データ1:8
私達は傷が癒えるまで休養を挟むことにした。その間に穴やカタストに関する情報を他の冒険者などから集めるという魂胆もあったが、サリアが出席を目的としている会の開催までまだ一月以上あるというのも後押しし、焦る必要はないという判断を下したのだ。
(選択肢ダイス1~4)
(4:エリン)
翌々日のこと。私は昼食を持って、一階奥のエリンの部屋へ運んでいた。先日の戦いで負ったエリンの怪我は想像以上に重いものだったようで、自由に出歩けないほどだった。そのため今は、万が一グレイシスの追手が来たときに対応できるよう、私とキャリーもこの住居にとどまっている。
キャリーとサリアは朝のうちにどこかへでかけてしまった。予定があるとだけ言い残していったが……まあ、二人でいるなら問題はないだろう。
盆を片手に扉をノックし、ドアノブに手をかけた。
「入るぞ」
(36:アブノーマル)
部屋に入ると、エリンはベッドの上で着替えをしている途中だった。スラリとした背中が目に入り、思わず目を背ける。
「すまない、間が悪かったな」
「別に……気にしません。昼食の用意までしていただき、感謝します」
エリンは首だけ横に回し、片目で感謝を告げた。その横顔だけでは判断できないが、言葉通り気にしていないのだろうか、そのまま服を纏った。
「怪我の具合はどうだ」
「……ええ、キャリーさんの治癒魔力のおかげで、明日にでも動けるようになりそうです」
「それはよかった」
ベッド脇のテーブルに盆をおいた。
「お伺いしてもよろしいでしょうか」
座ったまま足を床におろし、エリンが真っ直ぐな目を向けた。それはどこかサリアに似ているようにも思える。
「なぜ、サリア様のご依頼を受ける気になったのですか。失礼な言い方になりますが、サリア様の助けになったからと言って、王家に貸しができるなんて期待にはお応えできませんよ」
エリンからはまだ信頼を得られていない、ということだろうか。確かに、オースディンまでは単なる一般人の護衛で済んだが、サリアに正体を明かされた以上、今回の依頼はより責任を持つべきものになっている。どこの馬の骨とも知れない一冒険者を軽々に信頼すべきではないだろう。
「なぜ、か」
私は沈黙をいいことに、頭の中で言葉をまとめるための時間を幾ばくか使い、そして質問に答えた。
「そうだな、報酬を欲していることも好奇心に引っ張られていることも否定しない。だがそれ以前に私は冒険者だ。もらった依頼を無下に断りはしないさ。それに、サリアとは一か月間をともに旅した仲間でもある。彼女やキャリー、もちろんエリンも、困っていることがあれば力になりたいと思っているよ」
(31:アブノーマル)
本心を伝えたつもりだったが、エリンははっきりと納得の意を示すことはなく、すこし考え込んだ様子を見せてから、そうですかと言ってこちらに顔を向けた。
「不躾な聞き方をして申し訳ございませんでした。あなたが損得勘定だけで動く人間でないことはわかっています。だからこそ聞きたかったのです。あなたの考えを。どうかご無礼をお許しください」
エリンは少し頭を下げた。
「いや、構わない。君がサリアを大切に思っていることもわかっている」
それほど、サリアは国家にとって、そしてエリンにとって重要な存在ということなのだ。
(62:グッド)
その後、エリンとはいくらかの話をした。はたして私の気持ちがどれほど伝わっただろうか。あまり自信が無いというのが本音だが、他愛ない話の中に含まれた、普段は無表情な彼女の微細な反応は、少しは心を開いてくれている証として受け取っても良いのだろうか。
何にせよここまで乗りかかった船だ。せめてエリンとサリアの抱える問題が解決するまでは、仲間として信頼し合える仲であろうと決心したのだった。