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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

アルスマグナの実験塔 XXX

作者: 蒼井夢見

 


 NO.XXX ましろのせかい



 まっしろなゆかをまっかにそめるえきたいが、あまりにもきれいでみとれていると、そこにぼくのかおがうつるんだ。

 かがみのないこのせまいへやで、じぶんのすがたをみることができるゆいいつのとき。

 たしかに、ぼくがこのよにそんざいしているというしょうこがそこにはある。ぼくがいきていることをじっかんできるじかんだ。

 ふと、ひだりてのてくびをみると、そこはきのうよりふかくえぐれている。だから、きょうはいしきがとおのいていくのが、きのうよりもずっとはやいのだとなっとくする。

 とはいえ、なっとくしても、きょうもそれをうけいれることはできなかった。

 いやだ。いしきがなくなるのは、もういやだ。

 あしたも、またおなじことがまっているのなら、いっそしんでしまいたい。だけど、ここでは、けしてそれがゆるされない。どれだけふかくきずつけても、ぼくはしぬことができなかった。

 ぼくは、とっさにこしのあたりまでのびたしろいかみのけをりょうてでぐしゃぐしゃにしたり、ひっぱったり、ひきぬいたりして、すこしでもいしきをたもっていたかった。だけど、あふれだすあかいえきたいはもうとまらなくて。


 きこえてくるのは、ひめい。にんげんのものとはおもえないこえが、あちこちからきこえてきて、いつも、めをさます。


 いしきをとりもどしたぼくは、きょうもまた、かべもゆかもてんじょうもぜんぶがまっしろで、まどもどあもないせまいへやにひとりいる。このへやには、とけいもないのに、きょうとかあしたとかいうのはへんなはなしだけど、きょうがなんがつなんにちで、きょうがなんようびなのかわからないことに、いつしかたえられなくなったぼくは、いしきをとりもどしたら、つぎのひになったのだとおもうことにしていた。さいしょのうちは、なんにちたって、ぼくがいっさいとしをとったんだなとかかぞえていたけど、もうそれもやめた。これが、なんにちめなのかもうわからない。それだけ、おなじくりかえしがつづいていて。そのくりかえしのなかで、ぼくのまっくろだったかみのけは、このへやとおなじまっしろになった。

 そして、あんなにまっかにそまっていたはずのゆかは、またまっしろになっていて、ぼくのひだりてのてくびのきずもすっかりなくなっている。


「やあ、ましろ」


 ああ。まただ。また、へやにおとうさんがあらわれて、ぼくをおもちゃにする。とかげのようなめでぼくをみて、とかげのようなべろでぼくをなめて、とかげのあたまのようなあれで、きもちがわるいことをする。そうやって、ぼくのからだを、まっしろにするんだ。


 さんざん、ぼくをおもちゃにすると、おとうさんはまるでけむりのようにきえて、きづくとぼくのみぎてには、かったーないふがにぎられていて。ぼくは、からだのなかにそそがれたしろいのをからだのそとにだしたくなって、あかいえきたいをながすんだ。


 あかいえきたいをながさなければ、またおなじあしたはこないのに、ぼくはおとうさんのしろいのをからだからだしたくて、だしたくて、ださなくてはじぶんのすべてがけがされてしまうようなきょうふかんにおそわれて。だから、おなじあしたがくることはわかっているのに、きずつけなくてはならなくなるんだ。


 わかるかな。


 ぼくは、みぎてににぎったかったーないふで、なんどもなんどもひだりてのてくびをきずつけた。あかいのといっしょに、ぼくのからだからでていけ、しろいの。だけど、やっぱりゆかにながれるのは、きょうもまっかなえきたいだけで。そこにうつるぼくのかおは、きのうとかわらない。そして、また、いしきがとおのいていく。


 おやすみなさい。



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