事件現場行かないといけないんだから」

 電話口の向こうで耳を押さえてようが知ったこっちゃない。電源を切った電話を勝手にならされ柊はきれていた。

「知ってる。だからこそなんだよ」

「・・・つまんない用だったら、あとで殴る」

「悪いけど。現場の近くに地下駐車場の入り口があるだろ、そっちに行ってくれ。それ見たら分かる」

「地下駐車場?なんでそんな所に」

「あいさー。地下駐車場に向かいまーす」

 運転していた一年後輩の千佳がハンドルを切る。

 事件現場近くの千佳駐車場そんな所でなにかが起こるとは思わない。なにせあそこは地下3階に作られた周辺のオフィス用に貸し出された駐車場。普段使うのはこの近辺の人間ぐらいのもの。

「こら、勝手に」

「でも麟太郎先輩がそう指示って事はなにかあるんでしょ?」

 高校からのつきあいなだけに麟太郎が何もなく言うわけがないと千佳は知っていた。

「うぉっ」

 慌ててブレーキをかけるが間に合わず何かを引いてしまった。

「あっちゃ~……って。なんでこんな所にセキュリティが……それも残骸が?」

 車を止めて千佳が降りて見る。邪魔になるように止めた車と壊れたセキュリティガードのなれの果て。何かがあったのをものがたっていた。流石に現場を見て柊もただ事じゃないのを理解していた。

「千佳は無線で応援呼んで。麟!何を知ってるの」

 苛立ちながらスマホに大声をぶつける。

「顛末は知ってるけど、色々言うより見てもらいたいからあとでこっちに来て欲しいんだけど。とりあえず上に行ってくれ。屋上に緋奈子がぶっ倒れてるから病院に送っといてくれ。それと」

「まだ何かあるの?」

 歩いて駐車場のエレベーターの上ボタンを押して待つ。

「隣のデパートの紅茶屋に桜がいるからこっちに連れてきて欲しくてさ」

 その言葉にぴくりと眉が動く。自分と麟太郎、そして悪友3人の一人の妹。その友人の妹の名前。なんでそこに居るのかは知らないが。いや、それよりも桜は貴重な目撃者になりそうだ。

「まあ、事件の目撃者がデパートの人間以外いないからあいつらも重要な目撃者として話し聞くのは分かってるんだけどさ。緋奈子が預けた荷物とかを回収したくて」

「……分かった。あとで詳しく聞くわ」

 エレベーターが開くとスマホをきる。そこに見えるのはある程度予想できた物ではあった。屋上に倒れている緋奈子。そして予想外だったのはそこにアタッシェケースと切り落とされた腕が一本転がっていること。ポケットからカメラで何度も撮影して現場保存。そして救急車を一台要請した。


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